熱き三菱ファンだった

クラブハウスは、ロビーやパウダールームがリゾートホテルと間違うほど清潔だ。クルマ関連施設特有の殺伐としたムードはみじんもない。スイスクオリティーである。地元のクルマ好きのたまり場にもなっているらしく、そこにいたおじさんのひとりから「俺の持ってるレクサス、なかなかいいよ」と話しかけられた。

ショーリ氏によると、彼のスクールにはもうひとつ役割があるという。
他のスイスの山岳部同様、ルツェルン一帯の路線バスも「ポストブス(ポストバス)」である。1849年、当時の郵政公社が運行を開始した貨客専用馬車に起源をさかのぼり、今もスイス郵便会社が保有する企業によって運営されている公共交通機関だ。
ショーリ氏のスクールは、ポストブスを運転する地元ドライバーのために、雨や雪などの低ミュー路面の講習会を、年間を通じて開いているのだ。アミューズメントだけでなく、雪国のドライビングスクールとして、社会貢献もしているのである。

帰る際ふと見れば、先ほどの200SXのノーズにスリーダイヤモンドが輝いているではないか。日本では日産と三菱が合弁で軽自動車を造っているが、こ、こんなクルマがあったのか? 慌ててイヴ君に聞けば「個人的には三菱が好きだからね」と、ワハハと笑いながら教えてくれた。

おいおい、脅かすなよ。日頃マイナー合弁車のトリビア的知識をひけらかしていたボクとしては、未知のモデルがあったかと思い、一気に血の気が引いたじゃないか。考えてみれば、彼にとっては父親を表彰台に導いた幸運のブランドでもある。

まあ雪が解けたら、三菱グループと関係ないと知りつつも、同じマークの付いた三菱鉛筆のuniえんぴつ1ダースでも手土産に、お礼がてら親子を再訪しようと思っている。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA/EVENT SEELISBERG)

クラブハウスは、クルマ関連施設と思えないほどモダンかつ快適である。
クラブハウスは、クルマ関連施設と思えないほどモダンかつ快適である。 拡大
雪が解けると、このようなサーキットが現れる。路線バス「ポストブス」のドライバー向けレッスン。(EVENT  SEELISBERG提供)
雪が解けると、このようなサーキットが現れる。路線バス「ポストブス」のドライバー向けレッスン。(EVENT  SEELISBERG提供) 拡大
訪問当日に撮影したポストブス。雪国における路線バスドライバーの苦労がしのばれる。
訪問当日に撮影したポストブス。雪国における路線バスドライバーの苦労がしのばれる。 拡大
それでは春にまた会いましょうということで、もうワンカット。(公式サイト:www.eventseelisberg.ch) 
それでは春にまた会いましょうということで、もうワンカット。(公式サイト:www.eventseelisberg.ch)  拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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