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シトロエンC4セダクション アップグレードパッケージ(FF/6AT)

フランス車の伝統 2015.10.29 試乗記 鈴木 真人 1.2リッター直3ターボエンジンとトルコン式6段ATが新たに搭載された「シトロエンC4」に試乗。簡単には言い表せない、フランス車ならではの魅力をリポートする。

排気量と気筒数をダウンサイズ

編集部からの試乗依頼メールには、「難易度“高”の物件です」と書かれていた。この“難易度”という言葉にはどうも違和感があって、昔は単に“難度”と言い表していたのではないか……というのはこの際関係ない。一体何がそんなに難しいのか。試乗車は「シトロエンC4」である。Cセグメントに属する5ドアハッチバックで、ごくまっとうなクルマだ。「プジョー308」の姉妹車で、ライバルとしては「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「ルノー・メガーヌ」などがある。

欧州では販売のボリュームゾーンにあたり、群雄割拠の状態となっているが、日本ではほぼゴルフの一人勝ちというジャンルである。中でもシトロエンというブランドは浸透度が高いとはいえない。ご先祖にあたる「クサラ」も、それほど多くの台数が輸入されたわけではなかった。そして、プジョーとの差別化をどう図っていくか。現時点での立ち位置がとらえがたく、キャッチーなフレーズで表現することはたしかに難しい。

2004年に発表されたC4は2011年に2代目となり、このほどマイナーチェンジを受けた。エンジンは1.6リッター直4ターボから1.2リッター直3ターボに変更されている。排気量とともに気筒数も減らしたダウンサイジングターボだ。「シトロエンC3」や「プジョー208」に搭載されている1.2リッター直3自然吸気エンジンのターボ版である。ターボ化によって、出力で約60%、トルクで約95%の向上を達成した。Bセグメント、Cセグメントは3気筒が標準という時代になってきた。

「クサラ」の後継モデルとして2004年に登場した「C4」。現行モデルは2011年に登場した2代目に当たる。


	「クサラ」の後継モデルとして2004年に登場した「C4」。現行モデルは2011年に登場した2代目に当たる。
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「C4」のインテリア。トランスミッションの変更に伴い、シフトセレクターまわりの意匠が変わったこと、内装色が黒で統一されたことを除けば、大きな変更はない。
「C4」のインテリア。トランスミッションの変更に伴い、シフトセレクターまわりの意匠が変わったこと、内装色が黒で統一されたことを除けば、大きな変更はない。 拡大
シート表皮にはファブリックを採用。オプションでもレザーシートは用意されていない。
シート表皮にはファブリックを採用。オプションでもレザーシートは用意されていない。 拡大
6:4分割可倒式のリアシート。
6:4分割可倒式のリアシート。 拡大
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懐かしい感覚の走り

グレードはベースモデルの「セダクション」と上級モデルの「セダクション アップグレードパッケージ」の2つ。装備を充実させた後者が主力となる見込みで、試乗車もこのグレードだった。スマートキーシステムを備えるほか安全装備のブラインドスポットモニターシステムとフロントソナーがプラスされる。一見してわかる違いは、大型パノラミックガラスルーフが与えられていることだ。1.3平方メートルもの広さで、「上空サプライズ!」の「ホンダ・エアウェイブ」を思い出した。開けて外気を取り込むことはできないが、電動ブラインドが備えられている。

外観にも手が入れられていて、まずはヘッドライトの形状が一新された。LEDランプを採用して目ヂカラを強め、デイライトで存在感を主張する。リアコンビネーションランプも意匠が変わり、立体感を演出している。昨今のトレンドに沿ってデザインがアップデートされた。
一方で、内装に目を転ずると、メーターの色を白から青まで5段階に変える機構は従来モデルから引き継がれている。3眼メーターは中央がデジタルとアナログを組み合わせた速度計で、右の燃料計が左の回転計と同等の扱いになっているのが面白い。

