フォード・クーガ タイタニアム(4WD/6AT)
実直さがにじみ出る 2015.09.07 試乗記 エンジンのラインナップを見直して、2リッターと1.5リッターの2本立てとなった「フォード・クーガ」。今回は、従来の1.6リッターより60psも強化された2リッターエンジン搭載車「タイアニアム」に試乗し、その実用性能を探った。フォードの悩み
そこに山があるから、という登山家と同じように、自動車メーカーは有望なマーケットがある限り、そこへ進出しないわけにはいかない。SUVというセグメントはなお巨大な未踏峰群ということなのだろう。今ではあらゆるメーカーが、それこそジャガーやマセラティ、ベントレーに至るまでこぞって参入しようとしている。大小さまざまなモデルが妍(けん)を競う状況の中では、自分たちこそ本家本元であるといくら主張してもアメリカン勢は分が悪い。いかにもアメリカ的な頭字語であるSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)は、もともとピックアップトラックから派生した多用途車であり、当然大きくタフで力強いことが身上、北米市場ではそれが長所として歓迎されるが、それ以外のマーケット、とりわけ日本では勝手が違う。トレンドはコンパクトで効率高く洗練されたSUV、あるいはスポーティーでラグジュアリーなモデルに移っているのだ。
もちろん、そんな風潮を百も承知のフォードが、抜かりなく日本向けに用意したコンパクトSUVがヨーロッパ生まれのクーガである。豊富な品ぞろえの中から市場に合うモデルを投入できるのはフォード・グループの長所でもあるが、反面そのせいでブランドの実像が曖昧になるという弱点があるのも事実。アメリカ車も欧州車もフォードなのだが、いったいどこのクルマ? というストレートな質問に対して、明快なコミュニケーションが展開しづらい巨人ゆえの悩みを昔から抱えている。しかも日本におけるフォードのラインナップがこれまでアメリカ車寄りになったり、ヨーロッパ車重視になったりと揺れ動いたせいで、なおさら立ち位置がぼやけてしまっていることは否定できない。今も「フォーカス」とクーガ、「マスタング」と「エクスプローラー」など多彩な車種が並ぶが、むしろそれを特長として、一歩一歩浸透を図っていくしかないだろう。
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