リスクが取れなければ勝負にならない
小沢:ある意味、リーマンショックは追い風になった?
山内:リーマンショックで手を打ったのは、構造改革の中でも先の2つですよ。新興国対策と為替円高対策。今もメキシコに工場造ってるし、ロシア工場はもうできました。
小沢:なるほど。
山内:一方、環境技術は、リーマンショックが起こったからではありません。着手したのは2006年、フォードの子会社の時。その時にフォードとは違う道を歩むと決めて、「マツダブランドが光り輝くためにはこれしかない」と彼らが発意して経営陣を動かしたんです。
梶山:彼らというのは、開発の藤原さんとか人見さんですね。
山内:フォード傘下にあっても、消えないブランド価値であり、マツダ独特のものはなんだろうか? という自らへの問いかけですよ。傘下だろうが、独立してようが、企業価値が上がらなければブランドは消えてしまう。しかし、消すわけにはいかない。われわれには創業者の魂が残っているからね。その時にみんなが発意してできたのがスカイアクティブ技術なんです。
小沢:実際、今のマツダって妙にステキなんです。なにかとグローバル化グローバル化で日本らしさを捨てていく中、家族的で独自の物作りをしつつもグローバルにも対応しつつあるという。結構オイシイとこ取りができてる気がしますが。
山内:日本の企業ですからね。アイデンティティーはしっかりしたいと思っています。みなさんも内心は「日本に残したい」と思いつつ実態は難しい。われわれも、日本に過度にこだわるわけにはいきませんが、日本が持っている技術とか、技術から生まれるチームワークとか、いいところが沢山ありますし、それは最後に、日本の信頼につながっていきますから。
小沢:しかし例の“2%の戦略”には驚きました。世界で2%だけ受ければいい! 後は個性に走れ! ってなかなか言えません。
山内:グローバル2%だからこそ思い切ったことが出来るし、2%だからこそ他社と同じ事はできないという面もあるんです。
小沢:その2%作戦って、山内社長が考えたんですよね?
山内:ウチはみんな同じ事言ってますから。金太郎飴ですからねみんな(笑)。
ってな具合に決死の覚悟を語っていただいた山内社長。今後は会長となり、小飼雅道専務が社長を務めるわけだけど、その2%の戦略は変わらないもよう。要するに経営とは博打であり、よくいわれる「自動車づくりは偉大なる水商売である」というセリフはやはり真実なのだ。
というか、ある意味、経営陣が賭けるのは当たり前。リスクと努力とアイデアのないところに利益も成功もない。それは個人レベルでも、会社レベルでも同じなのだ。当然、ライターレベルでもね(笑)。
しかし、なんだかんだでトップが1000万台レベルになりつつある自動車ビジネス。果たしてマツダが作る2%の個性がどこまで受け入れられるか? そこは今後もマジメに注目なのであーる。
(文=小沢コージ/写真=小沢コージ、マツダ、webCG)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』
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