スバルBRZ S(FR/6MT)
長く付き合える一台 2015.06.26 試乗記 「スバルBRZ」にマイナーチェンジが施された。目に見える部分の変更はわずかながら、その中身は熟成が進んだという。進化の程を箱根で確かめた。ハンドリングバランスのカギは車体剛性
「いま新車で走りがいいクルマを買うなら何ですか?」
そう質問されると、筆者はいつも「うーん……」とうなっていた。欧州車好きなら「フォルクスワーゲン・ポロGTI」か「ルノー・ルーテシアR.S.」を真っ先に薦める。「ゴルフGTI」と「メガーヌR.S.」は、こちらが言わなくても欲しい人は買うクルマだ。
一方、国産車はというと、ちょっと迷う。それでもパッと心に浮かぶのは、「トヨタ86」と「スバルBRZ」。そして、「スズキ・スイフトスポーツ」。最近だとここに「マツダ・ロードスター」が加わるのだろうか。もちろんその条件には、「現実的な」という枕ことばが付く。
ただ筆者は、“FR is the best!”と言っているのではない。本人はバカが付くほどのFR好きだが、FRが持つ本来の素晴らしさとは、前後のグリップバランスの良さであり、その先にあるドリフトコントロールは、必要な人が求めればいい。
そして近年では、FF車でも、フロントタイヤのグリップ限界を上げることで、良好な前後バランスを持つクルマが多い。またスイートスポットの狭い話だが、FF車にもドリフトコントロール領域(正確にはヨーコントロール領域)は存在する。スイフトスポーツを推す理由がこれだ。
こうしたハンドリングバランスのカギを大きく握るのは、車体剛性だと思う。
剛性を上げれば重量も増えるから、やみくもに高ければよいわけではない。しかしその体躯(たいく)にあった剛性を得ると、クルマは楽しくなる。4つのタイヤが地面に接地し続けるから、ステアリングインフォメーションが豊かになる。これがクルマの楽しさだと筆者は思う。
さてようやくマイナーチェンジを受けたBRZの話に入る。
広報車両を東京・恵比寿のスバル本社から受け取り、街中をサクッと流した。イメージカラーである「WRブルー・パール」は初夏の日差しに映えてすがすがしく、信号待ちで隣に「911」が並んだときも、引け目を感じるどころか思わず心の中で「俺もボクサーエンジンだぜッ♪」とジョークをかましたほどだった。
そんな軽やかな気分になれたのは、BRZが以前よりもシッカリしたからだと思う。テスト車両を受け取った時点では、このクルマの情報は知らされていなかった。しかし街中でハンドルを切った瞬間から、手のひらにかかる重みの違いがわかった。アクセルを踏み込んでも、車体がスッと進んで気持ちが良かった。ブッシュか? 前後サブフレームの締結剛性か? 回答をアレコレ考えるのも楽しかったが、何より運転が楽しい。