名前は似てても、まるで別人

言いたいのは、「かつてのハチロクは、『カローラ』(そして『スプリンター』)だったからよかった」ということだ。
トヨタが作った、昭和の傑作大衆車「カローラ」。その実用性あふれる小さなボディーに頑丈なエンジンを載せて、リア駆動で走らせる――そんな条件が奇跡的に合わさって、今も変わらぬ魅力へとつながっている。

(とまぁ、ここでようやく話がもとに戻るわけですが)
その点「トヨタ86」は、筆者の目にはどうしても“現代版ハチロク”に見えなかった。いまもハチロクに乗り続ける人はみんな、同じ感想だと思う。

「トヨタ86」はむしろ、「当時のハチロクがなりたかった姿」なんじゃないか? もっといえば、「当時ハチロクに乗っていた若者たちが、乗りたかったスポーツカー」なんじゃないか? ちょっと格上で手が届かなかった、“憧れのセリカ”に見えてならなかったのである。

往年のスーパースポーツ「2000GT」を横目にモックアップが作られたという「86」には、往年のハチロクのようなやぼったさがまったくない。水平対向エンジンを搭載したことで、フロントフェンダーよりも低められたボンネット。女の子を隣に乗せても様になりそうな、流れるようなシルエット……。

実際に運転しても、そのスマートなイメージは変わらない。
ハイパワーとはいえないが、リニアに吹け上がるエンジンは、最初からリッター100psの出力を得るほどに磨き上げられている。
前後のウェイトバランスを適正化された、FRレイアウトの洗練。曲がらないクルマを曲げようと格闘したハチロクとは正反対に、「トヨタ86」はとことん素直に曲がり、最小限のスリップアングルで華麗にコーナリングする。むしろパワーよりイナーシャ・バランスで選ばれたとされる水平対向エンジンは、もはやシャシーの一部とすら言える。


第136回:“平成のハチロク”、乗ってみたらどうだった? 〜「トヨタ86」チョイ乗り試乗会からの画像 拡大
こちらは「トヨタ2000GT」(のスライド写真)。「86」のデザイナーは、「2000GT」を製作の現場に置いてインスピレーションを喚起したという。
こちらは「トヨタ2000GT」(のスライド写真)。「86」のデザイナーは、「2000GT」を製作の現場に置いてインスピレーションを喚起したという。 拡大
いざ、“平成のハチロク”をドライブ。富士のショートコースでムチを当てる。
いざ、“平成のハチロク”をドライブ。富士のショートコースでムチを当てる。 拡大
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