日産ステージア250tRX FOUR(5AT)【試乗記】
大柄だが小さい 2002.05.14 試乗記 日産ステージア250tRX FOUR(5AT) ……367.0万円 ぶっちゃけたハナシ、スカイラインのステーションワゴン。そう解説する自動車ジャーナリスト、河村康彦が、ステージアのターボモデルに乗った。セダンには用意されない「ターボ+4WD」のワゴンやいかに!?スカイラインワゴン
生みの親であるニッサンは、きっとそのように表現されることは好まないだろう。だが、ボディ骨格をはじめエンジンやシャシーは基本的に同じ、ついでに開発スタッフも同一とくれば、やはり「スカイラインのワゴンバージョン」と、そんな風にいわざるを得ない。それが、2001年10月16日にデビューした2代目ステージアだ。
スカイラインが先鞭をつけた「FM(フロントミドシップ)レイアウト」を踏襲、後輪駆動ベースをひとつの特徴とする……。そのあたりからも予想されるように、ステージアは“走りのよさ”を売り物とするステーションワゴンだ。現行モデルが「すっかりオヤジセダン風になって……」と嘆くスカイラインファンにとって面白くないのは、本家(?)スカイラインからは姿を消してしまった「ターボ+4WD」モデルが、こちらステージアではしっかり用意されることだろう。
実際、ステージアの走りのテイストは、これまでの日本のステーションワゴンとは一線を画している。
磁力に引きつけられるような
「ベースとなった」新型スカイラインは、走りのフラット感の高さで定評がある。ステージアのそれは、デビュータイミングの違いによってさらなる熟成が進んだのか、さらに輪をかけて素晴らしい印象だ。ピッチングが極めて小さく、走行中のボディの動きが徹底して“バウンスモード”へと調教されているのはスカイラインと同様。が、ステージアの場合はそのバウンス方向(垂直方向への上下動)への動き自体も、スカイライン以上に小さいのである。
高速走行でのフラット感は特筆モノ。落ち着きある走りのテイストは、世界最高峰のメルセデスベンツやBMW各車と比べて勝るとも劣らない。アメリカに輸出されるスカイラインと異なり、ステージアは「日本専売の予定」というが、この高質なフットワーク・テイストを日本人だけで独り占めするのは、ちょっともったいないくらいだ。
ターボチャージャーの助けを受けた2.5リッターV6DOHCは、自主規制枠上限の最高出力280psを発生。41.5kgmという太い最大トルクとあいまって、1.5トン級のボディ(テスト車は1680kg)を、余裕綽々で動かす。もちろん、絶対的な加速も強力だ。アクセルペダルを深く踏み込んでやれば、前方からの強力な磁力に引きつけられるような、ターボモデル独特の加速感を味わうことができる。
![]() |
世界に誇れるワゴン
もっとも、日常的に用いるパーシャルスロットルの領域では、そんな本来のポテンシャルは、なかなか顔をのぞかせない。燃費の悪化を気にしたのか、駆動ギア比が日本車としては異例なほど高いのがその原因。何しろこのクルマ、100km/hクルージング時のエンジン回転数が、わずか1900rpmほどに過ぎない。トップから1段落として4速ギアを選んでも2400rpm、さらに3速でも3600rpmほどだから、そのハイギアードぶりをイメージしてもらえるだろう。
比較的低いエンジン回転数を保ちつつ、静々とスピードを増していくステージアターボ。全力加速時とは対照的に、その加速の雰囲気は、「スポーティ」というより「優雅な」と表現した方が似合っている。
ハンドリングの軽快感は強い。ステアリング操作を行うとノーズが素直に向きを変えてくれる。件の“FMレイアウト”が貢献しているのだろう。S字コーナーをアップテンポに駆け抜けると、そこでは「テールの追従性が遅れて残る感じ」が多少あるが、ワゴンボディにありがちなボディ剛性感の不足は感じられない。また、やはりこの種のボディで耳につきがちな、低周波のボコボコとした不快なノイズ(=ドラミング)が気になることもない。
というわけで、ボディサイズは比較的大きいもの、「走り出すと小さく感じる」という、よくできたスポーティカー独特の走りの感覚をしっかりと備えているステージア。このクルマの走りの実力は、スバル・レガシィと共に世界に誇れる水準にあるとぼくは思う。
(文=河村康彦/写真=清水健太/2002年4月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。