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ボルボV40クロスカントリー T5 AWD(4WD/8AT)

納得の硬派 2015.04.27 試乗記 サトータケシ ボルボのクロスオーバーモデル「V40クロスカントリー T5 AWD」に新たなパワートレインが投入された。その走りは、どう変わったのか? ワインディングロードで試した。

イメージチェンジの成功例

ボルボV40の全高を30mm高くして、フロントグリルも少しタフにして、全体に頼りがいのあるアニキ的な雰囲気に仕立てたのがボルボV40クロスカントリーだ。このアニキに、新しいエンジンとトランスミッションが搭載されたというのが今回のトピックである。
箱根方面で行われた試乗会で、「エコとパワーを両立した」という触れ込みの新パワートレインを試した。

ボルボV40は、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」やメルセデス・ベンツの「Aクラス」などと同じクラスに属する。この手の実用ハッチバック車のなかでは一番きれいな形をしていると思う。インテリジェンスを感じさせながら華やかさも備えるあたり、同じスウェーデン出身のイングリッド・バーグマンを思わせると書いたらホメすぎか。
この“四輪のバーグマン”の魅力を損なうことなく、アニキへのイメチェンを成功させるあたり、デザイナーはいい仕事をしている。

ちなみに、全高は30mm高くなってはいるものの、ドアやボンネット、ルーフなどのボディー外板はボルボV40と変わらない。このあたりは「メルセデス・ベンツGLAクラス」とは異なる。GLAの場合は、プラットフォームこそベースとなったAクラスと共通であるけれど、ボディー外板の多くが新しい。

ボルボ・カー・ジャパン広報によれば、「仮にボディー外板まで新しくしたならば、『ボルボXC40』というモデル名になるはずです」とのこと。なるほど、車高を上げて背を高くしたモデルを「クロスカントリー」、外板を替えたSUVを「XC」と呼ぶのがボルボのルールのようだ。

「ボルボV40クロスカントリー T5 AWD」が日本で発売されたのは、2013年5月のこと。それから2年がたち、パワートレインは新世代のものへと刷新された。
「ボルボV40クロスカントリー T5 AWD」が日本で発売されたのは、2013年5月のこと。それから2年がたち、パワートレインは新世代のものへと刷新された。 拡大

ノーマルの「V40」比で、全高は30mm、最低地上高は10mmアップ。全長と全幅は変わらない。


	ノーマルの「V40」比で、全高は30mm、最低地上高は10mmアップ。全長と全幅は変わらない。
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“グロッシーブラック仕上げ”のドアミラーは、「V40クロスカントリー」専用のドレスアップアイテム。
“グロッシーブラック仕上げ”のドアミラーは、「V40クロスカントリー」専用のドレスアップアイテム。 拡大
「Larenta」と名付けられた、ダークグレーの専用アルミホイール。タイヤは、ブリヂストンの「トランザT001」が組み合わされる。
「Larenta」と名付けられた、ダークグレーの専用アルミホイール。タイヤは、ブリヂストンの「トランザT001」が組み合わされる。 拡大
ボルボ V40クロスカントリー の中古車

確かに“おいしい”新エンジン

話を本題である新パワートレインに戻す。これまでのボルボV40クロスカントリーT5 AWDに搭載されていたのは、2リッターの直列5気筒ターボエンジンと6段ATの組み合わせだった。それが、排気量は同じく2リッターながら、直列4気筒の直噴ターボエンジンとなり、あわせてATは8段になった。

従来型の最高出力と最大トルクは、213psと30.6kgm。それが新型では245psと35.7kgmへと大幅に向上している。しかもJC08モードの燃費は12.4km/リッターから14.8km/リッターへと、2割近くも向上した。
ちなみにボルボが「Drive-E」と呼ぶ、新しいコンセプトのパワートレインがAWDと組み合わされたのは、このモデルが初めてとなる。

と、スペックだけを見ると、「パフォーマンスがアップしたうえに燃費までよくなるなんて、そんなにおいしい話があるのか?」と疑いたくなるけれど、いざ走らせてみると、おいしいパワートレインだった。燃費だの馬力だのといった能書きの前に、走らせて楽しい気分になるのだ。

