マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ(FF/6MT)/CX-3 XDツーリング Lパッケージ(FF/6AT)/CX-3 XDツーリング Lパッケージ(4WD/6MT)
ベストCX-3を探せ 2015.03.18 試乗記 スカイアクティブ技術とデザインテーマ「魂動(こどう)」を採用したマツダの新世代商品、その第5弾に当たる「CX-3」がいよいよ公道を行く。MTとAT、FFと4WD、ベストCX-3はいったいどれだ?1.5リッターディーゼルのみ
「CX-5の下」でもない、「デミオのSUV」でもない、独自の存在感を追求した。プレス試乗会のプレゼンテーションでそう語ったのはCX-3のチーフデザイナーだ。機械的な中身は、プラットフォーム(車台)をはじめとしてデミオのSUVに近いが、サイドパネルの複雑なふくらみや折り方や、ひときわタイヤを大きく見せる演出など、一連の最新マツダ車のなかでも、たしかにCX-3は最もデザインコンシャスである。
海外向けにはガソリンエンジンも用意されるが、国内はディーゼルのみというのがCX-3の一大特徴だ。エンジンはデミオ用1.5リッター4気筒ターボに小改良を加えたものである。
駆動方式は二駆と四駆。登場から3年以上たつCX-5では二駆が販売の6割近くを占めているという。より低い価格帯のCX-3ではさらにFF比率が高まるだろうとマツダは見込んでいる。CX-5はATのみだが、デミオ同様、CX-3ではMTも選べる。
グレードは「XD」「XDツーリング」「XDツーリング Lパッケージ」の3つ。XDだけが16インチホイールで、それ以上は18インチを履く。XDツーリングと同Lパッケージとの機能面での主な差は安全装備で、Lパッケージには車線逸脱警報システムやアダプティブ・クルーズ・コントロールなどが標準装備される。
目線が上がるとクラスも上がる
試乗会の最初の1時間枠でまず乗ったのは、二駆のMTである。
試乗車のXDツーリング Lパッケージ(280万8000円)だと、車重は1240kg。デミオの同グレードからは160kg増えている。そのため、CX-3のエンジンにはトルクチューンが施され、27.5kgmを得ている。デミオはATが25.5kgm、MTが22.4kgm。伸びシロの大きいCX-3のMTは、ひとクラス上の「アクセラ」用6段MTにバージョンアップされた。
インテリアの印象も含めて、「アイポイントの高いデミオ・ディーゼル」という、乗る前の予想は間違っていなかったが、アイポイントがちょっと上がっただけで、デミオよりひとクラス上のゆったり感を与えるのがSUVのいいところだ。足まわりもストローク感が増した。この日、16インチモデルは試せなかったが、18インチでも乗り心地はワルくない。
100km/h時のエンジン回転数は6速トップで1750rpm、シフトダウンしていくと、3速4000rpmまで落としたところでやっとエンジンのウナりが届く。巡航中はそれくらい静かである。ボディーという器が少し大きくなったせいか、5000rpm以上のトップエンドまで回したときの音や振動もデミオより低い。
デミオのディーゼルより爽やかなクルマだったという感想を試乗後にパワートレインのエンジニアに伝えたら、もともとCX-3はディーゼル専用モデルとして開発を始めたと教えてくれた。海外ではガソリンの需要もあるため、それに応えるようにしたが、そんな経緯だから、デミオよりディーゼルとの相性がいいのは当然というわけだ。
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“ナチュラルサウンドスムーザー”の効果は?
CX-3には“ナチュラルサウンドスムーザー”というオプション装備がある。オーディオの新機軸か!? と思うが、そうではない。ピストンとコンロッドをつなぐピストンピンに圧入される重さ40gの小さなダイナミックダンパーである。これを4気筒すべてに取り付けることにより、発進時の低速加速域で発生するディーゼルノックのガラガラ音を抑えることができるという。減速エネルギー回生システムi-ELOOPと合わせて6万4800円のオプションである。
MTの次に乗ったFFのATと四駆のAT(いずれもXD Lパッケージ)にはそれが付いていた。当然、注意深く観察してみたが、残念ながら、あるなしの差はわからなかった。たしかにATモデルのほうがいっそうスムーズで静かだったが、それはトルクコンバーターの緩衝効果かもしれず、判然としない。ナチュラルサウンドスムーザーの説明では、マツダは「ガラガラ音」と悲観的に言っているが、たしかにデミオ・ディーゼルのアイドリングや発進加速時に車内外で聴き取れる音も、せいぜい“コロコロ”くらいのかわいい音である。本当に濁点付きでガラガラいっていたら、年次改良でひっそりと標準装備しているはずである。
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FFのATモデルに好感
この日乗った3台では、二駆のATが最も好印象だった。車重が70kg重い4WDは、走りだした途端にわかるずっしりとした乗り心地が特徴だが、CX-3にはFFの軽快感のほうが合っていると思った。
CX-5のFFの場合、2.2リッターディーゼルに低速トルクがありすぎて、発進時に意図せず前輪が一瞬、空転することがあり、走行品質感をスポイルするが、CX-3のFFにそんなネガはなかった。
MTモデルは、まずは“MT好き”向きである。この1.5リッターディーゼル、最大トルクは上がっていても、2000rpm以下だと意外に力がない。クラッチミートで油断すると、エンストしそうになる。エンストしても、3秒以内にクラッチを踏めば再始動する親切な機構が付いているが、そこまでいかなくても、いつも早め早めに適切なギアに入れておかないと、立ち上がりでモタつきがちだ。右足1本であとはATがよしなにしてくれるほうが面倒がないし、素早い。
この時期にデビューしたCX-3でお生憎(あいにく)様なのは、直近の燃料事情である。予期せぬ原油安で、ガソリンより常に安い軽油で走るディーゼル車のメリットがかすみがちにみえる。でも、なにしろ予期せぬことなのだから、また必ず予期せぬ原油高がやってくるのは間違いない。オールディーゼルのコンパクトSUVというスペックは、余人をもって代え難いCX-3の売りである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=小林俊樹)
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テスト車のデータ
マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ(FF/6MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:25.0km/リッター(JC08モード)
価格:280万8000円/テスト車=295万9200円
オプション装備:特別塗装色(ソウルレッドプレミアムメタリック)(5万4000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/Boseサウンドシステム+7スピーカー(6万4800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1588km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ(FF/6AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1270kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:23.2km/リッター(JC08モード)
価格:280万8000円/テスト車=297万円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/Boseサウンドシステム+7スピーカー(6万4800円)/イノベーションパッケージ(6万4800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1334km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ(4WD/6AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1340kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:21.2km/リッター(JC08モード)
価格:302万4000円/テスト車=318万6000円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/Boseサウンドシステム+7スピーカー(6万4800円)/イノベーションパッケージ(6万4800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1450km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。