自動車の街の威信

トリノの街に話を戻せば、フィアットの工場の国外移転で一時落ち込んだ自動車関連産業も、フィアット依存型から脱することで、新たな活路を見いだしつつある。例えばカロッツェリアは、インドや中国の自動車メーカーのR&D拠点の一翼を担うことで、活況を呈しているところがいくつもみられる。

そのトリノで、2015年6月11日から14日までの間、「パルコ・ヴァレンティーノ&グラン・プレミオ」と題した街おこしイベントが開催された。市内のヴァレンティーノ公園を舞台に、国内外の35ブランドの車両を屋外展示し、周辺にはさまざまな食べ物屋台が配置された。入場は無料。と、ここまでだと、街の産業展の類いの拡大版だが、欧州屈指のクルマの街という威信をかけて、企画はそれだけにとどまらなかった。

10の地元カロッツェリアやデザインスクールも参加し、会場内に近作を展示した。中でもベルトーネ出身のロベルト・ピアッティ率いるトリノデザイン社は、新しいコンセプトカーを会場で初公開した。3日目の6月13日には、85周年を迎えたピニンファリーナの車両約50台によるコンクールデレガンスも催された。

そして最終日には、走行会「グランプレミオ」(イタリア語で「グランプリ」)が行われた。これは、1935年から1955年までの間、今日のF1の前身であるフォーミュラAが、今回の会場であるヴァレンティーノ公園で開催されていたことを記念したものである。

往年のグランプリ参加車や会を盛り上げるために集まったクラブや企業のクルマたちは、朝10時に公園を出発。トリノ旧市街を経て、郊外のレッジア・ディ・ヴェナリア庭園まで、約15kmの歴史絵巻を繰り広げた。
一般車両の通行を制限し、往年のグランプリカーやコンセプトカーなど、ナンバープレートがない車両も存分に公道走行させたところに、イベントにかけた自治体の意気込みが感じられた。

トリノの王宮前を疾走する「ランチア・フルヴィア スポルト」。
トリノの王宮前を疾走する「ランチア・フルヴィア スポルト」。 拡大
ラリードライバー、マウリツィオ・ヴェリーニが操縦した「フィアット・アバルト124」。
ラリードライバー、マウリツィオ・ヴェリーニが操縦した「フィアット・アバルト124」。 拡大
「フィアット131アバルトラリー」の軍団。
「フィアット131アバルトラリー」の軍団。 拡大
1970年代初頭にバレストリエリ-マイガ組が駆った「ランチア・フルヴィアクーペHF」。
1970年代初頭にバレストリエリ-マイガ組が駆った「ランチア・フルヴィアクーペHF」。 拡大
カロッツェリア「ストーラ」が「フィアット・パンダ」をベースに1992年制作した「デストリエロ」。
カロッツェリア「ストーラ」が「フィアット・パンダ」をベースに1992年制作した「デストリエロ」。 拡大
アリタリアカラーの「ランチア・ストラトス」は、ランチア・ヒストリカルコレクションが所有。
アリタリアカラーの「ランチア・ストラトス」は、ランチア・ヒストリカルコレクションが所有。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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