「ブレイザー」の中で格闘

前作で見せた凄惨(せいさん)な暴力シーンは、今回もテンコ盛りだ。エヴァンス監督は、必要以上に痛そうに描く。足の関節が逆方向を向くのも、頭がコンクリートブロックの角にあたってめり込むのも、まだ序の口だ。顔面は痛めつけられやすく、焼けた鉄板に押し付けられたり、荒れた路面でこすってすりおろされたりする。

男女1人ずつ、奇天烈(きてれつ)な殺し屋キャラが登場する。ベースボール・バットマンと、ハンマー・ガールだ。名前のとおりで、男は金属バットでボールを打ち、顔に命中させて殺す達人技を持っている。女のほうは、両手にカナヅチを持って振り回す凶暴な性格だ。2人が合体して襲ってくるから、ラマも防戦に必死である。

骨が折れて肉が裂けるおぞましい描写が連続するが、決してグロテスクではない。映像が美しくて、奇妙な静寂を感じる。スローモーションやクローズアップを使うのは常道だが、センスのいい使い方なのでこれみよがしにならないのだ。エヴァンス監督は日本映画のファンだということで、明らかに北野映画の影響を受けていると思われるシーンも多い。

前作はほとんどビルの中だけだったが、今回は街全体が舞台となるので、アクションも取り入れられている。ラマは殺し屋のキラー・マスターとの戦いに敗れて意識を失い、「オペル・ブレイザー」で連れ去られてしまう。後席の真ん中に押し込められていたが、突然覚醒して暴れ始める。狭い車内の格闘をどう見せるのかと思ったら、なんと真上からカメラを向けた。モーターショーにあるカットモデルのように、天井のないクルマを作って撮影したのだ。

後方からはセダン3台がサイド・バイ・サイドで追いかけてくるというむちゃなカーチェイスシーンもあるが、すべてジャカルタの中心部で撮影を行ったという。経済発展のさなかにあるインドネシアでの撮影は困難に違いなく、許可が下りたのは前作が世界的に評価されたおかげかもしれない。

アクションシーンは確かにパワーアップしているが、前作はダンジョン構造で戦うところが魅力だった。フツーのアクション映画になってしまったのか、などと思ってはいけない。最後にちゃんと、ダンジョンでの戦いが用意されている。ここまでは、ダンジョンに行き着くまでの序章だったのだ。

正直言って、心臓の弱い方にはオススメできない映画だ。痛いしびっくりさせられるし、ひどい殺し方が山ほど出てくる。でも、これは断じて暴力礼賛映画ではない。仕方なく敵に立ち向かわなければならない時があることは、昔から日本の映画が描いてきた。健さんだって、暴虐を耐え忍んだ末に立ち上がり、最後に血の雨を降らしたではないか。

(文=鈴木真人)

(C)2013 PT Merantau Films
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「オペル・ブレイザー」
GMがシボレーブランドで販売していたSUVで、1969年から2005年まで生産されていた。インドネシアでは、オペルブランドとなる。
「オペル・ブレイザー」
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第87回:今度は極道が敵! インドネシア発新感覚アクション『ザ・レイド GOKUDO』の画像 拡大
 
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『ザ・レイド GOKUDO』
2014年11月22日(土)全国ロードショー
配給:KADOKAWA
映画の区分:R15+
 
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	2014年11月22日(土)全国ロードショー
	配給:KADOKAWA
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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