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マツダ・デミオ13S(FF/6AT)

街乗りならおまかせ 2014.11.10 試乗記 清水 草一 デビュー以来、好調なセールスが伝えられる4代目「マツダ・デミオ」。このクルマならではの魅力はどこにあるのか? ガソリン車の中間グレード「13S」で探った。

話題のディーゼル、安いか、高いか?

新型デミオについて語るなら、まずその値付けから入らねばなるまい。焦点はガソリン車とディーゼル車の価格差だ。

・デミオXD(ディーゼル):178万2000円(MT、ATとも)
・デミオ13C(ガソリン):135万円(MT、ATとも)

差は43万2000円。これは一見、かなり大きい。ただ、XDだけを見ると、「アクア」や「フィットハイブリッド」とほぼ同水準で、クリーンディーゼルがハイブリッドと同格のエコカーと捉えられている国内市場ではちょうどいい。

燃料代を比較しても、リッター20円ほど安い軽油の強みを生かせば、デミオのディーゼルとアクア/フィットハイブリッドは同レベル。街中での快適性(特に静粛性)では負けるが、加速はディーゼルの方がはるかに力強い。あとは日常志向かロングドライブ志向かで選べばいいわけで、この価格に抵抗感はない。
が、ディーゼル乗用車の販売比率が約5割という本場・ヨーロッパ市場では、ユーロ5規制の段階では、「ディーゼル車の価格はガソリン車の約1割高」が相場だった。それを考えると、デミオXDの値付けはかなり高い。

ここ日本でも、43万2000円という価格差は決して小さくはない。JC08モード燃費はガソリン24.6km/リッター(6AT)、ディーゼル26.4km/リッター(同)と僅差。クリーンディーゼル対象のエコカー補助金を勘案しても、価格差を燃料代で取り返すのはほぼ不可能だ。デミオの初期受注の7割がディーゼルというのは、国内初の小排気量ディーゼルへの興味や、ディーゼルならではの力強い加速というメリットを重視してのものだろう。

2014年9月上旬に国内デビューをはたした、4代目「マツダ・デミオ」。同月下旬から、モデル別に順次発売されている。
2014年9月上旬に国内デビューをはたした、4代目「マツダ・デミオ」。同月下旬から、モデル別に順次発売されている。
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インテリアの様子。デザインはもちろん、「自然なドライビングポジションが取れるペダルの形状と配置」ほか、機能に対するこだわりも盛り込まれている。
インテリアの様子。デザインはもちろん、「自然なドライビングポジションが取れるペダルの形状と配置」ほか、機能に対するこだわりも盛り込まれている。
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ダッシュボード中央の7インチディスプレイ。ドライバーは、視線移動を最小限に抑えながら、カーナビやマルチメディアにアクセスできるとうたわれる。(写真をクリックすると、画面の表示バリエーションが見られます)
ダッシュボード中央の7インチディスプレイ。ドライバーは、視線移動を最小限に抑えながら、カーナビやマルチメディアにアクセスできるとうたわれる。(写真をクリックすると、画面の表示バリエーションが見られます)
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上記ディスプレイ内の情報につながる、左右座席間のコマンダーコントロール。手元を見ることなく操作できるよう配慮されている。
上記ディスプレイ内の情報につながる、左右座席間のコマンダーコントロール。手元を見ることなく操作できるよう配慮されている。
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“陰の注目モデル”を試す

ヨーロッパでも、今後ユーロ6(≒日本の現規制)に完全に移行すれば、ディーゼル車のコストアップは避けられない。例えば「ゴルフTDI」のユーロ6対応モデル(1.6リッター)は、1.2リッターガソリンターボモデルより現状約70万円も高い。ユーロ5車なら+30万円程度なので、ユーロ6の影響は大きい。やはりマツダのSKYACTIV-Dは、排ガス後処理がいらない分、コスト上のアドバンテージを持っていると考えていいのだろう。
それでもXDは安くない。なにしろガソリン車とは40万円以上違うのだから。

ということで今回は、日陰の存在ながら、経済性最優先ならこれ! のガソリンモデル、デミオ13Sをテストした。
思い起こせばSKYACTIV-Gは、「ダウンサイジングターボいらず」がコンセプトの先進ガソリンエンジンだ。それが、SKYACTIV-Dの登場以来すっかり影が薄くなり、新型「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」では、完全に廉価モデル扱いになってしまった。

