ジープがヨーロッパで根付いている理由

ところでイタリアのカーセールス界でこの秋話題の一台といえば、ジープの新型車「レネゲード」だろう。レネゲードは2014年3月のジュネーブショーでデビューした。全長は4232mm。ジープ史上初のミニSUVである。先ごろ9月のパリモーターショーで公開された「フィアット500X」とプラットフォームを共有する。
このレネゲード、何よりもの話題は、これまたジープ史上初めてのイタリア生産であることだ。「フィアット・プント」を生産していることで知られる南部バジリカータ州のメルフィ工場で、すでに2014年夏に生産が開始されている。

イタリア仕様のエンジンはディーゼルの1.6リッターおよび2リッター、ガソリンは1.4リッターが用意される。駆動方式と変速機の組み合わせは、1.6リッターが2WD+6段MT、2リッターは4WD+9段AT/6段MT、1.4リッターは2WD+6段MTである。価格は付加価値税込みで、2万3500ユーロ(約335万円)からだ。

「イタリア製ジープ」と書いてしまうと少々衝撃的だが、ボク自身は、かなり売れるのではないかと今から読んでいる。その理由は、以下のとおりだ。

西ヨーロッパでジープブランドは、ダイムラー・クライスラー時代も一定の人気を維持してきた。特にオーストリアのマグナ・シュタイアー工場製の欧州版「グランドチェロキー」(2代目)は、2000年代初頭の自動車買い替えトレンドに伴う上昇志向の波に乗り、各国で成功を収めた。こちらで需要が高いディーゼル仕様を、メルセデス・ベンツ製エンジンで補ったことも功を奏した。

さらに考察すれば、歴史的経緯もある。フランスしかり、イタリアしかり、ジープは第二次世界大戦の連合国による祖国解放の象徴として、人々の記憶に刻まれている。当時を体験していない世代でも、解放記念日には毎年ニュースで映像が繰り返されるから、ジープの姿は忘れようにも忘れられない。ちなみに、イタリアでは今も小学校でパルチザン闘争や解放の歴史を学ぶ。そうした背景により、ジープは欧州に根づいたブランドなのである。

「ジープ・レネゲード」
「ジープ・レネゲード」 拡大
「ジープ・レネゲード トレイルホーク」のダッシュボード。
「ジープ・レネゲード トレイルホーク」のダッシュボード。 拡大
「ジープ・レネゲード」
「ジープ・レネゲード」 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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