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フォルクスワーゲン・クロスポロ(FF/7AT)

右脳で選ぶポロ 2015.01.21 試乗記 山田 弘樹 「フォルクスワーゲン・ポロ」シリーズの名脇役「クロスポロ」。この“カッコカワいい”スタイリングは理詰めではなく感性でこそ選ぶべき? ベースモデルの改良を受けて大幅なアップデートが施された新型の実力を、都内からのワンデイツーリングでチェックした。

引き続きコンパクト

「クロスポロ」は、ご存じ「ポロ」の派生車種。ただしベースとなるポロがBセグメントに存在するライバルたちよりもやや小ぶりであることから(世代が古いため、小ぶりになってしまったという方が適切か)、クロスオーバー化してもそれほど存在感が大きくなっていない。そこが現代のはやりからすればひとつの弱点でもあり、捉え方によっては美点ともなる。

ちなみにそのスリーサイズは、ベースとなるポロが全長3995×全幅1685×全高1460mmであるのに対して、クロスポロが4000×1710×1490mm(順に5×25×30mmの拡大)である。例えば、「ルノー・キャプチャー」が4125×1780×1565mmで、「フォード・エコスポーツ」が4195×1765×1655mmだから、クロスポロはクロスオーバー化してもまだかなり小さい。このクラスは生活に密着しているから、「安くて、広くて、背が高い」ことに加え、「押し出しが強い」ということは一応ありがたいことになっている。そんな目で見ると、「背が高いだけのポロ」はどうなのか?

エンジンはベースとなるポロがマイナーチェンジを受けて、DOHCヘッドとアルミ製のブロックを持つ1.2リッター直噴ターボとなったため、クロスポロにもこのDOHCユニットが搭載されている。組み合わされるトランスミッションは7段DSGだ。90psしかない小排気量エンジンをターボと多段化トランスミッションで走らせる手法はフォルクスワーゲンのお家芸。街中でのストップ・アンド・ゴーや、100km/h以下での加速に対しては全く不満がないどころか、DSGの反応などは年々洗練されており、このクロスポロにおいても、ツマラナイほどフツーに走ってくれる。

歴代「クロスポロ」のテーマカラーであるオレンジ。新型では、同じオレンジでも落ち着いたトーンの新色「ハニーオレンジメタリック」に変更されている。
歴代「クロスポロ」のテーマカラーであるオレンジ。新型では、同じオレンジでも落ち着いたトーンの新色「ハニーオレンジメタリック」に変更されている。 拡大
新型では標準型「ポロ」と同様に、ステアリングホイールとメータークラスターが「ゴルフ」風に変更された。
新型では標準型「ポロ」と同様に、ステアリングホイールとメータークラスターが「ゴルフ」風に変更された。 拡大
1.2リッター直4ターボユニットは従来より15psと1.5kgm控えめな90psおよび16.3kgmに。
1.2リッター直4ターボユニットは従来より15psと1.5kgm控えめな90psおよび16.3kgmに。 拡大
最低地上高は145mm。標準型と比べて15mm高い。
最低地上高は145mm。標準型と比べて15mm高い。 拡大
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そつなく走る

高速道路での巡航は、必要にして十分といったところ。巡航スピードに乗ることにはなんら問題ないが、いざ追い越しを掛けようとする際にはアクセルペダルを床まで踏み込む必要があるし、ルノーの1.2ターボなどと比べると、その加速感には正直、物足りなさを感じる。そして「高速を走るなら、やっぱり『ゴルフ』かねぇ」と独りごちたくなる。

ただ全開加速したときのエンジンの回転上昇感やターボサウンドは、意外や気持ち良い。結局、“踏み倒す”のが楽しくなってしまうから、省燃費性能もなんだかなぁ……という感じだ。ここらへんは、小排気量ガソリンターボを否定する某国産メーカーのエンジニアが、よく指摘してくる部分である。実用燃費を上げるには、適度な排気量は必要というわけだ。

車高が30mm上がったことによる走行安定性の乱れは、丹念なエンジニアリング努力で消し去られている。具体的には、高速道路のレーンチェンジでも重心の移動が抑えられてフラフラしないし、コーナリングもピターッと決まる。電動パワステも程よい重さで、これはあざとい手法ではあるが、柔らかい足まわりに対して急ハンドルをさせない抑止力となっている。また表面上のシッカリ感を演出するのにも役立っている。

「クロスポロ」としては初めてアイドリングストップ機構とブレーキエネルギー回生システムで構成される「ブルーモーションテクノロジー」が採用された。JC08モード燃費は約16%向上の21.9km/リッターへ。
「クロスポロ」としては初めてアイドリングストップ機構とブレーキエネルギー回生システムで構成される「ブルーモーションテクノロジー」が採用された。JC08モード燃費は約16%向上の21.9km/リッターへ。 拡大
インテリアカラー(シートの一部とドアトリム)はボディーカラーに合わせてコーディネートされる。オレンジではベージュに。
インテリアカラー(シートの一部とドアトリム)はボディーカラーに合わせてコーディネートされる。オレンジではベージュに。 拡大
「クロスポロ」のリアシート。乗車定員は5人。
「クロスポロ」のリアシート。乗車定員は5人。 拡大
シートの背もたれに「CROSS POLO」の文字が入る。
シートの背もたれに「CROSS POLO」の文字が入る。 拡大

クロスオーバーはガマンよ!

