聞き正し忘れた、あの一言

同様に、カーグラフィック誌に関しても、創刊者である自身の功績を人前で吹聴することはなかった。ただしボクにはたびたび、1970年代初頭を回想しながら、こんな話をしてくれたものだ。

「当時はな、『メンズクラブ』と『カーグラフィック』を抱えて歩くのが、ナウかったんだ」

それを聞くたび、ボクとしては両誌の厚みからして、昔の若者はかなり腕力があったんだな、などというたわいもない想像をしたものだ。
それはさておき「ナウい」は、その時点において、もう十分に死語だった。当時のムードを出すため意図的に用いていたのか、それとも、廃れたことも知らず使い続けていたのか。ついぞ聞き正す機会がなかった。
ちなみに小林さんは「オバタリアン」という、漫画のタイトルを起源とする言葉も長年会話に使用していたことからも、「ナウい」の使用期限切れに気づいてなかった疑いがある。

ボクとしては、いつかあの世に行ったら、川上 完氏や徳大寺有恒氏がいない場所で、こっそり聞こうと思っている。小林さんに恥をかかせないように。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=大矢アキオ、ラムダインク>
 

『SUPER CG』編集部時代の筆者。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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