フォード・グラナダで交通違反
しかし、20年の歳月は悪ガキたちを大人にしていた。町を出て仕事で成功し、幸せな家庭を築いている。マトモに就職せずにふらふら遊んでいるのは、ゲイリーだけなのだ。いちばん仲のよかったアンディ(ニック)は、法律事務所を経営している。スティーブン(パディ・コンシダイン)、オリバー(マーティン・フリーマン)も立派な社会人で、ピーター(エディ・マーサン)は「アウディ」のディーラーに勤めている。
かつての友人のもとを訪れて「また一緒にやろうぜ!」と呼びかけるのは、『ブルース・ブラザーズ』のようだ。でも、目的がくだらない。パブ12軒をまわって死ぬほどビールを飲もうというだけなのだから。腐れ縁なのか、4人は約束の日に指定された駅に現れる。ゲイリーは大幅に遅刻して愛車「フォード・グラナダMkII」で登場した。英国フォードが製造していた中型セダンで、彼が乗ってきたのは2代目モデルだ。1985年に新型に切り替わっているので、30年落ちぐらいだろうか。トランクの後端に装着されたウレタン製のエアスポイラーが時代を感じさせる。
ぎゅうぎゅう詰めで5人フル乗車し、山道をぶっ飛ばすうちに白バイに捕まってしまう。警官に尋問されたゲイリーは免許証を忘れたと言い、ピーターと名乗った。無免許の彼は、これまでもずっとこの方法で交通違反を繰り返してきたのだ。彼は、高校時代から何も進歩していない。だからこそ、人生のピークだったあの頃にやり残した唯一のことに落とし前をつける必要がある。ゴールデン・マイルをやり遂げることが、新たな一歩を踏み出すための条件なのだ。
久しぶりの故郷の町で、5人はパブめぐりを始める。しかし、学園のスターだったゲイリーに、人々はよそよそしいそぶりをみせる。そして懐かしいはずのパブは大資本に系列化され、どの店に行っても同じような内装と画一化されたメニューが並んでいた。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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