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フォード・フィエスタ 1.0 EcoBoost(FF/6AT)

楽しめるエコカー 2014.01.09 試乗記 下野 康史 ひさびさに日本の道を走ることになった、フォードのコンパクトカー「フィエスタ」。新型の見どころは? クルマしての仕上がりは? ワインディングロードでチェックした。

“小さなエンジン”が目玉

「フォード・フィエスタ」が帰ってきた。国内導入ベースでいえば、10年ぶりの日本市場カムバックである。
おさらいすると、フィエスタはフォードのワールド・スーパーミニである。「フォルクスワーゲン・ポロ」「ルノー・ルーテシア」「プジョー208」らをライバルにする欧州Bセグメントではベストセラーを走る。

2012年にビッグマイナーチェンジを受けた現行モデルは6世代目。マツダとの提携時代に開発された先代モデルの日本仕様は1.6リッター4気筒だったが、最新型は1リッター3気筒にダウンサイジングしている。「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を2年連続(2012年、2013年)で獲得したこの「1.0リッター EcoBoost(エコブースト)」が新型フィエスタのハイライトである。
イギリスのテクニカルセンターで生まれた997ccのフォード最小ガソリンエンジンは、直噴ターボで、吸排気の可変バルブタイミング機構を備える。3気筒に不可避の振動は、エンジン全体で入念な動的バランスを取ることで解消し、重量やフリクション増加をもたらすバランサーシャフトは持たない。CO2排出量=99g/kmという環境性能を実現する一方、最高出力はいわゆる「リッター100ps」超えの100ps/6000rpm。17.3kgmという1.8リッター級の最大トルクは1400rpmという低回転から発生する。

そのエンジンに組み合わされる変速機は「パワーシフト」と呼ばれるゲトラグ製6段自動MT。1リッター3気筒クラスでは国内初お目見えのデュアルクラッチ式である。と、ボンネットの中だけでも見どころの多いリッターカーである。

2014年2月1日に日本で発売される新型「フォード・フィエスタ」は、モノグレード。大型のリアスポイラーなどのスポーティーなボディーキットは、標準で備わる。
2014年2月1日に日本で発売される新型「フォード・フィエスタ」は、モノグレード。大型のリアスポイラーなどのスポーティーなボディーキットは、標準で備わる。
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インテリア。グラブボックスやカップホルダーを赤く照らすアンビエントライトや、ソニー製のプレミアムサウンドシステムなどが与えられる。
インテリア。グラブボックスやカップホルダーを赤く照らすアンビエントライトや、ソニー製のプレミアムサウンドシステムなどが与えられる。
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優れた燃費性能と環境性能を両立させたという1リッター3気筒ターボエンジン。ちなみに、17.7km/リッターの燃費値(JC08モード)は、これまで日本に導入されたフォード車の中で、最高である。
優れた燃費性能と環境性能を両立させたという1リッター3気筒ターボエンジン。ちなみに、17.7km/リッターの燃費値(JC08モード)は、これまで日本に導入されたフォード車の中で、最高である。
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フォード・フィエスタ 1.0 EcoBoost(FF/6AT)【試乗記】の画像 拡大
フォード の中古車

乗って驚く3気筒

箱根の試乗会で与えられた時間は90分。早速、ホテルを出て、ゆるい上りのストレートに出たところで軽いアクセルを踏み込む。その途端、グワッとのけぞるように加速したので驚いた。たしかに、とても1リッターとは思えない力強さである。

軽い吹け上がりのエンジンマナーもすばらしい。走りながら注意深く観察すれば、ちょっとくすぐったいような3気筒特有のビートに気づくが、ボーっとしていたらわからない。エンジン音そのものも全般に「静か」と言っていいほど低い。スタート/ストップ機構が付くのはMTだけで、日本仕様のパワーシフトモデルは停車中もアイドリングを続けるが、気になる音や振動はない。とにかく3気筒エンジンにありがちな“安っぽさ”がない。お金のとれる3気筒である。

さらにワインディングロードへ踏み入れると、この直噴3気筒ターボはスポーツエンジンとしても楽しい。パワーシフトはシフトパドルの代わりにサムシフトという小さなスイッチをフロアセレクターに備える。変速中は片手運転になるので、パドルシフトのほうが正直ありがたいのだが、それでも積極的に親指でマニュアルシフトしながら走りたくなる、そういうエンジンだ。

ヨーロッパではフォーカスをはじめとする上級モデルにも搭載される1.0リッター エコブーストが、フォード製ガソリンエンジン随一のエコユニットであることは間違いないが、決して“エコ倒れ”に終わっていない。「楽しくなくて、なにがエコカーか!」と言いたげなキャラクターは日本の環境エンジンも学ぶべき点だと思う。

峠道を行く「フィエスタ」。そのパワーステアリングには、“横風や路面のうねりに対する微調整の労力”を軽減する、補正機能も備わる。
峠道を行く「フィエスタ」。そのパワーステアリングには、“横風や路面のうねりに対する微調整の労力”を軽減する、補正機能も備わる。
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メーターはアナログ表示の2眼式。フォードのブランドカラーであるブルーの照明が採用されている。
メーターはアナログ表示の2眼式。フォードのブランドカラーであるブルーの照明が採用されている。
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フロントシート。その質感とホールド性の向上にこだわったという。
フロントシート。その質感とホールド性の向上にこだわったという。
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荷室の容量は、5人乗車時で276リッター。リアシートを倒すことで、最大960リッターにまで拡大できる。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
荷室の容量は、5人乗車時で276リッター。リアシートを倒すことで、最大960リッターにまで拡大できる。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
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見た目のよさも規格外!?