技術者は泣いているかもしれない。が、ユーザーの立場からすると致し方なし。SKYACTIV-Gは、確かに燃費はそこそこいいが、突出した部分がない。加速はフツー+α程度でダウンサイジングターボの後塵(こうじん)を拝し、燃費ではダウンサイジングターボと同レベル。結局メリットは価格の安さというんじゃ、昔ながらの「国産車のウリは安さと信頼性」の域を出ないことになる。

先代モデルに比べ、腰や尻の面圧分布に優れるシート。これにより、理想的な運転姿勢が取れるようになったという。
先代モデルに比べ、腰や尻の面圧分布に優れるシート。これにより、理想的な運転姿勢が取れるようになったという。
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1.3リッター直4ガソリンエンジン。新型「デミオ」にはこのほか、直噴の1.5リッター直4ディーゼルターボがラインナップされる。
1.3リッター直4ガソリンエンジン。新型「デミオ」にはこのほか、直噴の1.5リッター直4ディーゼルターボがラインナップされる。
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マツダ・デミオ13S(FF/6AT)【試乗記】の画像 拡大
リアスポイラーとCピラーの間には、空力性能を向上させるフィンが取り付けられる。
リアスポイラーとCピラーの間には、空力性能を向上させるフィンが取り付けられる。
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クラスを超えたよさがある

しかしデミオ13Sは、「ヴィッツ」や「マーチ」とはかなり違う。それは間違いない。
後席足元はあまり広くない。ラゲッジ容量はフツーだが、開口部が狭く使い勝手が悪い。ドイツ車的なボディー剛性優先思想を感じる。これが第1点。
インテリアの質感は断然イイ。これはもう断然だ。なにしろ同じマツダのアテンザより高級感がある。アテンザなにやってんだ、ということだが、デミオのインテリアは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」あたりともいい勝負になる。これが第2点。

1.3 SKYACTIV-Gも悪くない。この排気量としてはトルクフルで回転フィールも滑らか。中速域での回転感にはかすかな快感も伴う。が、それでも最大トルクはディーゼルの2分の1。加速はまるで違う。なのでついディーゼルと比較してしまい、ヴィッツやマーチの親戚扱いになってしまう面はある。

それでもやっぱりデミオは別格だ。なにしろATが違う。SKYACTIV 6ATを採用しているのだ。これはデカイ。このクラスでトルコンATを採用している国産車はデミオくらい。他はほとんどが退屈なCVTだ。
いや、CVTが退屈かどうかは個人の嗜好(しこう)の問題ですが、エンジンとアクセルのダイレクト感に関しては、誰がなんと言おうと無段変速より段付きミッションの方が上。デミオでは、昔ながらの回転の上昇や下降がリニアに楽しめる。しかも6段。立派なものじゃないか。これだけでもクルマ好きには大きなアドバンテージだ。トルコンは耐久性ならツインクラッチより上だし、5段MTもあるでよ。これが第3点。

しかもデミオは、高いボディー剛性を生かして、サスペンションのふところが深い。ストロークが大きくてしなやかだ。完全にヨーロッパレベルである。ここにステキなインテリアと、高級車気分の6ATが加われば、心臓であるSKYACTIV-Gのインパクトが多少弱くても、コンパクトカーとしては「ヴィッツやマーチと一緒にするな!」くらいは言えよう。

シート表皮については、グレードごとに特定の材質とカラーが割り当てられる。「13S」(写真)は、インディゴブラックのファブリック。
シート表皮については、グレードごとに特定の材質とカラーが割り当てられる。「13S」(写真)は、インディゴブラックのファブリック。
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荷室。床面はフルフラットにならないものの、後席を倒すことで積載容量を増やせる。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
荷室。床面はフルフラットにならないものの、後席を倒すことで積載容量を増やせる。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
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走りについては、スポーツカー「マツダ・ロードスター」と同じコンセプト“人馬一体”が掲げられる。
走りについては、スポーツカー「マツダ・ロードスター」と同じコンセプト“人馬一体”が掲げられる。
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近赤外線レーザーレーダーを使って、低速走行時の衝突被害を回避または軽減する、運転支援システムも装備する。
近赤外線レーザーレーダーを使って、低速走行時の衝突被害を回避または軽減する、運転支援システムも装備する。
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LED式のヘッドランプ(オプション)。省電力化により、燃費の向上にも貢献するという。
LED式のヘッドランプ(オプション)。省電力化により、燃費の向上にも貢献するという。
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“軽さ”が光る

