肉弾戦に代わる空中戦
今でこそブライアンはもう一人の主人公ドミニク(ヴィン・ディーゼル)の仲間だが、もともとFBIの捜査官で強盗団のボスである彼を追っていたのだった。敵がいないんじゃ話が始まらないので、前作から新たに現れたのがすご腕の捜査官ホブスである。プロレスラーの“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソンが演じていて、ドミニクとの肉弾戦がド迫力だった。ただ、筋肉系男子は殴りあった後で妙に仲よくなってしまうのが習いで、彼も半分仲間のようなものになってしまった。
そこで、元イギリス軍少佐で国際犯罪組織の頭目ショウ(ルーク・エヴァンス)が新たな敵となって登場する。彼こそがフリップカーの使い手だ。手を焼いたホブスがドミニクに協力を要請し、仲間たちが集結して闘いを挑むことになる。安穏な生活を捨ててまで集まったのは、理由がある。敵のメンバーの中に、ドミニクの恋人だったレティ(ミシェル・ロドリゲス)がいるらしいというのだ。シリーズ第4作の『MAX』で死んだはずだが、なぜか生きていた。
夜になるとストリートレースが始まり、そこには半裸の美女が集うというのがワイルド・スピードのお約束だ。ロサンゼルス、マイアミはもちろんのこと、東京でもそうだったしロンドンだって同じである。色とりどりのミニスカやホットパンツにブラという姿の女たちが腰を動かすのを、カメラがスローモーションでとらえるのも決まりごとだ。
男たちの格闘も見せ所だが、今回はドミニクとホブスが味方同士なので組んずほぐれつの取っ組み合いシーンはない。重量級の敵がいてもみ合いになるものの、少々力不足だ。ガチムチ新日暮里系がお好みの向きには、ちょっと物足りないだろう。その代わりといっては何だが、派手な空中戦が今回の見どころだ。初代タイガーマスクもかくやという、ありえない技が飛び出す。一瞬目を疑うかもしれないが、ここは拍手と歓声で迎えよう。まあ、そういう映画なのである。
(文=鈴木真人)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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