幻のウイスキー醸造所

話は変わって少し前、ある読者の方から一通の便りが舞い込んだ。仮名は『宇宙戦艦ヤマト』に登場する軍医の名を借りて、佐渡酒造氏としておこう。
佐渡氏は、ボクが拙著のなかで紹介したトスカーナの露天温泉を実際に訪ねたおり、一枚の看板を発見した。そこには「Cantiere WHISKY」と記されていた。

スコッチ文化研究所認定のウイスキーエキスパートで、日本各地にたるも所有しておられるという佐渡氏は、Cantina(醸造所)というイタリア語もご存じだったため、「なんとなくウイスキーの蒸留所兼貯蔵庫が近くにあるのかと想像した」そうだ。

このWHISKY看板に限らず、昨今イタリアをドライブしていると、不思議な看板が立っているのに気づく。いずれも「OSCAR」「UNIFORM」といった、一帯の地名と関係ない名前が記されている。「QUEBEC」などというのもある。どう間違えたって、ここからカナダに行けるはずはない。
「BRAVO」「DELTA」「ROMEO」「GOLF」といった、クルマ系かよ? と思わせるサインもたくさん出てくる。 そうかと思えば「HOTEL」といった表示も出現するが、周辺に宿泊施設はない。
事実、佐渡氏も日本に帰国後ネット検索したものの、一帯に蒸留所らしきものを発見できず意気消沈した、という。

中部シエナから、ティレニア海岸の町グロッセートに向かう国道223号線(1974年全線開通)も4車線化工事中。そばには「OSCAR」の看板が。
中部シエナから、ティレニア海岸の町グロッセートに向かう国道223号線(1974年全線開通)も4車線化工事中。そばには「OSCAR」の看板が。 拡大
中部ウンブリアから東海岸に向かって延びる国道77号線も高規格化の工事中。ここの現場入り口は「UNIFORM」と名付けられている。バス停表示板の汚れが、工事用車両の往来を物語る。
中部ウンブリアから東海岸に向かって延びる国道77号線も高規格化の工事中。ここの現場入り口は「UNIFORM」と名付けられている。バス停表示板の汚れが、工事用車両の往来を物語る。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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