フラン高で泣く業界
一方でフラン高は、スイスの観光・サービス業界には手痛い仕打ちだった。スイスでホテルを経営する知人によると、近年スキー客は隣国のオーストリアや、もしくはポーランドに行ってしまうらしい。イタリアから来てユーロ換算したお客さんには、「『なぜ数年前と比べて、こんなに料金を高くしたんだ!』って詰め寄られたよ」と言う。そして「それは為替のためで、俺のせいじゃない! と泣きたかったね」とこぼす。
そうしたなか彼は、客室を観光向きからビジネス向きにすべく改装計画を練っていたものの、今回のフランショックでお客はさらに減りそうである。
ガソリンスタンドもしかりだ。かつては、イタリアより安い燃料を求めてスイス側の給油所は繁盛していた。しかし、イタリアのロンバルディア州は地元スタンドを保護すべく、国境付近の住民を対象に燃料の割引制度を導入した。最初は割引券を配っていたが、近年は健康保険と統一のIDカードを提示、またはセルフ機に差し込めばディスカウントが適用されるようになっている。
加えてディーゼル車の場合、スイスは環境保護の観点から軽油をガソリンより高価に設定しているため、国境をまたいで行くメリットがない。ボクも20年ほど前は、国境近くまで行ったときはスイス側に行って満タンにしたものだが、ディーゼル車にしてからそうした越境給油をやめてしまった。
そこにきて、今回の金融ショックである。最新ニュースによると、イタリア国境近くのスイス側土産物店やガソリンスタンドでは、売り上げが激減しているどころか、周辺は閑古鳥が鳴いているという。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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