が、実を言うと今回試乗した個体は、高速道路での印象がよろしくなかった。少し速度を上げると、路面の凹凸を拾ってピッチングが止まらなくなり、「ガタガタッ」と安っぽい走行フィールになった。タイヤ空気圧がパンパンなのかと思ったら適正値。うーむ。
ディーゼルではこんなことはなかった。タイヤ銘柄の違いやノーズの軽さも影響しているかもしれないが、これは恐らく超初期ロットにありがちな個体差、いわゆる「ハズレ」ではないか? 裏付けなく勘で申し上げるのは申し訳ないが、取りあえず今回は、近年の経験値から、「超初期ロットのハズレ個体」と推定しておく。

実はアクアの登場時も、プレス試乗会では乗り心地もパワーユニットのフィールもダメダメで、2カ月後に自分のクルマが納車された時、あまりにも良くなっていてがくぜんとした。昔はよく「広報チューン」なんて言いましたが、最近けっこう逆チューン(?)が多くて迷います。

一方、街中に走りの舞台を移すと、がぜんデミオ13Sの存在感が増した。やっぱりこれは街中向けなんですね。
なにしろディーゼルとは鼻先の軽さが違う。クイクイと軽やかに、お気楽に走ってくれる。アイドリングでの騒音や振動だって違う。いかにSKYACTIV-Dが静かだといっても、ガソリンエンジンにはかなわない。デミオには全車アイドリングストップが付いているので、ディーゼルだって信号待ちでは無音だが、ブレーキを離した瞬間に重いものがゴゴッと回り始める感覚は、そこらのお買い物のゲタとしてはちょっと気が重いというか、もったいない。ガソリン車ならそれがない。まさに街のゲタ。

注意していると、交差点右折での立ち上がり緩加速時に、圧縮比12のトルクがさく裂(?)して背中を押され、一瞬だけダウンサイジングターボ気分を味わえたりする。ミラーサイクルのSKYACTIV-Gは、実際の圧縮比はこんなに高くならないが、それでもそれくらい圧縮がかかるタイミングはあるらしく、それを探しながら走るなんていう、変態的な楽しみもなくはないです。

(文=清水草一/写真=郡大二郎)

テスト車の15インチアルミホイールは、スポーティーなドレスアップオプションに含まれるもの。ノーマル車はスチールホイールにホイールキャップを装着する。
テスト車の15インチアルミホイールは、スポーティーなドレスアップオプションに含まれるもの。ノーマル車はスチールホイールにホイールキャップを装着する。
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速度計を中心にすえる「デミオ13S」のメーター。他グレードでは、中央のアナログ計はエンジン回転計になる。
速度計を中心にすえる「デミオ13S」のメーター。他グレードでは、中央のアナログ計はエンジン回転計になる。
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都市部の道で「デミオ13S」を駆る。「まさに街のゲタ」。
都市部の道で「デミオ13S」を駆る。「まさに街のゲタ」。
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シフトレバーのそばに置かれる「スカイアクティブ・ドライブ・セレクション」のスイッチ。走行状態にあわせて、エンジンやトランスミッションの特性を変えられる。
シフトレバーのそばに置かれる「スカイアクティブ・ドライブ・セレクション」のスイッチ。走行状態にあわせて、エンジンやトランスミッションの特性を変えられる。
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テスト車のデータ

マツダ・デミオ13S

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4060×1695×1500mm
ホイールベース:2570mm
車重:1030kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92ps(68kW)/6000rpm
最大トルク:12.3kgm(121Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ヨコハマ・ブルーアース エース)
燃費:24.6km/リッター(JC08モード)
価格:145万8000円/テスト車=164万7000円
オプション装備:LEDコンフォートパッケージ<LEDヘッドランプ+アドバンストキーレスエントリーシステム+オートライトシステム+レインセンサーワイパー+フルオートエアコン>(8万6400円)/スポーティーパッケージ<185/65R15 88Sタイヤ+5 1/2Jインチアルミホイール+本革巻きステアリングホイール&シフトノブ&パーキングブレーキレバー>(7万200円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3555km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:276.6km
使用燃料:17.5リッター
参考燃費:15.8km/リッター(満タン法)

マツダ・デミオ13S
マツダ・デミオ13S
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清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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