ギャツビーの黄色いクルマ
40代以上であれば、あのバブル期の熱狂的陶酔との類比でだいたい想像がつく。しかし、80年代を経験していなければ、あのどうかしていた興奮状態が現実のものだったなんて、到底信じられないだろう。3D技術は、誰でも狂騒を確実に実感できるようにするために採用されたのだ。
オープンカーに箱乗りした客が詰めかけ、パーティーは最高潮に達するが、なかなか主役が現れない。初めて登場する時、レオ様はスクリーンいっぱいの大写しだ。振り向きざまにドヤ顔で「I’m Gatsby!」と言って満面の笑みを浮かべる。ギャツビーの恋敵であるトム・ブキャナンもどアップが多いのだが、演じているのが世界のナベアツ(現・桂三度)似のジョエル・エルガートンなので暑苦しくて困る。
その代わり、ヒロイン・デイジー役のキャリー・マリガンも大写しになるから帳消しだ。『わたしを離さないで』『ドライヴ』で見せたはかなげな笑顔は健在で、それを3Dで堪能することができる。眼福だ。こんな女なら人生を賭けても惜しくない、と思わせる説得力がある。
語り手のニック・キャラウェイは、“悩めるスパイダーマン”ことトビー・マグワイアだ。小説の人物造形とはちょっと違って、内気で小心な男として描かれる。彼は、ギャツビーの大邸宅の隣にあるバンガローに住んでいる。ある朝、ギャツビーは黄色いクルマで現れ、キャラウェイをランチに誘った。小説には「豪華なクルマ」とあるだけで、車種は特定していない。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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