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スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight(4WD/CVT)

気持ちのいいスバル 2014.07.29 試乗記 下野 康史 日本を意識して開発したという、新型ワゴン「スバル・レヴォーグ」に試乗。「レガシィ」誕生から25年の節目に生まれた“新顔”の実力を、燃費とあわせて報告する。

レヴォーグ=ニッポンのレガシィ

「日本人の愛したレガシィツーリングワゴン」を復活させたのが、レヴォーグである。現行の5代目は米国育ちで、日本語が完璧ではない。デッカくてやさしくていいやつなのだが、いまひとつ日本の水になじまない。やっぱり日本人の日本人による日本人のためのレガシィが必要だ! といって作られたのがレヴォーグだ。

試乗したのは「1.6GT EyeSight」。借り出しの時、広報の人に聞くと、1.6リッターと2リッターがあるレヴォーグで最も受注が多いのは、このひとつ上の1.6GT-S EyeSightだという。Sの付かないGTは、18インチのタイヤが17インチになり、前後ディスクブレーキのローター径もひとまわり小さくなり、ダンパーがビルシュタインではなくKYBになるのが主な違い。3グレードある1.6リッターシリーズの真ん中だ。

スバルビル地下の駐車場で試乗車と対面する。1780mmあるボディー全幅は、今のレガシィツーリングワゴンと同じなのだが、全長は10cm短く、全高は5cm低い。といってもその程度の差しかない。
なのに、現行レガシィよりは明らかにコンパクトに見える。たぶんそれは大いにデザインのせいである。面が一枚でドーンと大きいレガシィに対して、レヴォーグはプレスラインが込み入っていて、小作りに見えるのである。ノーズなどはもう少しカタチがシンプルでもよかったように思うが、そのへんは好き好きか。

2013年11月の東京モーターショーでデビューした、スバルの新型ワゴン「レヴォーグ」。翌2014年の6月20日に発売された。全長とホイールベースは、現行型「レガシィツーリングワゴン」比で、ともに10cm短くなっている。
2013年11月の東京モーターショーでデビューした、スバルの新型ワゴン「レヴォーグ」。翌2014年の6月20日に発売された。全長とホイールベースは、現行型「レガシィツーリングワゴン」比で、ともに10cm短くなっている。
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インテリアは、ピアノブラックのパネル類や、ソフトパッドをあしらったダッシュボードなどで、上質感が演出される。下端が平らなステアリングホイールも特徴的。
インテリアは、ピアノブラックのパネル類や、ソフトパッドをあしらったダッシュボードなどで、上質感が演出される。下端が平らなステアリングホイールも特徴的。
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各種の車両情報を表示する、ダッシュボード上の4.3インチ「マルチファンクションディスプレイ」。操作スイッチは、画面より1段下にレイアウトされる。(写真をクリックすると、画面の表示バリエーションが見られます)
各種の車両情報を表示する、ダッシュボード上の4.3インチ「マルチファンクションディスプレイ」。操作スイッチは、画面より1段下にレイアウトされる。(写真をクリックすると、画面の表示バリエーションが見られます)
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ヘッドランプには、リアコンビランプと同様、“コの字”型の意匠が採用される。テスト車はさらに、LED4灯ロービーム/ハロゲンハイビームランプ/ウェルカムライティングのセットオプションを装着していた。


    ヘッドランプには、リアコンビランプと同様、“コの字”型の意匠が採用される。テスト車はさらに、LED4灯ロービーム/ハロゲンハイビームランプ/ウェルカムライティングのセットオプションを装着していた。
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スバル レヴォーグ の中古車

四駆と思えぬかろやかさ

レヴォーグに乗るのは初めてである。新宿の地上に出て走り始めた第一印象は、乗り心地のよさだった。プロトタイプは乗り心地の洗練がいまひとつだったと聞いていただけに、意外である。

バネ下の動きがかろやかだ。四駆と二駆が混在するSUVの試乗会で、4WDのあとにFFモデルに乗ると、やっぱり二駆は軽くていいねえと話すことがよくあるが、そういう軽さが、四駆なのにこのレヴォーグにはある。かろやかといっても、しっとりしているから、乗り心地の品質感が高い。ストロークのあるサスペンションに、初期作動のスムーズないいダンパーが付いている感じだ。