マイナーチェンジ前モデルではハッキリと硬かったサスペンションは、細かな伸縮周波数の領域でしなやかにストロークするようになった。だから、ある種ゴーカート的な鋭いハンドリングは影を潜めたが、クルマとしては正常進化を果たしたといえる。

ただしその無理をタイヤ側(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト2)の剛性に背負わせてしまっているから、結局のところ、乗り心地を総合的に見れば、やや硬めにとどまる。またロードノイズもかなり大きい。

そして車高が上がったことによるサスペンションストロークの恩恵も、特にない。これは大柄になってしまったBセグカーに対して有効な手段であり、そもそも小さなポロには効果が少ないのだろう。

そもそもこんな車高にしていなければ、ここまでヲタク的な(無駄とも思える)努力をして、剛性が高いタイヤをつけなくてもよかったはず。そうなると、「おしゃれはガマンよ!」(by ピーコ)ではないが、「クロスオーバーするのも大変だなぁ……」と思う。同じポロでも「GTI」や「ブルーGT」の方が、自然な足まわりであり、乗り味であると思う。

ボディーカラーはオレンジのほか、「チタンベージュメタリック」(新色)や「フラッシュレッド」など全5色が設定される。
ボディーカラーはオレンジのほか、「チタンベージュメタリック」(新色)や「フラッシュレッド」など全5色が設定される。 拡大
LEDポジションランプ付きバイキセノンヘッドランプがオプション設定される。
LEDポジションランプ付きバイキセノンヘッドランプがオプション設定される。 拡大
タイヤサイズは215/40R17。専用デザインの10スポークアルミホイールが装着される。
タイヤサイズは215/40R17。専用デザインの10スポークアルミホイールが装着される。 拡大

ポロに何を求めるか

とはいえ、ベースモデルであるポロよりもサスペンション剛性がシャキッとしている分だけ、ショートホイールベースの弱点であるアクセルのオン/オフによるピッチングや、路面のうねりに対する揺さぶられ感は減った。

つまり端的に言えば、普通のポロは街中専用で、GTIとブルーGTは中長距離用、そしてクロスポロは“おしゃれ番長”ということになる。おしゃれ番長だけれど、そのサスペンション剛性によって、ロングも行けますよ、という感じである。

そんなクロスポロを、誤解を恐れず一言で表すならば、“カッコだけのクロスオーバー”だ。

最初は筆者もそれに戸惑い、何らかの意味を見つけだそうとアレコレ考えたのだが、もうやめた。そして今では、非常にスッキリしている。カッコだけのクロスオーバーだが、カッコだけで何が悪いのだ? というのが結論である。

この“カッコカワいい”ルックスを見て、「欲しい!」と思うユーザーはいると思うし、それを実現するためにフォルクスワーゲンはドイツ人気質全開で走行安定性を高め、これを洗練させてきた。実際多くの人々が本格的なクロカン機能などいらないし、燃費が悪くなる4WDも必要としていない。この格好で、ドイツ車らしく走ることができればいいのだ。

きっとこの“ポロ・クロスオーバー”も、世代が変わればライバルたちのように大きくなってしまうだろう。ゴルフみたいにマルチなグランドツーリング性能はいらない。その代わり、自分の生活に溶け込むようなサイズ感が欲しいというのなら、今のうちにポロを手に入れておいた方がいい。その中で、適度に見晴らしのよい車高(それも乗り降りが苦にならない)と、ちょっと人とは違う見た目が欲しいなら、このクロスポロを選べばいいのである。

(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)

フロントおよびリアバンパーは「クロスポロ」の専用品。ホイールハウスに取り付けられたエクステンショントリムなどが「ポロ」を“ラギッド”に演出する。
フロントおよびリアバンパーは「クロスポロ」の専用品。ホイールハウスに取り付けられたエクステンショントリムなどが「ポロ」を“ラギッド”に演出する。 拡大
シルバーのドアミラーカバーが「クロスポロ」の標準。
シルバーのドアミラーカバーが「クロスポロ」の標準。 拡大
「クロスポロ」のラゲッジルーム。後席は6:4の分割可倒式。
「クロスポロ」のラゲッジルーム。後席は6:4の分割可倒式。 拡大
レーダーで前方車両との車間を監視し、自動的に加減速を行う「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」がオプションとして設定された。
レーダーで前方車両との車間を監視し、自動的に加減速を行う「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」がオプションとして設定された。 拡大

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・クロスポロ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4000×1710×1490mm
ホイールベース:2470mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:90ps(66kW)/4400-5400rpm
最大トルク:16.3kgm(160Nm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)215/40R17 87V/(後)215/40R17 87V(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト2)
価格:275万円/テスト車=314万3660円
オプション装備:バイキセノンヘッドライトパッケージ(オートハイトコントロール機能+ヘッドライトウオッシャー付き)(12万9600円)/アダプティブクルーズコントロール(ACC)パッケージ(クロスポロ専用レザー3本スポークマルチファンクションステアリングホイール:オーディオコントロール+シフトパドル付き)(6万4800円)/フォルクスワーゲン純正ナビゲーションシステム“714SDCW”(DSRC、ETC機能付き)(19万9260円)

テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1649km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:244.4km
使用燃料:18.0リッター
参考燃費:13.6km/リッター(満タン法)/14.3km/リッター(車載燃費計計測値)

 

フォルクスワーゲン・クロスポロ
フォルクスワーゲン・クロスポロ 拡大
山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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