ルノー日産のみが持ちうるブランド的柔軟性
加えてユニークなのは、今回初のショーカー「GO」を持ってきていた新生ダットサン。ほぼ創業当時からある日産の別ブランドであり、「そんな由緒ある名前を新興国向けに」という声もなくはないが、担当者の岡本幸一朗さんいわく「そういう考えではなく、単純に新しいモノ、チャレンジングなモノを作ろうって考えた時に『もともとうちってそういうクルマ作ってましたよね』という話になった」のだとか。
もちろんうがって考えると、香港インフィニティにしろ、新興国向けダットサンにしろ、この時代、棄国とか歴史の冒瀆(ぼうとく)とやゆされるリスクもある。ただし、全く逆の、ある種の柔軟性とも解釈できる。
確かにトヨタがやっているような、“国内生産3割死守”や“国内モノづくり回帰”や“東北工場新設”は美談だし、素晴らしい。だが、それはそれで感情に走っているようでもあり、本当に現実を見据えた前向きな戦略なのか? ある種の共倒れ思考じゃないのか? と思える部分もなくはない。
なにより日産はある意味日本とフランスの二重国籍であって、それこそがアイデンティー。今、世界ベスト10に入る自動車ブランドで、この種の“柔軟性”を持つメーカーは他にないのだ。アジアと欧米にまたがるという意味では。
間違ってもメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンがドイツ以外に本社を置くことはなく、プジョーやフィアットもそうで、おそらくいくら国際的だからといってGMやフォードも北米からは出ない。だが、ルノー日産はそこにある種のメンタル的しばりがない。まさにハーフの子が成人する時に、父か母かどちらかの国籍を自由に選べるようなモノで、それこそが根源的メリットになりうるのだ。特のこの国際感情が複雑化しつつある時代にこそ。
去年、中国日産の中村公泰総裁がおっしゃっていたが「今の日産を象徴する言葉はダイバーシティ(多様性)」とか。期せずして今回のイベントでは、見事それが体現されていたのであーる。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』
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