実現するか「東京トヨペット効果」

旧来のアルフィスタ、ランチスタたちに言わせれば、大衆車であるフィアットブランドと同じショールームで自分のお気に入りブランドが扱われるのには複雑な思いがあるだろう。筆者としても彼らの気持ちは、ある程度理解できる。
しかし、もはやそうした人たちは、イタリアでも少数派であるのも事実だ。アルファ・ロメオが産業復興公社からフィアットに渡ったのは26年前の1986年である。ランチアに至っては、フィアット傘下に完全に収まったのは1969年だから43年も経過している。アルファ・ロメオ166がヒストリックカー予備軍の「ヤングタイマー」として扱われ、ランチアといえば女性に人気の「イプシロン」を真っ先に思い浮かべる人が大半の今日のイタリアで、古いイメージにこだわる必要はあまり見いだせない。
さらに国内市場の7割近くを輸入車が占めるイタリア市場で生き抜くためには、ベーシックカーからハイエンドなクルマまでを取りそろえた総合ディーラーに生まれ変わらなければならないのは必然ともいえる。

ボクがイメージするこれからのフィアット系国内販売店は、わかりやすく言うと、1980年代の「東京トヨペット」のようなものになるだろう。もともと東京トヨペットは「トヨタ店」と他県の「トヨペット店」を合わせたような店だったことから、取り扱い車種は幅広かった。たとえ「コルサ」のようなハッチバックFF車を扱っていても、上級モデルの「クラウン」や果ては「センチュリー」も並んでいたから、他のトヨタ系販売店とは違う高級感がどこか漂っていたものだ。

東京トヨペットでクラウンを買ったお父さんが、ついでに娘にコルサを買った例は、かなりあったと思う。要は新世代のフィアット系販売店も、アルファ・ロメオ、ランチア、ジープというプレミアムブランドのイメージ効果が、大衆ブランドであるフィアットにも波及することが期待できる。イタリアは人口1000人あたり保有台数が610台と欧州主要国のなかで最も高く、複数台を所有する家が一般的だ。家族全員が同じショールームで、それぞれの用途や趣向に合ったクルマを選べるメリットは、決して少なくない。

年末なので、より明るいニュースも記しておこう。
直近のデータである2012年11月のイタリア国内新車乗用車登録台数は10万6491台(前年同月比20.1%減)で、フィアット系各ブランドも販売が伸び悩んだものの、シェアでみると10月の28.4%から29.7%へと増加した。
これはイタリア人が小さなクルマにシフトしている表れである。事実、再びリヴィオさんの部下によれば、彼らのディーラーにおける最近のお客さんの多くは、外国製の大・中型SUVを下取りに出して、コンパクトカーを求めているという。売れ筋は、「ランチア・イプシロン」と「フィアット・パンダ」のメタンガス仕様と教えてくれた。

ショールームの2階は、認定中古車フロア。写真は「フィアット・パンダ」。
ショールームの2階は、認定中古車フロア。写真は「フィアット・パンダ」。 拡大
階下の屋外新車展示場を見渡す。ホワイトの「アルファ159 スポーツワゴン」は今月限り価格2万1500ユーロ(約236万5000円)。
階下の屋外新車展示場を見渡す。ホワイトの「アルファ159 スポーツワゴン」は今月限り価格2万1500ユーロ(約236万5000円)。 拡大
フィアットブランド用スペースの一角を空けて作られたアルファ・ロメオの展示予定地。
フィアットブランド用スペースの一角を空けて作られたアルファ・ロメオの展示予定地。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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