パリでウーバーを呼ぶ

フランスのパリも、既存のタクシーとウーバーとの間で紆余(うよ)曲折があった。2014年1月には、ウーバーのドライバーが乗客を輸送中に、タクシードライバーたちから襲撃を受け、クルマが破壊される事件が起きた。近年パリのタクシーは、ビッグスクーターを用いた「モトタクシー」といわれるニ輪タクシーにも顧客を奪われていただけに、さらに鬱憤(うっぷん)が募っていたのだろう。

そうしたなか、同じ1月に、ルールを制定することで、タクシーとウーバーの共存の道が図られた。そのルールとは「ウーバーは客のリクエストを受信してから15分以内に客を乗せてはいけない」というものだ。

先日、国際自動車ショーの取材でパリに赴いた機会に、ボクもウーバーを体験してみることにした。通常ボクは、どこの街でも極力タクシーは使わない。太川陽介+蛭子能収の人気旅番組『ローカル路線バスの旅』には及ばないが、電車もしくはバス網を駆使して交通費を節約している。
パリ・オルリー空港から市内間もしかり。空港バスと路線バス最低2本を乗り継いでセーヌ左岸の貸しアパルトマンとの間を往復してきた。しかし今回予約した飛行機はいつもより遅い到着で、路線バスのラッシュアワーともろにぶつかってしまうことから、ウーバーを利用するチャンスと判断したのだ。

午後6時過ぎ、オルリー到着。ウーバーのアプリ使用開始だ。
ただし、ボクが普段イタリアで使用しているモバイルWiFiルーターは、フランスでは機能しない。そうかといって、スマートフォン本体の高額なローミングを使う気もない。そこで空港内の無料WiFiサービスを活用することにした。自宅でイメトレしておいた要領でアプリを操作すると、例の「15分ルール」より短い約10分で到着する旨表示された。ドライバーの顔写真も載っている。車両は「オペル・インシグニア」のようだ。料金は35ユーロ(約4800円)。空港内の観光案内所が示す一般的タクシー料金とほぼ同じといってよい。

ドライバーがボクを発見しやすいようターミナルの外で待つことにしたが、外に出た途端無料WiFiの電波が弱くなった。ヒヤヒヤものだ。やがて、オペルが間近に着いたことが画面の地図上でわかったので、WiFiが切れるのを覚悟でそちらの方向にボクは歩きだした。
「できれば、車体色も表示してくれれば探しやすいのに」というのは、このときのボクの感想である。

間もなくドライバーらしきお兄さんと出くわした。相手は「ミスター・オオヤですか?」というので、ボクはオペル・インシグニアのドライバーさんですか?」と確認した。
インシグニアは、一般タクシー乗り場の脇にある運転手付き車両の一時駐車スペースに止まっていた。隣には同じくウーバーと思われる「メルセデス・ベンツEクラス」がいる。

ドライバーさんはスーツケースをトランクに載せたあと、ボクが頼まなくても後席ドアを開けてボクを乗せてくれた。タクシーにはない振る舞いである。ちなみに彼はネクタイ&スーツ姿。これもハイヤー規格だ。
車内は一般のタクシーよりも清掃が行き届いている。スマートフォンの充電アダプターもある。アームレストにはミネラルウオーター、キャンディー、チョコなどが詰められている。聞けば、どれも「無料です」と教えてくれた。ちなみに彼の隣、助手席の足元には、次のお客さん用と思われるウオーターのボトルが束で置かれていた。

ウーバーのアプリで目的地を入力すると、ドライバー名と車のモデル名、ナンバー、現在地、そしてリアルタイムの配車予定時刻が表示された。
ウーバーのアプリで目的地を入力すると、ドライバー名と車のモデル名、ナンバー、現在地、そしてリアルタイムの配車予定時刻が表示された。 拡大
予定時刻どおり「オペル・インシグニア」がやってきた。ドライバーは嫌な顔ひとつせず率先してスーツケースをトランクに収めてくれた。
予定時刻どおり「オペル・インシグニア」がやってきた。ドライバーは嫌な顔ひとつせず率先してスーツケースをトランクに収めてくれた。 拡大
「オペル・インシグニア」
オペルにおけるトップモデルで、「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」と同じDセグメントに属する。欧州における主な用途はカンパニーカーである。
「オペル・インシグニア」
    オペルにおけるトップモデルで、「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」と同じDセグメントに属する。欧州における主な用途はカンパニーカーである。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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