ルマンに参戦する意義とは?

われわれプレス向けのホスピタリティーも充実していた。テントではなくこのために建てられた2階建ての立派なブースは、24時間オープンしていてレースの情報を逐一確認することができたし、時には普通に食事をとりに来たドライバーたちと遭遇することもできた。しかもLMP1とGT-Proのポルシェワークスチームに何か動きがあるとアナウンスが入り、またレース途中のドライバーが来て状況報告をしてくれたりもしたのである。

ルマンのこうした部分、ここ十数年の間に大きく変化させたのは間違いなくアウディの参戦だ。コース上だけでなくコース外でもアウディはルマンを洗練させ、進化させた。ではポルシェはといえば、16年ぶりの復帰にあたって単にマシンとチームを用意しただけでなく、こうした部分でも最新の常識にのっとって、一番の環境を用意してみせたのだ。

彼らにとってのルマン復帰とは、ここまでひとくくりでの話なのだろう。勝つためにレースを戦うだけでなく、それを観客にどう楽しんでもらうか、ユーザーにどう誇りを感じてもらうか、ひいてはどうブランドイメージ向上、そしてセールスにつなげていくか。そこまでがすでにパッケージになって考えられていた。そんな風に見ることができる。

惜しくも勝利が手のひらから滑り落ちてしまったトヨタだが、それはそれとして何となくこうしたルマンを戦うことで、何をどうしたいのかというメッセージが希薄に思えた感は否めない。外野からは、楽しむ、楽しませるということに無頓着で、裏返せば勝利至上主義みたいになってしまっているようにも見えた。そうした余裕がなかったのは事実だろうけれど、だからこそ負けるとすべてが終わりみたいな悲壮感につながってしまっていた気がするのだ。

ルマンという伝統あるレースに参加し、勝利を目指すことを、もっと文化への貢献のように考えることができれば、そしてそこにいることを自らまず楽しみ、そして一緒に楽しんでくれる人の輪を大きくしていくことができれば、もっとルマンへの参戦が、意義あるものになるのではないだろうか。当たり前のようにそれができ、そして当たり前のように毎年そこにいるトヨタになったら、気付くと「あれ?」というぐらい簡単に勝利が転がり込んできたりするんじゃないか……なんてことを、その戦いぶりを見て勝手に思ったのだった。

車検に臨む「ポルシェ919ハイブリッド」。
車検に臨む「ポルシェ919ハイブリッド」。 拡大
ミス・ルマンと「919ハイブリッド」。
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ポルシェAGチーム・マンタイの面々。
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ファンにサインするポルシェのドライバー、ティモ・ベルンハルト。
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