スズキ・キャリイKCエアコン・パワステ(FR/5AT)
「軽トラ」と侮るなかれ 2014.12.05 試乗記 スズキ独自のシングルクラッチ式2ペダルMTを搭載した「スズキ・キャリイ」が登場。トランスミッションの出来栄えと、最新の軽トラックの実力を試した。見事な出来のトランスミッション
広報車が用意された主な理由はトランスミッションがこれだからのはずなので最初に書くと、スズキが「AGS(Automatic Gear Shiftの頭文字)」と呼称するAMT(Automated Manual Transmission=自動化されたマニュアルトランスミッション、の頭文字)はデキがよい。乗用車にもこれつきのバージョンを用意したらいいのに。クラッチはデュアルではなくシングルなので、変速時のトルク切れはもちろんというかハッキリあるけれど、このタイプの変速機が嫌われてきた主な要因であるところの、発進直後の変速時のツンノメリ感はうまいことナンとかしてある。発進するたび腹筋にウッと力を入れてしのいでいるうちにストレスがだんだん、またはどんどん……ということにならないように。
走行中、クラッチがきれた瞬間に乗員をツンノメらせることは、3ペダルのMTでもできなくはない。というかフツーにやれる。例えば加速の途中、アクセルペダルが踏み込まれる操作によってスロットル弁の開度がまだ上がっている最中にバツンとクラッチをきってしまえばよい……はず。
意識して運転している人は少ないかもしれないけれど、MT車をスムーズに動かす際キモになっているのは実は右足の操作である。変速のための操作の前半に関していうと、左足がクラッチペダルを踏み込んでいってクラッチがきれる瞬間、というかその直前に加速方向のGがスッと消える方向にしてやるとうまくいく。うまくいっているということは、そういう操作ができている。変速するたびイチイチ考えてはいなくても。
で、キャリイのAGS。クラッチがきれた際のツンノメリ感がないかまたは軽微であるということは、そのへんの制御が上手。日本メーカーの製品ならではの、細かい作り込みの成果。そう判断してよいと思われる。アクセルペダルの足応えがスカスカにカルすぎ……ではないのも利いている。