すぐ高速に上がり、行きつけの山道へ行くと、ハンドリングも好印象である。コーナリングはひとくちに素直で安定している。終始、フットプリントの大きさを実感させ、重心感も低い。その安定を引きはがすような馬鹿力はないから、born to be wildなスポーツワゴンではないが、そこそこのハイペースで走っていると楽しい。
ただ、1.6リッターのフツーグレードとはいえ、レヴォーグへの期待値を考えると、ステアリングはもうちょっとクイックで速くてもいいかなと思った。タイトコーナーの多いワインディングロードでは、けっこうハンドルをグルグル回す必要がある。

スイッチひとつでエンジンフィールや出力特性を変えられる「SI-DRIVE」は全車標準装備。ただし、1.6リッターは2モード、2リッターモデルは(動力性能をフルに引き出せる「S♯」を加えた)3モードと、そのメニューの数には差異がある。
スイッチひとつでエンジンフィールや出力特性を変えられる「SI-DRIVE」は全車標準装備。ただし、1.6リッターは2モード、2リッターモデルは(動力性能をフルに引き出せる「S♯」を加えた)3モードと、そのメニューの数には差異がある。
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個性的なデザインのホイールは、17インチのアルミホイールに、ツートンカラーのホイールキャップを組み合わせたもの。
個性的なデザインのホイールは、17インチのアルミホイールに、ツートンカラーのホイールキャップを組み合わせたもの。
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クルーズコントロールの操作スイッチや走行モードの選択ボタンは、ステアリングホイールのスポーク部に置かれる。
クルーズコントロールの操作スイッチや走行モードの選択ボタンは、ステアリングホイールのスポーク部に置かれる。
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「1.6GT EyeSight」のシート地は、シルバーステッチ入りのファブリック/トリコット。オプションで、本革シートも用意される。
「1.6GT EyeSight」のシート地は、シルバーステッチ入りのファブリック/トリコット。オプションで、本革シートも用意される。
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「非力なほう」でも不満なし

1.6リッターエンジンは、レヴォーグ初出の直噴水平対向4気筒 DOHC ターボである。レギュラーガソリン仕様でエコカー減税フルマークの170psユニット。だが、レガシィと同じ2リッターターボの300psとは大差だ。実際、1.6リッターでどうなの? とお考えの向きもあろう。

試乗期間中、福島県の山奥まで走った。大人4人乗車+カメラ機材という、ステーションワゴン本来の使い方をしてみたわけだが、高速道路から山坂まで、パワーには不満を覚えなかった。

普段使いでも、このクルマ、実用域の加速が気持ちいい。エンジンのトルク特性だけでなく、CVTとの協調もうまくいっているのだろう。角を曲がってフツーに立ち上がるときが素早い。高速道路で追い越しをかけるときよりも、こうした場面のほうが力強い。

しかもうれしいのはエンジンのマナーだ。昔のようにズビズバ言ったりはもちろんしないが、回転フィールの奥の奥に、ちょっとザワついた水平対向エンジンの“存在感”がある。長年のスバリストなら、凡百の直列4気筒にはないその違いがわかるはずだ。MTだとおそらくもっとエンジンの息づかいや表情が伝わりやすくなるだろう。「インプレッサ」のように、ベーシックなグレードでいいからMTモデルを作っちゃもらえまいか。

