アジア人は運転が下手?

そもそもカーチェイスらしいシーンはほとんどないし、ジミーが乗っているのはごく普通の「キャデラック・ドゥビル」だ。テイラーを助手席には乗せるようになったが、ハンドルは渡さない。理由を問われると、“Asians can’t drive.”とひどいことを言う。韓国系のテイラーはさすがに抗議するが、ジミーは「運転が下手なのは事実だ」と取り合わない。とんでもない思い込みである。でも、この時はまだ佐藤琢磨がインディカーで優勝していなかった。これからは、こんないわれのない偏見はなくなっていくはずだ。

70年代から80年代のアクション映画のように作ったと監督が言うとおり、スクリーンには男臭さが満ちている。スタローンは全身にタトゥーを施しているし、敵となる最強の殺し屋キーガン役は超肉体派のジェイソン・モモアだ。スタローン作品で言うと、1986年の『コブラ』あたりの雰囲気が漂う。ジミーは池のほとりに隠れ家を持っていて、そこでの戦いは『ランボー/怒りの脱出』を思わせる。水中からキーガンが現れるシーンは、なぜか『地獄の黙示録』へのオマージュに見えた。

最後の決戦は発電所で、使う武器はオノだ。まさに男と男の肉弾戦である。シュワちゃんは肉体の衰えを隠していなかったけど、スタローンは意地を張って現役感を見せ続ける。そうしないと一気に老けこんでしまうのではないかと恐れているのかもしれない。

「人生、生きているうちが花」と言いながら最後に姿を現すとき、ジミーが乗っているのはキャデラックではない。そのクルマには意表を突かれるが、スタローンの出自を考えれば決して意外ではないことに気づくはずだ。

(文=鈴木真人)

「キャデラック・ドゥビル」
1949年の「クーペ・ドゥ・ヴィル」から続く名称で、近年はフルサイズの高級セダンとして販売された。2005年に生産が終了し、DTS (DeVille Touring Sedan)が後継モデルとなっている。
「キャデラック・ドゥビル」
    1949年の「クーペ・ドゥ・ヴィル」から続く名称で、近年はフルサイズの高級セダンとして販売された。2005年に生産が終了し、DTS (DeVille Touring Sedan)が後継モデルとなっている。
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第52回:スタローンとヒルが初タッグ。男臭さが爆発する!『バレット』の画像 拡大
『バレット』
6月1日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー、上映時間:91分、R-15指定
配給:松竹
公式サイト:http://bullet-movie.jp/
『バレット』
    6月1日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー、上映時間:91分、R-15指定
    配給:松竹
    公式サイト:http://bullet-movie.jp/
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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