ホンダS2000タイプV(6MT)【試乗記】
「VGSの罪」 2000.08.30 試乗記 ホンダ・S2000 タイプV(6MT) ……376.0万円-追補- 「CAR GRAPHIC」誌で、ホンダS2000の長期リポートを担当する大谷秀雄CG編集部員が、タイプVに搭載されたステアリング可変ギアレシオを評価する。VGSは、魔法のデバイスなのか?フォーミュラ感覚のハンドリング
S2000タイプVの最大の特徴は、車速応動可変ギアレシオ(VGS=Variable Gear ratio Steering)と呼ばれる新ステアリング機構を備えたこと。これは車速と舵角、両方の変化に対して無段階にステアリングレシオを変え、低中速域および大舵角時はクイックに、高速域ではスローに躾けることを目的とする。
その効果は歴然で、最初にステアリングを切った瞬間、フロントの横っ飛びするような鋭い反応から、イヤというほど思い知らされるはず。なにせロック・トゥ・ロックは標準型の2.4回転に対し、1.4回転まで減らされているのだから、メーカーが謳う「フォーミュラ感覚のハイレスポンスなハンドリング」もわかるが、その操作には慣れが必要なことは確かだし、中には拒絶反応を示す人もいるとは思う。
素直なターンイン、有効なトラクション
低速時のクイックさにひきかえ、80km/h以上では、標準型S2000と変わらないレベルにまでレシオは落とされるから、高速域でステアリングが過敏になることはない。ご安心を。
峠道では、初期アンダーが出る確率が各段に減った。ステアリングのレスポンスが上がったことで、必要とされるロール量を適時に、それも一気に与えることが可能となったためだ。もちろん、VGS採用にともなうサスペンション(ダンパーの伸び側減衰力強化+リバウンドスプリング追加)とLSDの仕様変更も、これまで以上に素直なターンインと有効なトラクションを与えることに寄与している。
キチンと伝わるインフォメーション
小舵角から大舵角にいたるまで、フロントタイアがきれいに追従していく様子はちょっとした驚きで(コーナリング中に「切り増し」してもさらによく曲がっていく)、その時のステアリングフィールも標準型と変わらない。つまり電動モーター式パワーステアリング「EPS」は、とくに切り始めで、スポーツカーとしては操舵感覚がわずかに欠ける部分があり、極上の部類のそれには届かないかもしれない。が、全般として路面からの感触をきちんと伝えていることには間違いなく、それがVGSの採用によってドライバーに見えにくくなっているとしたら残念なのだが……。
(文=CG編集部 大谷秀雄/写真=河野敦樹)
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