ダイハツ・ムーヴ X“SA”(FF/CVT)/ムーヴカスタム RS(FF/CVT)【試乗記】
美点は燃費だけじゃない 2013.01.17 試乗記 ダイハツ・ムーヴ X“SA”(FF/CVT)/ムーヴカスタム RS(FF/CVT)……136万5502円/155万6000円
デビュー後初のマイナーチェンジで、見た目も中身も大きく変わった「ダイハツ・ムーヴ」。燃費性能だけにとどまらないその実力に触れた。
0.2km/リッターの攻防
今までにも増して、開発陣は気苦労が絶えないのではないか。「スズキ・ワゴンR」だけを相手にしていればよかったのに、新たに「ホンダN-ONE」まで気にかけなければならなくなったのだ。軽自動車全体の販売台数は好調を維持しているものの、ライバルが増えれば競争は激しくなる。厳しい状況の中でのビッグマイナーチェンジで、「ダイハツ・ムーヴ」は大ワザを繰り出してきた。キーワードは“燃費” と “安全”である。改良点は多岐にわたるが、関心が集まるのはこの2点だろう。
燃費はコンマ以下で争われるようになっている。ワゴンRの28.8km/リッターに対し、ムーヴは29.0km/リッターと0.2ポイント上回る数字をたたき出してきた。2011年9月にダイハツが30.0km/リッターの「ミラ イース」を発表すると、2か月後にスズキは「アルト エコ」で30.2km/リッターをぶち上げた。まるでその時の意趣返しのような成り行きである。2010年12月にフルモデルチェンジされた時は10・15モードで27.0km/リッターだったのを、2011年11月にJC08モードで同じ数字を実現し、今回さらに2.0ポイント上積みしてきたのだ。
“クラストップ”の称号を得るための厳しい戦いだが、燃費向上にはもはや飛び道具はない。パワートレインの効率化、ボディーの軽量化や空力改善を地道に追求することで、少しずつ数字を稼いでいる。その中で今回の最も大きな技術的達成は、熱のマネジメントである。軽自動車初採用となる「CVTサーモコントローラー」がそれだ。CVTフルードが冷たいままだと、抵抗が大きくて無駄に負荷がかかってしまう。サーモバルブを使ってエンジンの熱を効果的に伝え、CVTフルードを素早く温めるようにしたのだ。その上で、燃料噴射や変速制御を最適化する。