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日産スカイライン350GT ハイブリッド Type P(FR/7AT)

新しい“ファン・トゥ・ドライブ” 2014.03.19 試乗記 下野 康史 ハイブリッド車となって登場した、13代目「スカイライン」。日本のセダンのビッグネームは、どのような進化を遂げたのか? 最も人気の高いグレードで、その仕上がりを確かめた。

ハイブリッドでライバル迎撃

新型スカイラインが2014年2月26日に発売された。発表は昨年の11月11日で、東京モーターショーにも出品された。そもそもこの第13代スカイラインは、「インフィニティQ50」の国内版だから、アメリカでは昨年8月から販売されている。

最近こういう、まだ買えないクルマが独り歩きしている、みたいな例が多くてややこしい。「スバル・レヴォーグ」なんか、発売は今春と言われながら、半年も前からメディアのなかでは走っている感じだ。気をもたせ過ぎて、買えるときにはみんな飽きてる、なんてことがないといいのだが。ちなみに、スカイラインの発売日時点での受注台数は約4200台だという。

新型スカイライン最大のニュースは、品ぞろえが3.5リッターハイブリッドのみになったことである。年間2万台といわれるLクラスセダン市場で、強敵の輸入車に対抗するにはハイブリッドしかないという、「カムリ」や「アコード」と同じ国内政策だ。ただし、スカイラインの場合、ガソリン車である従来のV36シリーズも一部継続販売される。

新型は「世界最速のハイブリッド」をうたう。けれども、大磯で開かれた試乗会で最初に用意されていたのは、特設のハンドリングコースだった。

7年ぶりのフルモデルチェンジで13代目となった「日産スカイライン」。新型では、これまでの“スポーティー”に加えて、“プレミアム”なキャラクターが強くアピールされる。
7年ぶりのフルモデルチェンジで13代目となった「日産スカイライン」。新型では、これまでの“スポーティー”に加えて、“プレミアム”なキャラクターが強くアピールされる。
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「凛(りん)とした躍動感」を表現したというエクステリアは、フロントからサイド、リアに至るまで、起伏に富んでいる。
「凛(りん)とした躍動感」を表現したというエクステリアは、フロントからサイド、リアに至るまで、起伏に富んでいる。
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新型「スカイライン」の日本における取り扱いは、発売時点ではハイブリッド車に限られる。なお、海外の市場では、ガソリン車もラインナップされる。
新型「スカイライン」の日本における取り扱いは、発売時点ではハイブリッド車に限られる。なお、海外の市場では、ガソリン車もラインナップされる。
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“電子の舵”に新たな魅力

スカイラインの目玉装備は世界初をうたう「ダイレクトアダプティブステアリング」である。ハンドルの動きを電気信号に変え、アクチュエーターが操舵(そうだ)角を変える。大ざっぱに言うと、ラジコンカーと同じだ。ステアリングシャフトは存在するが、それは万一システムが異常をきたした際の担保で、エンジンを始動するとシャフトの電動クラッチが切れ、完全なステアリング・バイ・ワイヤになる。

シャープなハンドリングや、路面からの外乱を受けない操舵品質の高さ、といったメリットを確認するために、まず特設コースから150分の試乗が始まったわけだが、結論を言うと、ステアリング単体から特に劇的な違いは感じられなかったものの、トータルの操縦性能はライバルの欧州セダンに遜色ないと思われた。

ドライブモードをスポーツにすると、ステアリングは手応えを増し、操舵レスポンスはウルトラクイックと言っていいほどシャープになる。ワインディングロードを走れば、ペースを上げるほどにボディーが小さく感じられる。1.8トン近いセダンにして“喜んで曲がる”キャラクターは、新型スカイラインの大きな魅力である。
ただ、バイ・ワイヤのステアリングなのに、ステアリングシャフトが残っているというのは、いかにも“過渡的”だ。自動運転にも役に立つ新技術をいち早く製品化してみせたかったというのが、この電子ステアリングの大きな意義だろう。

ワインディングロードを行く「スカイライン」。「電気信号を介するステアリングシステムが、世界一クイックなハンドリングをもたらす」とうたわれる。
ワインディングロードを行く「スカイライン」。「電気信号を介するステアリングシステムが、世界一クイックなハンドリングをもたらす」とうたわれる。
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インテリアにおいては、“囲まれ感のある運転席”と“解放感のある助手席”が、デザイン上のポイント。
インテリアにおいては、“囲まれ感のある運転席”と“解放感のある助手席”が、デザイン上のポイント。
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センターコンソールには、8インチのナビ画面(上)と7インチの各種操作パネル(下)、2つの液晶モニターが備わる。(写真をクリックすると、さまざまな画面表示が見られます)
センターコンソールには、8インチのナビ画面(上)と7インチの各種操作パネル(下)、2つの液晶モニターが備わる。(写真をクリックすると、さまざまな画面表示が見られます)
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シフトレバーの付近には、ダイヤル式の操作スイッチと、ドライブモードの選択スイッチ(写真下側)がレイアウトされる。
シフトレバーの付近には、ダイヤル式の操作スイッチと、ドライブモードの選択スイッチ(写真下側)がレイアウトされる。
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速さは歴代ナンバーワン

3.5リッターV6に組み合わされたハイブリッドシステムは、「フーガ」でおなじみの「ワンモーター・2クラッチ」方式である。エンジン、モーター、7段ATを直列に配置し、モーターの前とATの後ろにクラッチを入れた。その結果、モーターのみのEV走行もできる。

システム出力364psのハイパワーはフーガと同じだが、こちらは車重が70~80kg軽い。メーカー発表の0-100km/h加速は4.9秒。「BMW 3シリーズ」のなかでも最速の「アクティブハイブリッド3」(同5.1秒)より速い。ゼロヒャク4秒台といえば、過去にあったどんなスカイラインよりも速いはずだ。

