世界の終わりでフィエスタ登場

この町の人々は、何者かによってコントロールされていた。魂が抜けているから、ゲイリーたちのことがわからない。4軒目のパブで、彼らは若者たちに襲撃される。自分の意思ではなく、明らかに操られている様子だ。ゲイリーたちは脱出を考えるが、町の人々の大半がおかしくなっている状況では、気づかれたら捕まってしまう。怪しまれないためには、ゴールデン・マイルを続けてビールを飲み続けるしかない。

かくして、ビールを飲み続けることが町を侵略した何者かに対する正義の戦いとなるのだ。ゴールとなる12軒目のパブの名前は、「ワールズ・エンド」。世界の終わりが訪れるのを阻むために、5人は世界の終わりを目指してビールを飲み続ける。

まことに酒飲みに都合のいいストーリーである。人類を救うには飲むしかないのであり、泥酔した者がヒーローだ。飲めば飲むほど強くなる『酔拳』と同じ構造である。だらしなく飲み過ぎては二日酔いに苦しむ飲み助が、自分を正当化するためにひねり出す妄想のようなものだ。しかし、この映画の世界では、ゲイリーこそが真実を体現する存在である。まっとうな社会人として規律ある人生を歩んでいたはずの4人も、いつの間にか彼と一緒に喜々としてばか騒ぎを始めるのだ。

彼らの作る映画は、いつもこうなる。『ショーン・オブ・ザ・デッド』では、パブびたりでヤル気のない主人公がゾンビ退治に活躍し、別れそうになっていたガールフレンドとよりを戻す。しかし、彼が立ち直ったのではなく、ガールフレンドが一緒にパブびたりになるという困った解決法だった。『ホット・ファズ』では、ハリウッドのアクション刑事映画に憧れる警官が、映画で学んだド派手アクションを武器に悪の組織を壊滅させた。作品に現れるボンクラたちは、エドガー、サイモン、ニックが自分たちを投影した人物なのだ。

クルマだって、最新の高級車が一番とは限らない。ピーターがディーラーで顧客に薦めるアウディより、ボロいグラナダのほうがよほど魅力的に描かれる。ただ、グラナダは壊されてしまって役に立たない。脱出のために活躍するのは、やはりフォードのクルマだ。先代の「フィエスタ」である。ゲイリーのドライビングテクニックが火を噴く。でも、酔っぱらいのはずじゃ……自動車メディアとしては扱いづらい話だ。飲酒運転は、ダメ。ゼッタイ。

(文=鈴木真人)


第73回:グラナダが壊れたらフィエスタで―フォード車大活躍!『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』の画像 拡大
「フォード・フィエスタ」
「フィエスタ」は2014年から日本への輸入が復活し、ダウンサイジングした1リッターのエコブーストエンジンが好評だ。映画で使われているのは先代モデルで、2002年から2008年まで生産されていたもの。日本でも一時期販売されていた。

「フォード・フィエスタ」
    「フィエスタ」は2014年から日本への輸入が復活し、ダウンサイジングした1リッターのエコブーストエンジンが好評だ。映画で使われているのは先代モデルで、2002年から2008年まで生産されていたもの。日本でも一時期販売されていた。
    
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『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
2014年4月12日(土)、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
配給:シンカ、パルコ
http://www.worldsend-movie.jp/
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
    2014年4月12日(土)、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
    配給:シンカ、パルコ
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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