振動対策と剛性対策のためか、このエンジンのブロックは鋳鉄製である。アルミを採用した場合より2割重くなっているというが、それでもエンジン単体重量は97kgに収まる。85kgといわれるフィアットのツインエアには及ばないが、こちらは1気筒と122ccと15ps多い。
コンパクトさも自慢で、シリンダー間の距離を6.1mmまで詰めた3気筒ブロックの底面は、A4サイズの紙の中に収まるそうだ。このエンジンは、A4の紙に上に“立つ”のである。ワインディングロードでのノーズの軽さや軽快な身のこなしは、パワーユニットの軽量コンパクト設計に負うところ大だろう。

エンジンのパワフルさを考えると、サスペンションはもう少し硬くてもいいかなと思ったが、その一方で、路面からの細かいゴツゴツ感は、終始、わりとくる。195/45R16のタイヤは韓国のハンコックが付いていた。それよりも、直前まで乗っていたのが、シルキースムーズな乗り心地の「フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント」だったからかもしれない。いずれ場所をあらためて再確認したい。

走りの性能の一端を垣間見たあと、箱根のテッペンで撮影していると、スタッフ一同、カッコイイ! と意見が一致した。全長4mに収まるBセグメントとしてもコンパクトなボディーなのに、アグレッシブな顔を持つワンモーションフォルムは、まるでアストン・マーティンの5ドアハッチのようである。

サイドビュー。ドアパネルに深く刻まれたキャラクターラインとクロムのベルトラインなどにより、躍動感が表現されている。
サイドビュー。ドアパネルに深く刻まれたキャラクターラインとクロムのベルトラインなどにより、躍動感が表現されている。
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16インチのアルミホイールは、標準で備わるアイテム。組み合わされるタイヤは、ハンコックの「ヴェンタスS1 evo」。
16インチのアルミホイールは、標準で備わるアイテム。組み合わされるタイヤは、ハンコックの「ヴェンタスS1 evo」。
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台形をモチーフにしたグリルや切れ長のヘッドランプなど、アストン・マーティンのスポーツカーを思わせる(?)ディテールが、新しい顔の特徴。
台形をモチーフにしたグリルや切れ長のヘッドランプなど、アストン・マーティンのスポーツカーを思わせる(?)ディテールが、新しい顔の特徴。
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リアシート。フロントの2脚同様、シートバックと座面には、特徴的なしま模様が配される。
リアシート。フロントの2脚同様、シートバックと座面には、特徴的なしま模様が配される。
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払う/付き合う価値がある

今回の試乗で燃費のチェックはできなかったが、日本国内で計測したJC08モード値は17.7km/リッターである。自社内で、熟達した自社スタッフの運転で計測をしてもらえる国産メーカーと違って、輸入車の燃費審査はいわばアウェイで行われるから、それだけにこのJC08データは実用燃費に近いと思われる。
それでも新型フィエスタがエコカー減税の適応対象にならなかったのは、年間2000台以下のPHP(輸入自動車特別取り扱い)制度を使って輸入されるためである。2013年、トータルでも約3500台だったフォード車は、すべてこの簡易承認制度で輸入されている。

しかし、装備ひとつとっても、中身は濃い。低速時自動ブレーキシステムの“アクティブ・シティ・ストップ”は標準装備。モニターは4.2インチと小ぶりだが、リアビューカメラも付く。走りの性能を考え併せると、229万円の価格は高くないと思う。

最大の弱点は、販売拠点の少なさである。フォードディーラーは都内に4カ所、全国でも55店舗にとどまる。でも、それを言っちゃあおしまいだ。1リッターの実用コンパクトカーなのに、野を越え山を越え、ディーラーを訪ねてゆく価値がある。それくらいこの新型3気筒は魅力的だ。ぜひ一度おためしあれ。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰昌宏)

荷室フロアの下にも、予備の収納スペースが確保されている。(写真をクリックすると、床下のスペースが見られます)
荷室フロアの下にも、予備の収納スペースが確保されている。(写真をクリックすると、床下のスペースが見られます)
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ダッシュボード中央の4.2インチのインフォメーションディスプレイ。後退時は、リアビューモニターとして働く。
ダッシュボード中央の4.2インチのインフォメーションディスプレイ。後退時は、リアビューモニターとして働く。
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フロントウィンドウ上部には、衝突被害を軽減する「アクティブ・シティ・ストップ」のレーザーセンサーが備わる。コンチネンタル製。
フロントウィンドウ上部には、衝突被害を軽減する「アクティブ・シティ・ストップ」のレーザーセンサーが備わる。コンチネンタル製。
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テスト車のデータ

フォード・フィエスタ 1.0 EcoBoost

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1720×1475mm
ホイールベース:2490mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:100ps(74kW)/6000rpm
最大トルク:17.3kgm(170Nm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)195/45R16 84V(後)195/45R16 84V(ハンコック・ヴェンタスS1 evo)
燃費:17.7km/リッター
価格:229万円/テスト車=229万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3201km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--
参考燃費:--

フォード・フィエスタ 1.0 EcoBoost
フォード・フィエスタ 1.0 EcoBoost
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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