勝手に道路を封鎖してゲリラ撮影

第1作の舞台は、数年後のオーストラリアという設定だった。公開が1979年だから、1980年代なかばということになる。治安が崩壊して暴走族が悪行の限りをつくしており、最後の希望となっていたのが司法庁直轄の特殊警察MFPでパトカーに乗るスゴ腕警官のマックス・ロカタンスキーだった。プロテクター付きの革スーツに身を包むメル・ギブソンは、いま見てもゾクゾクするほどカッコいい。

彼はリーダーのトーカッターが率いる暴走族に同僚を殺され、妻子までもが狙われる。復讐(ふくしゅう)を誓う彼の、強力な武器となったのが、インターセプターだ。オーストラリア・フォード製の「ファルコン」で、V8エンジンにスーパーチャージャーを装着して600馬力を絞り出したモンスターマシンである。暴走族が乗る「カワサキZ1000」や「ホンダCB750」などと死闘を繰り広げるのだが、撮影にはすべて本物のクルマとバイクが使われている。予算はないし、当時はCGなんて便利なものはなかったのだ。

あまりにリアルなクラッシュシーンが描かれたので、スタントマンが何人か死んだといわれていた。配給会社が宣伝のためにわざとうわさを流したという説もある。実際にはけが人はたくさん出たものの、死者はいなかったようだ。ただ、この頃のオーストラリア映画は激しいバイオレンス描写が売りで、本当に死人が出た映画も存在する。『マッドマックス』も運がよかっただけで、何が起きてもおかしくない野蛮な撮影現場だった。勝手に道路を封鎖して撮影していたというから、今ではとても考えられない無法ぶりだ。日本でも1972年の『ヘアピン・サーカス』では東京のど真ん中で危険なゲリラ撮影をしていたから、そういう時代だったのだろう。

過激な撮影がもたらした斬新な映像が世界に衝撃を与えて大ヒットし、1981年に『マッドマックス2』が公開された。舞台は前作から数年後で、文明は完全に失われている。荒野ではモヒカン頭の荒くれ男たちが走り回り、枯渇したガソリンを手に入れるために抗争に明け暮れていた。マックスはインターセプターに乗って荒野をさまよい、石油精製所で共同生活する人々と武装集団との争いに巻き込まれる。

『マッドマックス2』DVD
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(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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第101回:狂気は衰えず――常軌を逸したマシンが爆走する!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の画像 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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