まず、低回転域からトルクがあって気持ちがいい。アクセルペダルに軽く足を乗せて、軽く力を込めるだけで豊かなトルクが湧いて出て、スムーズに車体を押し出す。
さらにアクセルペダルを踏み込むと、硬質なフィールを感じさせながら回転を上げ、力感が漲(みなぎ)る加速をみせる。

高効率がうたわれる新型の2リッター直4直噴ターボエンジン。最高出力、燃費ともに、従来の2リッター直5ターボ(間接噴射)より優れた数値を記録する。
高効率がうたわれる新型の2リッター直4直噴ターボエンジン。最高出力、燃費ともに、従来の2リッター直5ターボ(間接噴射)より優れた数値を記録する。 拡大
インテリアの造形は、「V40」と変わらない。センターのモダンウッドパネルは、特別装備の一つ。
インテリアの造形は、「V40」と変わらない。センターのモダンウッドパネルは、特別装備の一つ。 拡大
ウイング形の計器盤は、表示部のほとんどが液晶画面。アナログ計の内側には、運転視線システムの作動状況も示される。
ウイング形の計器盤は、表示部のほとんどが液晶画面。アナログ計の内側には、運転視線システムの作動状況も示される。 拡大
峠道を駆け上がる「V40クロスカントリー T5 AWD」。リアバンパーの下端には、「CROSS COUNTRY」ロゴの入ったスキッドプレートが添えられる。
峠道を駆け上がる「V40クロスカントリー T5 AWD」。リアバンパーの下端には、「CROSS COUNTRY」ロゴの入ったスキッドプレートが添えられる。 拡大

フットワークもスポーティー

アイシン・エィ・ダブリュ製の8段ATは、表裏があるというか、1粒で2度おいしいタイプ。通常は、よく言えばスムーズに、悪く言うとまったりと変速する。シームレスに加速・減速するから、まったくもって悪くはないのだけれど、やや切れ味に欠ける。
ところがスポーツモードにすると、メリハリのある変速を見せる。シフトパドルを「パン! パン!」と2回引いて、1段飛ばしのシフトダウンを敢行しても、ばっちり決まる。
90分1本勝負の試乗会でのテストドライブだったので燃費は計測できなかったけれど、これだけ速くて愉快で、しかも燃費がいいというのはキツネにつままれたようだ。ぜひ一度、ガチで燃費を計測してみたい。

新パワートレインの痛快さにばかりに目を奪われがちだが、ボルボV40クロスカントリーT5 AWDは、ワインディングロードでのフットワークも楽しめるモデルだ。

ボルボV40シリーズは、デビュー時は全モデルがスポーティーな「ダイナミックシャシー」という足まわりのセッティングを採用していた。けれども乗り心地が硬すぎるという声を受け、2015年モデルよりノーマル仕様は市街地での乗り心地に振った「ツーリングシャシー」に変更された。一方、クロスカントリーは「ダイナミックシャシー」を踏襲している。

ダイナミックシャシーは、確かに乗り心地が硬い。けれどもこの「硬さ」が、高速域では「しっかり感」となり、ワインディングロードでは「軽快感」に変換される。

新たな8段ATには、パドルシフトが備わる。ステアリングホイールのスポーク裏にある変速パドルは、右側がアップ(+)で、左側がダウン(-)。
新たな8段ATには、パドルシフトが備わる。ステアリングホイールのスポーク裏にある変速パドルは、右側がアップ(+)で、左側がダウン(-)。 拡大
 
ボルボV40クロスカントリー T5 AWD(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大
運転席と助手席は、ともに8ウェイの電動調節機構付き。ツートンカラー(チャコール×ブロンド)の本革仕様となっている。
運転席と助手席は、ともに8ウェイの電動調節機構付き。ツートンカラー(チャコール×ブロンド)の本革仕様となっている。 拡大
荷室の様子。フロアボードは、上段が畳める2段式。パーティションとしての活用や、空間の高さ調整を可能とする。後席や助手席を前方に倒すことで、長尺物にも対応できる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)
荷室の様子。フロアボードは、上段が畳める2段式。パーティションとしての活用や、空間の高さ調整を可能とする。後席や助手席を前方に倒すことで、長尺物にも対応できる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます) 拡大

メルセデスもたじたじ!?