実際、路上でも新型スカイラインはすばらしいスピードを見せる。しかも、力走していても、トロトロ走っていても、V6ハイブリッドは常に高級で、かつ気持ちいい。EV走行に入って、タコメーターの針がゼロ回転に落ちると、古い人間としてはいちいちギョッとすることを除けば、ハイブリッドという特別なパワーユニットであることも意識させない。出たてのフーガは、回生ブレーキと機械式ブレーキとの協調が完璧ではなく、停止直前に制動力不足を感じさせたが、今はそんなこともない。

ただし、スピードセダンぶりを堪能していると燃費にはてきめんのようで、箱根ターンパイクを上っていったところ、車載コンピューターの平均燃費値は4.8km/リッターまで落ちた。西湘バイパスを15km流して出発地点に戻ると7.3km/リッターまで回復したが。

パワーユニット。3.5リッターV6エンジンとモーターが生み出すシステム総出力は最高364psに達する。
パワーユニット。3.5リッターV6エンジンとモーターが生み出すシステム総出力は最高364psに達する。
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電子制御のステアリング機構を持つ13代目「スカイライン」。過去のモデルで目玉とされた4輪操舵システムは備わらない。
電子制御のステアリング機構を持つ13代目「スカイライン」。過去のモデルで目玉とされた4輪操舵システムは備わらない。
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メーターはアナログの2眼式で、中央の液晶画面には、各種の車両情報や安全装備の警告などが表示される。
メーターはアナログの2眼式で、中央の液晶画面には、各種の車両情報や安全装備の警告などが表示される。
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荷室の容量は400リッター。トランクスルーはできない。写真の奥に見える注意書きは、ゴルフバッグを4個積み込む際の“上手な積み方”を示すもの。
荷室の容量は400リッター。トランクスルーはできない。写真の奥に見える注意書きは、ゴルフバッグを4個積み込む際の“上手な積み方”を示すもの。
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3シリーズもたじたじ?

試乗車は、これまでの受注で4割近くを占める「Type P」。塗装は「HAGANEブルー」という新色。開発のベンチマークはBMW 3シリーズをはじめとする、同クラスのドイツセダンだそうだが、たしかにボディーカラーまで3シリーズをベンチマークにしたかのような塗色である。この日はたまたま「BMW 435i カブリオレ」で試乗会場へ向かったのだが、スカイラインのアルミホイールは「Mスポーツ」のそれとそっくりだった。

室内で好印象だったのは、全長4.8m、全幅1.8m超の大柄なボディーなのに、運転席にほどよいタイト感があること。ダブッとしていないのだ。この手のセダンとしてはステアリングホイールは小径で、運転操作の動線も短い。エンジンに華がない今のガソリン4気筒系3シリーズよりファン・トゥ・ドライブだと思う。そして、アクティブハイブリッド3よりは200万円安い。

若いころ、スカイラインに乗っていた人が、いま3シリーズや「Cクラス」や「A4」といったドイツの人気御三家セダンに乗っている。それがスカイラインの抱えるモンダイである。という分析は、まったく間違ったものでもないはずだ。BMWっぽくすることがモンダイの解決になるかどうかはわからないが、3シリーズオーナーも今度のスカイラインには試乗してみる価値があると思う。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)

「Type P」のホイールサイズは、標準で17インチ。テスト車はオプション「切削光輝19インチアルミホイール」(写真)を装着する。ともにタイヤは、パンク後も走行可能なランフラットタイプとなる。


    「Type P」のホイールサイズは、標準で17インチ。テスト車はオプション「切削光輝19インチアルミホイール」(写真)を装着する。ともにタイヤは、パンク後も走行可能なランフラットタイプとなる。
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シートカラーはベージュ(写真)のほかにブラックも用意される。
シートカラーはベージュ(写真)のほかにブラックも用意される。
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こちらはリアシート。トランクスルー機構は持たないものの、中央席の背もたれ部分にはアームレストが備わる。
こちらはリアシート。トランクスルー機構は持たないものの、中央席の背もたれ部分にはアームレストが備わる。
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日産スカイライン350GT ハイブリッド Type P(FR/7AT)【試乗記】の画像 拡大

 

テスト車のデータ

日産スカイライン350GT ハイブリッド Type P

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4790×1820×1440mm
ホイールベース:2850mm
車重:1770kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7AT
エンジン最高出力:306ps(225kW)/6800rpm
エンジン最大トルク:35.7kgm(350Nm)/5000rpm
モーター最高出力:68ps(50kW)
モーター最大トルク:29.6kgm(290Nm)
タイヤ:(前)245/40RF19 94W/(後)245/40RF19 94W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:17.8km/リッター(JC08モード)
価格:486万3600円/テスト車=539万3850円
オプション装備:ビジョンサポートパッケージ<ハイビームアシスト、アクティブAFS+自動防眩式ルームミラー>(6万3000円)/Boseサウンドシステム(14万1750円)/ボディーカラー<HAGANEブルー>(4万2000円)/切削光輝19インチアルミホイール+245/40RF19 94Wランフラットタイヤ(21万円)/フィニッシャー<インストゥルメントパネル、センタークラスター、ドアトリム>(7万3500円)

テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

日産スカイライン350GT ハイブリッド Type P
日産スカイライン350GT ハイブリッド Type P
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“高品質感の象徴”として、グリルやホイールのセンターにはインフィニティのエンブレムが添えられている。
“高品質感の象徴”として、グリルやホイールのセンターにはインフィニティのエンブレムが添えられている。
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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