無事故でも安くならないワケ

自動車税を払い終えたら、今度は2月に自動車保険の契約満了日もやってくることを思い出した。泣きっ面に蜂とは、このことだ。

おっと、書き忘れたが、前述のイタリアの車検代金には、日本のような自賠責保険は含まれない。自動車の所有者は、民間の保険会社を選んで個々に契約する。加入は所有者の義務だが、日本の自賠責のように効率的に徴収できるシステムはない。そのため、2014年1月29日に発表された恐ろしい最新調査によると、「イタリアでは路上を走る10台に1台が保険未加入」という。

15年前、イタリアに来て最初にクルマを買ったばかりのボクは、知り合いのおじさんが代理店を営んでいた保険会社と契約した。車両保険無しで6万円くらいだった。
しかし、いくら無事故で等級を稼いでも安くならないので、聞けばその理由がわかった。イタリアでは、その保険料の上昇率もすさまじいためだ。インフレに加え、事故件数や保険金詐欺が多いことが背景にある。参考までに、イタリアの自動車保険の高さは、欧州一である。

代理店のおじさんは、とてもよくしてくれる人だったが、背に腹は代えられなかった。次に買ったクルマの途中から、当時ようやく普及しはじめた外資系の電話申し込み型保険に切り替えた。安くなったうえ、ロードサービスも付いた。
幸い無事故を続け、等級は18等級中最高のゼロ(事故を起こさないほど等級が減る)に到達。だが前述のような理由で、一向に安くならない。イタリアの保険に、対人・対物無制限というのはない。ボクが選んだプランは対人650万ユーロ(約8億9000万円)、対物200万ユーロ(約2億8000万円)が上限だ。にもかかわらず、今回保険会社がはじき出した更新保険料は、515.29ユーロ(約7万2000円)にも達した。ここまでくると脱力感にさいなまれて、「いっそもうクルマを手放そうか」とも思った。

しかし、公共交通インフラが脆弱(ぜいじゃく)なイタリア地方都市で、いきなりクルマをやめると不便なことが多すぎる。そこで、ダメもとでほぼ10年ぶりに保険会社を見直すことにした。この国でもようやく最近普及しつつあるネットによる一括見積もりサイトを使うと、イタリアのネット契約系保険会社が、対人・対物とも600万ユーロ(約8億2000万円)、それに人身障害補償、これまでより充実したロードサービスも付帯して、341.99ユーロ(約4万7000円)である。
おおっ、2万5000円も安い! 「早速申し込みだ」と意気込んだら、なぜかネット上でボクのクレジットカード番号を入力しても受け付けてもらえない。仕方がないので、銀行で保険料を振り込んだ。やっと振り込んだあとも、「手続きがまだ完了していません」というメッセージが、携帯やメールにひっきりなしに舞い込んだ。

次は、前の保険会社に更新打ち切りの通知である。「面倒くさいなあ」と思って調べたら、イタリアでも2013年から、日本と同様に更新保険料を期限までに支払わなければ、自動解約となる制度ができたことを知った。保険市場の自由競争と活性化を促す措置らしい。さらに、従来の保険会社では必ず郵便で返送しなければならなかった署名書類も、新しい会社はメール添付でオーケーとのことだ。やたら面倒な手続きが多いイタリアだが、亀の歩みで進歩しているのである。

自動車税の払込証書。今は車検証とともにいつも車両に入れておくだけでよいが、かつては窓ガラスに控えを掲示しておく義務があった。
自動車税の払込証書。今は車検証とともにいつも車両に入れておくだけでよいが、かつては窓ガラスに控えを掲示しておく義務があった。 拡大
保険証券。裏面の中ほどの国名略記で、AL、MA、RUSに☓で消されているのは、アルバニア、モロッコ、ロシアでは保険がカバーされないことを示す。保険加入済みを示す黄色い控えは、窓ガラスに掲示しなければならない。
保険証券。裏面の中ほどの国名略記で、AL、MA、RUSに☓で消されているのは、アルバニア、モロッコ、ロシアでは保険がカバーされないことを示す。保険加入済みを示す黄色い控えは、窓ガラスに掲示しなければならない。 拡大
「CAI」と呼ばれる事故報告用紙。欧州域内で統一フォームが導入されているので、表示言語が違っても、当事者双方で比較的容易に記入できる。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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