クロスカントリーを選ぶか、ノーマルを選ぶかは、ルックスはもちろん、この乗り味を加味して考える必要がある。ひとつ確かなのは、足まわりのセッティングが異なることで、両者の性格の違いがはっきりとしたことだ。イングリッド・バーグマンはよりやさしく、アニキはより硬派に。

硬派なアニキではあるけれど、粗野な印象を受けないのは、ソフィスティケートされた新しいパワートレインのおかげだろう。あわせて、10種の先進の安全装備と運転支援機能「インテリセーフ10」と歩行者エアバッグを標準装備する点においても、スマートなクルマだ。
新パワートレインを搭載するボルボV40クロスカントリーT5 AWDは、取りあえず200台の限定モデルとして発表された。いずれ(2016年モデルから?)、カタログモデルに昇格するのは間違いない。

いまやスペックだけでクルマを選ぶことも少ないだろうし、仮にスペックで劣っていたとしてもそのクルマのキャラクターを気に入れば「あばたもえくぼ」だ。
とはいえ、やはり気にはなるので一応記しておく。例えばメルセデス・ベンツGLAで4WDを選ぶと、「GLA250 4MATIC」(7段AT)となる。このモデルの最高出力は211ps、最大トルクは35.7kgm。対するボルボV40クロスカントリーT5 AWD(8段AT) は245psと35.7kgm。JC08モード燃費では若干ボルボが上回る。
それでいて価格は40万円近くボルボのほうがお手頃だ。お値打ちモデル、と言って差し支えないと思われる。

(文=サトータケシ/写真=峰 昌宏)

「V40クロスカントリー T5 AWD」には、「インテリセーフ10」と呼ばれる運転支援システム群のほか、歩行者保護用のエアバッグや、ヒルディセントコントロールなどが備わる。


	「V40クロスカントリー T5 AWD」には、「インテリセーフ10」と呼ばれる運転支援システム群のほか、歩行者保護用のエアバッグや、ヒルディセントコントロールなどが備わる。
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ステアリングホイールの左側スポークには、全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズコントロールのスイッチが配される。
ステアリングホイールの左側スポークには、全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズコントロールのスイッチが配される。 拡大
後席の中央には、中央席用のヘッドレストのほか、左右席用のアームレストやドリンクホルダーが格納されている。左右席のヘッドレストも、ドライバーの後方視界確保のために折りたたむことができる。
後席の中央には、中央席用のヘッドレストのほか、左右席用のアームレストやドリンクホルダーが格納されている。左右席のヘッドレストも、ドライバーの後方視界確保のために折りたたむことができる。 拡大
 
ボルボV40クロスカントリー T5 AWD(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

ボルボV40クロスカントリー T5 AWD

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1470mm
ホイールベース:2645mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94V/(後)225/50R17 94V(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:14.8km/リッター(JC08モード)
価格:439万円/テスト車=456万900円
オプション装備:メタリックペイント<エレクトリックシルバーメタリック>(8万3000円)/サイドスカッフプレート(8万7900円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1872km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ボルボV40クロスカントリー T5 AWD
ボルボV40クロスカントリー T5 AWD 拡大
ボード状のセンターコンソール「フリーフローティング・センタースタック」。エアコンやオーディオ、運転支援システムのスイッチなどが機能的にレイアウトされる。
ボード状のセンターコンソール「フリーフローティング・センタースタック」。エアコンやオーディオ、運転支援システムのスイッチなどが機能的にレイアウトされる。 拡大
荷室の床下には、パンク修理キットがおさめられる。
荷室の床下には、パンク修理キットがおさめられる。 拡大
バンパーの両サイドには、LEDドライビングライトを装備。従来は、“明かり”ではなく“飾り”のパーツが取り付けられていた。
バンパーの両サイドには、LEDドライビングライトを装備。従来は、“明かり”ではなく“飾り”のパーツが取り付けられていた。 拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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