跳ね上げたり、踏みつぶしたり

廃車の山を作り上げた元凶は、初登場となる「フリップカー」だ。パイプフレームと鉄板を組み合わせただけのボディーで、横から見るとクサビ型になっている。500馬力のスーパーチャージャー付きV8エンジンを搭載し、4WSまで備えているから走行性能もずぬけている。正面から突っ込むと、よけきれなかった相手は激突するのではなく乗りあげてしまう。横転したり空中に跳ね上げられたりして、走行不能となる。フリップカーの運転席前には鋼鉄のガードがせり上がってくるので、ドライバーは涼しい顔である。

クルマだけじゃなかった。イギリス軍のチーフテン戦車まで登場する。本来ならば50トン以上の重量級だが、10トンにまで軽量化して100km/hを超えるスピードが出るように改造してある。これがクルマを踏みつぶしていくから、道にはぺしゃんこの鉄くずが累々と残されていくわけだ。

ヨーロッパが舞台とあって、欧州車が多く登場する。「フォード・エスコートMk1 RS2000」「ジェンセン・インターセプター」などに加え、変わったところでは「リスター」も走っていた。古いクルマだけでなく、現行の「アルファ・ロメオ ジュリエッタ」が重要な役どころを与えられていた。

ちょっと残念なのは、日本車の存在感が薄くなってしまったことだ。第1作では改造した日本製のスポーツコンパクトを使ってストリートレースに明け暮れていたのに、だんだんアメリカのマッスルカーが目立つようになってきていた。今回は「ダッジ・チャージャー デイトナ」が目玉だ。470馬力のV8エンジンに、300馬力相当のニトロシステムで強化してある。日本車は、ついに「日産スカイラインGT-R」1台だけになってしまった。主人公のひとりブライアン・オコナーを演じるポール・ウォーカーがGT-Rマニアなので、ここは死守してくれている。

うっかりしていたが、クルマのことばかり書いていて、出演者について触れていなかった。でも、仕方がない。配られたプレス資料でも、スタッフ・キャストの紹介より前にクルマの詳細なリストが載っている。まあ、そういう映画なのである。


第54回:“野性の速さ”は欧州へ――人もクルマも飛びまくる! 『ワイルド・スピード EURO MISSION』の画像 拡大

第54回:“野性の速さ”は欧州へ――人もクルマも飛びまくる! 『ワイルド・スピード EURO MISSION』の画像 拡大
「ダッジ・チャージャー デイトナ」
クライスラーのダッジブランドから1966年に売りだされたマッスルカーが「チャージャー」で、大排気量のV8エンジンを搭載する。NASCARなどのレースに出場するために作られたスペシャルモデルが「デイトナ」である。薄いフロントノーズと大型のリアウイングが特徴。(写真手前)
「ダッジ・チャージャー デイトナ」
    クライスラーのダッジブランドから1966年に売りだされたマッスルカーが「チャージャー」で、大排気量のV8エンジンを搭載する。NASCARなどのレースに出場するために作られたスペシャルモデルが「デイトナ」である。薄いフロントノーズと大型のリアウイングが特徴。(写真手前)
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「フォード・エスコートMk1 RS2000」
ヨーロッパフォードから1967年に登場した小型大衆車が「エスコート」。1.1リッターと1.3リッターのケントエンジンが搭載されていたが、強力なエンジンを積んだスポーティバージョンも製造されるようになった。「RS2000」は2リッターエンジン搭載モデル。(写真右)


    「フォード・エスコートMk1 RS2000」
    ヨーロッパフォードから1967年に登場した小型大衆車が「エスコート」。1.1リッターと1.3リッターのケントエンジンが搭載されていたが、強力なエンジンを積んだスポーティバージョンも製造されるようになった。「RS2000」は2リッターエンジン搭載モデル。(写真右)
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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