ドイツの大発明かと思ったら
そして早速、赤い頬の娘をグイッと飲むことにした。近年いろいろなタイプが増えているが、ボクが買ってきたのはKlassikと称するオリジナル版だ。味はオロナミンCをくどくした感じである。はっきり言って現代的なテイストではない。それに1950-60年代のCMを見ると、おじさんの滋養強壮というよりも、子供の元気づけにフォーカスされた商品だ。
しかし、「ドイツ医学、ドイツ医学」と念じながら飲むと、モーターショー取材の疲れが消えてゆくのが不思議である。
実はドラッグストアで、仕入れておいたものが、もう1品ある。二またの歯ブラシである。通常のブラシと、歯間ブラシが一体になったものである。日ごろ、出張取材にも双方を持ち歩いているボクとしては、その昔、経営の神様・松下幸之助が発明した二またソケットに匹敵する大発明だと思った。かつてイタリアに着いた初の夜に買った歯ブラシは、プラスチックのバリが口にあたり、これから住む国の工業水準を、身をもって理解した。それからすると、さすがドイツだ。
風呂上がりに歯磨き粉をつけて使ってみる。するとどうだ、普通の歯ブラシ側を使おうとすると、反対側の歯間ブラシが口に当たって、とてもじゃないが磨けない。逆もしかりだ。バスルームのゴミ箱にいったん捨てたパッケージを引っ張りだして見てみると、こう記してあった。「入れ歯ブラシ」。
日頃「東洋から来るハイテク電子製品は、みんな日本製」と信じている多くのイタリア人を苦笑しているボクであるが、その日ばかりは自らの「ドイツかぶれ」を猛省したのだった。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
-
NEW
ロータス・エキシージ スポーツ410(前編)
2021.1.24池沢早人師の恋するニューモデル漫画『サーキットの狼』の作者、池沢早人師が今回ステアリングを握るのは「ロータス・エキシージ スポーツ410」。劇中で主人公・風吹裕矢の愛車として活躍した「ロータス・ヨーロッパ」のDNAを受け継ぐ、軽量ミドシップスポーツの走りとは? -
ホンダe(RWD)【試乗記】
2021.1.23試乗記「ホンダe」が素晴らしいのは運転してワクワクできるところだ。航続可能距離の短さがデメリットのようにいわれているけれど、それこそがホンダeの持つ強みだ……と筆者は主張するのだった。 -
ジョー・バイデン新大統領誕生で自動車産業はどう変わる?
2021.1.22デイリーコラムもめにもめたアメリカの大統領選挙がようやく決着し、第46代となるジョー・バイデン新大統領が誕生した。クルマ好きとして知られる氏は、果たして自動車業界にどんな変化をもたらすのだろうか。 -
スバル・レヴォーグSTI Sport EX(4WD/CVT)【試乗記】
2021.1.22試乗記いまやスバルの中核モデルへと成長した「レヴォーグ」。六連星(むつらぼし)の新たなフラッグシップと位置づけられる新型は、スポーツワゴンらしい走りと使い勝手のよさが実感できる一台に仕上がっていた。 -
アストンマーティンDBX(前編)
2021.1.21谷口信輝の新車試乗レーシングドライバー谷口信輝が今回試乗したのは、アストンマーティンが開発した高性能SUV「DBX」。そのステアリングを握った走りのプロには、どこか気がかりなところがあるようだが……? -
ホンダCBR600RR(6MT)【レビュー】
2021.1.21試乗記ホンダのミドル級スーパースポーツモデル「CBR600RR」が復活。レースでの勝利を目的に開発された新型は、ライディングの基礎を学ぶのにも、サーキットでのスキルを磨くのにも好適な、ホンダらしい誠実さを感じさせるマシンに仕上がっていた。