今回の「レヴォーグ」で初搭載された、直噴の1.6リッター水平対向4気筒ターボ。軽快な走りと優れた燃費性能の両立がうたわれる。
今回の「レヴォーグ」で初搭載された、直噴の1.6リッター水平対向4気筒ターボ。軽快な走りと優れた燃費性能の両立がうたわれる。
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ワインディングロードを行く「レヴォーグ」。コーナリング中、フロント内輪にブレーキをかけることで旋回能力をアップさせる「アクティブ・トルク・ベクタリング」を装備する。
ワインディングロードを行く「レヴォーグ」。コーナリング中、フロント内輪にブレーキをかけることで旋回能力をアップさせる「アクティブ・トルク・ベクタリング」を装備する。
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リクライニング機能が備わるリアシート。背もたれは、60:40の分割可倒式となっている。(写真をクリックすると背もたれの角度調節が見られます)
リクライニング機能が備わるリアシート。背もたれは、60:40の分割可倒式となっている。(写真をクリックすると背もたれの角度調節が見られます)
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5人乗車時の荷室容量は、「レガシィツーリングワゴン」(520リッター)を上回る522リッター。後席を倒すことで、さらに拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
5人乗車時の荷室容量は、「レガシィツーリングワゴン」(520リッター)を上回る522リッター。後席を倒すことで、さらに拡大できる。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
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まだ“手放し”ではほめられない?

高速道路で「アイサイトver.3」の機能を試した。“アクティブレーンキープ”もそのひとつ。ステレオカメラで両側の白線を認識して、ステアリング操作をアシストする。
しかし、まだ自動操舵(そうだ)ではないから、ドライバーがハンドル入力をしないと、クルマが怒って(?)作動をキャンセルする、といった概要は「フォルクスワーゲン・ゴルフ」まで降りてきたドイツ車のシステムと同じだが、レヴォーグのこれはアシストが弱くて、機能しているのかいないのかが判然としなかった。レーンキープするための微舵調整が、ゴルフやメルセデスはもっとグイッグイッと力強い。

だが、アイサイトが進化しているのはたしかである。前走車を追尾するインテリジェントなクルーズコントロールにしても、初期型はたとえ車間距離を最短にセットしても、間を開け過ぎ、割り込まれて使いものにならなかった。今はちゃんと実用になる。

トータルで約650kmを走り、満タン法で10.2km/リッターを記録する。8割近くがフル荷重に近い積載での高速走行だったことを考えると、こんなものだろうか。
福島県まで足を延ばしたのは、「ジャガーFタイプ」の試乗会のためだが、あんな刺激の塊みたいなスポーツカーの直後に乗っても、レヴォーグはスーッと体温を平熱に戻してくれるような、「これはこれでいいクルマ」と思えるクルマだった。長く乗っていても、基本、イヤなところがひとつもなかった。
と言いたいところだが、ひとつあった。車内臭だ。樹脂の内装材や接着剤のせいなのか、トヨタのファミリーカーと同じニオイがする。それが苦手なのは、あくまで個人の感想です。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)

ステレオカメラを使った運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」は、最新の「ver.3」へと進化。カメラが高解像度化・カラー化されたほか、アクティブレーンキープや後退時のAT誤発進抑制制御など新機能も追加された。
ステレオカメラを使った運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」は、最新の「ver.3」へと進化。カメラが高解像度化・カラー化されたほか、アクティブレーンキープや後退時のAT誤発進抑制制御など新機能も追加された。
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アイスブルーに彩られるメーターパネルには、安全装備の作動状況を含む、車両情報が表示される。写真は、車線の逸脱を警告しているところ。
アイスブルーに彩られるメーターパネルには、安全装備の作動状況を含む、車両情報が表示される。写真は、車線の逸脱を警告しているところ。
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荷室の床下には、予備の収納スペースが確保される。その中には、空間を小分けにできる仕切り板も。
荷室の床下には、予備の収納スペースが確保される。その中には、空間を小分けにできる仕切り板も。
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スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight(4WD/CVT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1485mm
ホイールベース:2650mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:277万5600円/テスト車=300万2400円
オプション装備:有料ボディーカラー(3万2400円)/LED4灯ロービーム+ハロゲンハイビームランプ+ウェルカムライティング&サテンメッキドアミラー+運転席&助手席パワーシート+オールウェザーパック<スーパーUVカットガラス+撥水(はっすい)加工フロントドアガラス+フロントワイパーデアイサー+リアフォグランプ>(19万4400円)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2773km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:647.2km
使用燃料:63.3リッター
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)

スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight
スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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