日本ではハイソカーが大人気

『T1』公開時には1997年は遠い未来だったが、現在の観客は1997年に何が起きたかを知っている。「審判の日」を先送りしなければ、説得力を持たせるのは難しい。2017年なら、この映画のような事態が発生する可能性が十分にある。『チャッピー』を紹介した時にも触れたが、ホーキング博士やテスラのイーロン・マスクは、人工知能に人類が滅ぼされる恐れについて語っている。

1984年は、ジョージ・オーウェルの『1984』の舞台になった年である。1948年に執筆されたこの小説では、4と8が入れ替わった未来に“ビッグ・ブラザー”による独裁政治が行われる世界を描いた。第2次世界大戦が終わった直後であり、明るい展望を持てるような状況ではなかったのだろう。実際の1984年には、アップルがマッキントッシュを発売している。IBMの中央集権的コンピューターをビッグ・ブラザーになぞらえ、パソコンで個人の自由を取り戻そうと呼びかけた。

日本はバブル前夜の時期で、街には浮かれ気分が漂っていた。テレビでは松田聖子、中森明菜、小泉今日子をはじめとする女性歌手が活躍し、アイドル黄金時代を迎えていた。「三菱ミラージュ」のCMに登場したエリマキトカゲが大人気となったが、クルマの売れ行きはさほど伸びなかった。世の中はハイソカーブームで、8月にフルモデルチェンジして5代目となった「トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ」3兄弟が中心モデルとして脚光を浴びていた。

日本人は“ジャパン・アズ・ナンバーワン”とおだてられて本気にし、明るい未来がやってくることを確信していた。マークII3兄弟には翌年2リッター直6 DOHCツインターボエンジンが追加され、日本初のツインカム・ツインターボエンジンのハイパワーが熱狂的に支持された。『T1』を観た人も、1997年が本当に“審判の日”になることに気づいていなかった。

(C)2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 
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第103回:1984-1997-2017――未来は変えられるのか?『ターミネーター:新起動/ジェニシス』の画像 拡大

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「トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ」
1968年に「クラウン」と「コロナ」の中間に位置する「コロナマークII」がデビュー。1977年に「チェイサー」、1980年に「クレスタ」が発売され、マークII 3兄弟と呼ばれてハイソカーブームを先導した。(写真はマークII)
「トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ」
    1968年に「クラウン」と「コロナ」の中間に位置する「コロナマークII」がデビュー。1977年に「チェイサー」、1980年に「クレスタ」が発売され、マークII 3兄弟と呼ばれてハイソカーブームを先導した。(写真はマークII) 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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