ヨーロッパでEVが難しい背景

イタリアしかりフランスしかり、電気自動車を購入する際は、個人でも手厚い補助金制度が適用される。たとえばイタリアの場合、2012年は5000ユーロ(約50万円)である。プジョー・イオン2万8318ユーロ(約280万円)のところが、2万3318ユーロ(約230万円)になる。
フランスでは、電気自動車購入奨励金を5000ユーロから7000ユーロ(約69万円)に増やす案が目下検討されている。にもかかわらず、自治体や電力会社が主導するカーシェアリングを除いて、個人向け電気自動車が普及しないのはなぜか?

ひとつは都市間の距離である。フランス、イタリアとも「街を一歩出れば、次の街まで長い田舎道が続く」というエリアは多い。ボクが住むイタリアのシエナも同じだ。次の大都市フィレンツェまでは75kmある。往復で150km。i-MiEVの16kWh仕様の航続距離はカタログ値(JC08モード)180kmだから、たとえフル充電後であっても寄り道などすると、少々心配になる。

「それなら街中で使えばいいじゃないか」という意見もあるだろう。だが、欧州の歴史的旧市街は、たとえ環境対応車であっても進入禁止や歩行者天国が多い。あまりメリットが見いだせないのである。

電気自動車になくてはならない充電器の設置についても困難な問題が多い。歴史的旧市街だと、一戸建て住宅は極めて少ない。集合住宅も古いものが大半だ。日本の一部の民間マンションのように、地下駐車場に充電装置を設置するということは難しいのだ。

そもそも市街地では年々人が少なくなり、ボクが住むアパートのように管理組合が事実上なくなってしまったところも多いから、「みんなで相談して設置」などということは、これからますます難しくなる。家庭用電源が日本の100VよりEV充電に適している220Vなだけに、なんとも惜しい。

ディーラーに充電器を設置するのも容易ではない。少し前イタリア各社の現役自動車セールスマンたちとピッツァをかじりながら、ボクが「日本で日産は電気自動車『リーフ』のために、全国に充電スタンドを設置した」と話したら、即座に「それは日本だからできることさ」という答えが返ってきた。
日本のように、充電器を作るとなったら徹底的に設置し、その空き状況を個人の車内ディスプレイにリアルタイムで表示するシステムを構築することなど、到底考えられないというわけだ。

ましてや、このご時勢だけに販売店に負担を強いるのはかなり難しい。充電設備の維持管理も問題だ。イタリアやフランスの街中で故障したり、壊されたり、もしくは燃やされてたりしている公衆電話や自動販売機を見れば、それが難しいことは想像がつく。

電気自動車用充電設備がある駐車場を示す道路標識。クルマとコンセントがかたどられたアイコンが確認できる。
電気自動車用充電設備がある駐車場を示す道路標識。クルマとコンセントがかたどられたアイコンが確認できる。 拡大
パリ市が普及に力を入れているシェアリング電気自動車「オトリブ」。ただし、自家用のEVはなかなか普及せず。
パリ市が普及に力を入れているシェアリング電気自動車「オトリブ」。ただし、自家用のEVはなかなか普及せず。 拡大
シエナで。最近ルノーのEV「トゥイジー」を買ったピザ屋さん。この店は通り沿いにあるため、家庭用220Vの電源供給が楽なのはラッキーである。
シエナで。最近ルノーのEV「トゥイジー」を買ったピザ屋さん。この店は通り沿いにあるため、家庭用220Vの電源供給が楽なのはラッキーである。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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