2段重ねのキャデラック?

イモータン・ジョーは、子孫を残すために女たちを“子産み女”として監禁していた。フュリオサは、彼女たちを連れて安全な水と食料のある場所に行くつもりなのだ。『2』で石油精製所の人々を最後の楽園サンシャイン・コーストに連れていこうとした構成を、忠実に繰り返している。イモータン・ジョーとウォーボーイズは全力で彼女たちを追いかけ、フュリオサはマックスと協力して凶暴な男たちに反撃するのだ。

要するに、『2』と同じである。しかし、映像が格段に進化している。予算と技術が圧倒的に違うのだ。ミラー監督が当時やりたくてもできなかったことが、今回はパワーアップした形で実現している。改造車軍団はとんでもないことになっている。イモータン・ジョーが乗るのはでかいテールフィンの1959年型「キャデラック」を2段重ねにし、キャビンとフロントグリルを切り離してV8を2基突っ込んでいる。

「メルセデス・ベンツW123」をトレーラーヘッドに仕立てたマシンも登場する。「フォードF-150」や「ダットサン240Z」も、邪悪な改造を施されていた。「プリムス・ヴァリアント」に至っては、キャタピラを装着して高速戦車に生まれ変わってしまった。マックスのファルコンも勝手に改造され、4WD仕様に。武器を装着してマッチョになった姿も、それなりにカッコいい。

明らかに常軌を逸しているのが、ドゥーフ・ワゴンである。後方には巨大な4つの太鼓が据え付けられ、前は全面がスピーカーセットだ。ギタリストがハードなサウンドを奏で、大音量とともにダブルネックギターの先端からは火炎が放射される。戦闘の役には立たないが、ウォーボーイズの戦意を高揚させる。彼らにとっては、自動車が宗教なのだ。V8エンジンがご神体であり、ステアリングホイールには神聖な霊が宿っている。

ミラー監督はやりきった気持ちが強いのかと思ったら、今回も3部作になるらしい。これ以上、一体何をやろうというのか。たぶん、もっとハチャメチャなマシンのアイデアを思いついてしまったのだろう。年齢など関係ない。監督の頭の中では、若いころの夢が今も暴走を続けている。

(文=鈴木真人)

(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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第101回:狂気は衰えず――常軌を逸したマシンが爆走する!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の画像 拡大
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
2015年6月20日(土)全国ロードショー
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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