メルセデス・ベンツS550ロング(FR/7AT)
時代は変わった 2013.11.25 試乗記 メルセデス・ベンツのフラッグシップセダンに、徳大寺有恒が試乗。これまで数々のメルセデスを乗り継いできた巨匠が、最新の「Sクラス」を語る。アレにもコレにも乗ってはみたが
松本英雄(以下「松」):今日の試乗車は新型「メルセデス・ベンツSクラス」です。メルセデス、それもフラッグシップのSクラスとなれば、巨匠にご意見番としてご登場していただかなければなりません。
徳大寺有恒(以下「徳」):そうかい?
松:なんたって巨匠は、メルセデスとは縁が深いですからね。
徳:考えてみれば、けっこう乗ってるからな。ほとんどが2ドアモデルだったが。
松:以前にお聞きしたところでは、俗に言うところのタテ目のクーペは3台も乗ったんですよね。「300SE」と、「280SE 3.5」が2台。
徳:タテ目の「SL」も「230」「250」「280」と3台乗った。全部中古だったけど。
松:90年代には4代目の「SL500」や鮮やかなイエローの初代「SLK230コンプレッサー」にも乗られてましたね。『NAVI』誌上で見た記憶があります。
徳:毎度のことながら、よく覚えているなあ(笑)。
松:で、いろいろ乗ったなかで一番気に入ったのは「450SLC 5.0」だったとお聞きしました。SLCは3代目SLのホイールベースを延ばして4人乗りとした、一代限りで終わったモデルですよね。
徳:そう。ボディーが大きからず小さからず適度で、エンジンは5リッターだからパワーは十分だし、いざとなれば4人乗れるので、足としては最適だったんだ。
松:ここまではすべて2ドアモデルですが、巨匠から話を伺った4ドアのメルセデスといえば「300SEL 6.3」ですね。Sクラスとは名乗ってなかったものの、後のSクラスの最上級モデルに相当する300SELのボディーに、フラッグシップだった「600」用の6.3リッターV8を押し込んだ“スーパー・メルセデス”。
徳:あれは強烈なクルマだった。ガソリンスタンドで洗車して、不用意に発進しようとするとぬれたコンクリ床でドリフトしちゃうんだ。
松:メルセデスらしからぬワイルドさですね。0-100km/h加速6.5秒という当時としては驚異的な速さで、ドラッグスターの異名をとったというのもわかります。
徳:ああ。その速さと引き換えに、のべつ後ろから強烈なトルクで押されてるから、シャシーが上方向に「く」の字型に曲がってくるし、ATもトルクに負けて傷みが早かった。タイヤもあっという間に減っちゃうし。
松:でも、その過剰なところが魅力なんでしょう?
徳:そう。ジャジャ馬だったけど、カッコよくて楽しいクルマだった。メルセデスの4ドアで、運転して楽しかったのは、あれしか記憶にないよ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |