シトロエンC4ピカソ(FF/6MT)/グランドC4ピカソ(FF/6AT)
主張するミニバン 2013.10.22 試乗記 シトロエンの手にかかると、退屈なミニバンすら、かくもエスプリに富んだ摩訶(まか)不思議なカタチになる。モデルチェンジしたミニバン界のキュビスト(?)「C4ピカソ」シリーズに、ドイツとオーストリアで試乗した。新型では5シーター仕様も上陸予定
パブロ・ピカソ(の権利の管理者)から使用権を買い取って名乗り、彼のサインをかたどってエンブレムに使用するシトロエンのミニバン、「ピカソ」。「クサラピカソ」に始まって、現在は「C3ピカソ」と「C4ピカソ」(5シーター)、「グランドC4ピカソ」(7シーター)をラインナップする。一方、日本では、「グランドC4ピカソ」が「C4ピカソ」の名で販売されてきた。モデルチェンジしたC4ピカソ、およびグランドC4ピカソをミュンヘンとザルツブルグ近辺で試乗した。
新型はプジョー・シトロエンが開発した新しいプラットフォーム「EMP2」を用いた第1弾として、2013年5月に5シーターが、同10月に7シーターが登場した。ちなみに第2弾は新しい「プジョー308」。今後、Cセグメント以上のプジョー・シトロエンが順次このプラットフォームを使うはずだ。
EMPとはEfficient Modular Platformの略。各社がこぞって取り入れるモジュラー式のプラットフォームでホイールベースの長短を自由自在に設定でき、リアサスは基本はトーションビームだが、マルチリンクにも対応可能というから、今後、高価格のクルマや4WD車ではそうなっていくのだろう。軽量化にも力が入れられたという。
今回、プジョー・シトロエン・ジャポンがわれわれ日本のメディアにC4ピカソとグランドC4ピカソの両方をテストする機会を与えてくれたのは、新型では5シーターと7シーターの両方を販売する予定だからだ。現行型C4ピカソは7シーターのみ導入されたが、新型には自信があるのだろう、販売台数を増やすために弾の数を増やす作戦だ。大は小を兼ねる国、ニッポンではどういう販売比率になるだろう? といったことも想像しながら乗り比べてみた。
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「個性」と「実用性」の好バランス
まず形。5シーターと7シーターでは、全長はもちろん異なるが、リアデザインにも明確な違いがある。それもそのはずで、違う人がデザインした。5シーターはそこに人が乗らないためにリアウィンドウをやや寝かせ、横から見ると卵のようなシルエットなのに対し、7シーターはリアウィンドウを立てて、室内スペースを稼いでいる。
また7シーターでは、Aピラーからルーフレールを経由し、リアクオーターウィンドウをぐるりと樹脂の化粧パネルが覆う。これはボディーカラーを問わずガンメタ色で統一。シルバーなどの明るいボディーカラーでは、強いアクセントになっていた。まったくシトロエンのデザイナーはすぐ遊ぶ。
ボディーサイズは7シーターの場合、現行型と比べ、全長、全幅は変わらず、全高が50mmほど低くなった。全長が変わらないにもかかわらずホイールベースが110mm伸びたおかげで、後席はもちろん荷室スペースも拡大された。
フロントマスクは大きく変わった。シルバーの2本線がフロントを横断し、中央がダブルシェブロンのロゴになっているのは、シトロエンの「C」シリーズの新しい約束事。2本線の両端にLEDランプが埋め込まれ、本来はデイタイム・ランニングランプとして機能するが、法規上それが許されない日本では光量を落としてアクセサリーランプになるはずだ。このLEDがヘッドランプだったらすてきだが、実際のヘッドランプはその下にある。顔つきは現行型に比べスッキリした。スッキリし過ぎてのっぺりしたと感じる人もいるかもしれない。
インテリアも変わった。引き続きセンター・デジタルメーターが採用されたが、今度は12インチの大型スクリーンがどーんと配置される。3つのゾーンに分かれていて、スピード、エンジン回転からエアコン、カーナビ、オーディオまでのさまざまな情報から3つを、ある程度好きに組み合わせて表示させることができる。主要な操作をその下の7インチタッチパネルで行うため、スイッチの数は減った。
外観も含め、全体の印象は純粋にフューチャリスティックにも見えるし、どこかレトロフューチャーな路線にも見え、悪くない。なんかこうダフト・パンクの頭みたい。
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新しいシトロエンらしさをぜひ日本にも
エンジンは現行型から引き継ぐガソリン1.6リッター直4ターボ(最高出力156ps、最大トルク24.5kgm)と、新開発のディーゼル2リッター直4ターボ(150ps、37.7kgm)が搭載される。トランスミッションは6MTかコンベンショナルな6ATを選べる。ATは現行型の日本仕様で用いられる6段のRMT(ロボタイズド・マニュアル・トランスミッション)とは打って変わってスムーズで、扱いにくさは過去のものとなった。
例によって日本仕様はガソリンのAT仕様一択となるが、残念ながら、その組み合わせは現地で試すことができなかった。なので、エンジン、トランスミッションそれぞれの印象をつなぎ合わせて現行型日本仕様との比較を報告したい。
今回、車両重量がC4ピカソで140kg減ったので、計算上は速くなっているはずだが、体感的には変わらず。一方、ディーゼルは最大トルクが37.7kgmもあるので、ガソリンに比べると全域でトルキー。日本に入ってきているプレミアムブランドのディーゼル車ほど遮音にお金は注ぎ込まれてはいないが、振動はよく抑えられている。
現行型と比べて最も大きく異なるのは車体の動き。走行中、前後にも左右にもゆらりゆらりと揺れなくなった。全高が低まっていることからもわかるように、新プラットフォームは低重心が特徴のため、上屋の動きも抑制されている。現行型も速度が上がるにつれて揺れは収まり、欧州車として恥ずかしくない高速安定性を持ち合わせているが、新型は全域でもっとビシッとしていて、お前はドイツ車か! とツッコミたくなる。そうはいっても路面からのハーシュネスに対する処理はソフトで、ぎりぎりやっぱりフランス車かもと思わせる。その前に見た目で絶対フランス車、シトロエンなのだが。
日本導入は2014年秋。日本のディーラーに並ぶのは、映画でいえばこれからクランクインでもおかしくないほど先の話だ。インポーターとの雑談の中で、価格は(7シーター同士を比べると)現行型並みじゃないかという話も出たが、まだ決まってないわけだから中の人だってわからない。
クルマとしての根幹部分は、すべて現行型からきちんと6~7年分進化している。導入まであと1年あるからこそ書いておきたいのは、せっかく12インチの大画面を採用したのだから、日本仕様でもそこへカーナビをうまく表示してほしいし、操作系も本国のままをお願いしたいということ。ファン全員に了承を得たわけではないが、われわれユーザーも、いつまでも呪文のようにハイドロ、ハイドロとないものねだりはやめるので、その代わり、本国が推し進める斬新なインターフェイスなどの新しいシトロエンらしさを日本のユーザーにも存分に味わわせてほしい。
(文=塩見 智/写真=プジョー・シトロエン・ジャポン、塩見 智)
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テスト車のデータ
シトロエンC4ピカソ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4428×1826×1613mm
ホイールベース:2785mm
車重:1296kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R17/(後)205/55R17
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値はフランス仕様車のもの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
シトロエン・グランドC4ピカソ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4597×1826×1634mm
ホイールベース:2840mm
車重:--kg(未公表)
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:150ps(110kW)/4000rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/55R17/(後)205/55R17
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値はフランス仕様車のもの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
