目指すは世界に通用するジャパニーズデザイン

「ユーザー調査をしてみたら、お客さまが感じている“レトロ”とわれわれが考えている“レトロ”は少し違うんじゃないかという話になったんです。われわれが考えるレトロはグリルやライトが大きくて、メッキもキラキラですけど、今のユーザーは違う見方をしているのかもしれないと」

確かに、われわれバブル世代やそれ以前の人は、レトロというと「ローバー・ミニ」や昔の「バンテン・プラ・プリンセス」のようなものを短絡的に想像しがちだ。しかし、イマドキの若い女性には予備知識はない。全く違う感性に突き動かされている可能性は多分にある。

「そこで今回は、手作り感や温かみを出すべく、角のR(曲線)をちょっと考えられないくらいに大きくしてみました。本当に鉄板の手たたきでしか出ないくらいの丸さですね。それとあえてグリルやバンパーのバランスを整えてみました。キャビンとボディーの比率もヨーロッパでも通用するようなものにしようと。というのも、今の女性は『かわいいのは好きだけど子供っぽいのは嫌い』という方が多い。あえて言うと、世界に通用するジャパニーズデザインを目指したんです」

なるほど! そうだったんかい……オザワはここでひとつポン! とヒザをたたきました。3代目ラパンになくて、旧型にあるもの。少し足りないな、と思った要素。それはある種意図的なアンバランスであり“毒”だったのだ。
今までのレトロデザインはサイズの割にグリルが不自然にデカかったり、角が立っていたり、ある種の違和感をパワーに変えていた。
いわばおもちゃの「チョロQ」であり、2、3頭身のアニメキャラのようにあえて全体をデフォルメすることにより、奇妙な色気を醸し出していたのだ。

3代目「アルトラパン」のチーフデザイナー、松島久記さん。
3代目「アルトラパン」のチーフデザイナー、松島久記さん。
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日本でも大変な人気を博した「ローバー・ミニ」。丸みを帯びた2ボックスのフォルムに、大きなフロントグリル、メッキパーツ、丸いヘッドランプ……と、私たちが思う「レトロ」な要素が満載のクルマだった。
日本でも大変な人気を博した「ローバー・ミニ」。丸みを帯びた2ボックスのフォルムに、大きなフロントグリル、メッキパーツ、丸いヘッドランプ……と、私たちが思う「レトロ」な要素が満載のクルマだった。
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2002年に登場した初代「スズキ・アルトラパン」。女性向けのイメージが強いアルトラパンだが、初代にはターボエンジンのスポーツグレード「SS」も存在した。
2002年に登場した初代「スズキ・アルトラパン」。女性向けのイメージが強いアルトラパンだが、初代にはターボエンジンのスポーツグレード「SS」も存在した。 拡大

第22回:これぞ世界に通用する最先端レトロデザインだ!「スズキ・アルトラパン」に見る日本デザイン辺境進化論(笑)の画像 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

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