俺さまが主役のCX-5
さらに本質的には運転の根源的ダイレクトさであり、“誰が主役なのか”という問題なのかもしれない。
まずはプリウスだが、コイツで長距離ボーッと走ってると自分とクルマの間に、妙な“黒子”がいることに徐々に気付く。アクセルを踏んでもエンジン音はすぐに上がらず、突如後でブウーンと回り出したり、時には「カチカチ」スイッチングしている音もする。
実際、そこには優秀なアシスタントたるコンピューターがいて、遊星ギアを使って絶妙に制御している。で、この間に黒子のいる感じがプリウスの面白さであり、独特の間合いなのだが、これが長距離だとわずらわしく感じられる時があるのだ。
まさに運転しながら伝言ゲームをしているようなモノ。これから速度アップしたいんですが→はい了解しました。エンジンかモーターと相談します→で、今回はモーター主導にしました! ってな具合。
ところがCX-5だとそんなことはない。基本アクセルとエンジンは直結だから、速度アップしたいんですが→もうしてますよ! ぐらいの感覚。しかもクリーンディーゼルはトルク極太だから、低回転からまさに回った通りにスピードが出る。なんというかペダルの動きに素直にスピードが追従する。まさに“俺さまが主役”で、オオゲサに言えば、アクセルひとつで、路上を支配しているようなキブンになれる。で、おそらくこれが新世代ディーゼル、良くできた直噴ディーゼルターボの快楽の本質だと思うのだ。
実は運転というのは、いろんな判断の集合体。前にクルマがいるのかいないのか、ソイツがスポーツカーなのかトラックなのか、乗ってるのが男性なのか女性なのか、今日は雨なのか雪なのか……そのほかいろんな情報を得ながらレスポンスしている。つまりリアクションの塊だ。
ところがディーゼル車だとそういう要素に左右される部分が確実に減る。それはエンジンのトルク特性が素晴らしいからである。多少の起伏やデコボコなどモノともせずに、アクセルを動かしたままに進む。ついでにCX-5に関していうと、ハンドリングも優秀で、思ったように曲がって止まる。結局こういう性能が長距離ドライブのイージーさだったり、気持ち良さにつながるのだ。
運転の快楽性の本質とは、人馬一体感もそうだが、“誰が主役か”ということも大きい。その点、プリウスは確かに効率はいいけど、今ひとつ自分が主役にはなれない草食系である。まわりに気を使い、黒子に気を使う草食系のエコカーなのである。
ところがこのクリーンディーゼルのCX-5は確実に肉食だ。今までの自動車と同様、ドライバーのアクセル操作やステアリング操作に忠実で、それでいてエコ。つまり、今までにない“肉食系エコカー”なのだ。「自動車=自ら動くクルマ」である限り、自分が主役であることこそが楽しさそのもので、それがディーゼル車の良さの本質なのである。
……ってなワケで、多少哲学的にはなりましたが(?)、今回はそういう結論に至ったのですよハイ(笑)。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』
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