乗り始めて感じたのは、なんとも名状しがたい懐かしい感覚だった。古くさいということではなく、郷愁のような手触りである。1.2リッターとはいえ、パワーとトルクは130ps、23.5kgmという十分なものだ。非力さが後ろ向きの感情を引き起こしたのではないことは確かである。エンジンよりもトランスミッションのほうが要因になっているのかもしれない。オーソドックスなステップ式ATが採用されていて、トルコンの感触が柔らかな印象をもたらす。

ただ、低速では変速に少しぎこちないところもある。そして、早めに高いギアが選択されていくとかすかに振動が伝わってくる。ゆっくり加速している際に、エンジンの“頑張ってる感”が強い。ハイギアード化することで燃費向上を狙ったわけだが、エンジンはしゃかりきになって働かなくてはならない。

アイドリングストップ機能が搭載されたことも燃費に好結果をもたらしている。従来モデルより20%以上改善し、JC08モード16.3km/リッターとなった。エンジン停止時のショックは、輸入車としては少ないほうだろう。ただ、微低速での制御はもうひとつだ。パーキングの際に思いがけず止まってしまい、まごついてしまうことがあった。ブレーキも踏み始めにナーバスなところがある。

ボディーカラーにはテスト車に採用されていた「ブルー アンクル」を含め、全7色が用意されている。
ボディーカラーにはテスト車に採用されていた「ブルー アンクル」を含め、全7色が用意されている。 拡大

メーターは3眼式。照明の色と文字の色は個別に調整が可能で、写真のように「照明は青、文字は白」とすることもできる。


	メーターは3眼式。照明の色と文字の色は個別に調整が可能で、写真のように「照明は青、文字は白」とすることもできる。
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2015年9月の改良で搭載された1.2リッター直3ターボエンジン。130ps/5500rpmの最高出力と23.5kgm/1750rpmの最大トルクを発生する。
2015年9月の改良で搭載された1.2リッター直3ターボエンジン。130ps/5500rpmの最高出力と23.5kgm/1750rpmの最大トルクを発生する。 拡大
トランスミッションはトルコン式の6段AT。幅広い領域でロックアップ機構を働かせるとともに、ギアレシオをハイギアード化することで、燃費性能が高められている。
トランスミッションはトルコン式の6段AT。幅広い領域でロックアップ機構を働かせるとともに、ギアレシオをハイギアード化することで、燃費性能が高められている。 拡大
 
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後席でうれしいガラスルーフ

このクルマの美点がはっきりと現れるのは高速走行だ。巡航に移ればしっとりした乗り心地を楽しんでおおらかな気分になれる。ステアリングホイールに軽く手を添えているだけの安楽な運転だ。のけぞるほどの強い加速が得られるわけではないが、そもそも思い切りアクセルを踏み込もうという気を起こさせない。巡航がよければそれでいいというのがフランス流の考え方なのだろう。

むやみに排気量を大きくするのではなく、小さなエンジンで効率的に走るというのがフランス車だった。3気筒ダウンサイジングターボというのは、合理性を重んじるフランスの伝統を正しく受け継いでいる。

箱根にも持ち込んでみた。正直なところ急な上り坂ではもどかしいところもあるが、ワインディングロードでのひらりひらりと舞うような動きには華がある。素直なハンドリングで軽やかにコーナーを抜ける楽しみがある。ガラスルーフは重心高に悪影響があるのではないかと心配したが、気になるほどのデメリットは感じなかった。

そうであれば、やはりガラスルーフはこのクルマの大きな魅力と言えるだろう。オープンではなくても、上方の展望が開けていることは大きな開放感をもたらす。光が差し込むのもうれしいし、夜は月や星を眺めるのもいい。もちろん、運転席よりも後席のほうが豊かな恩恵にあずかることができる。少々ヘッドルームは狭いが、パノラマビューはそれを補って余りある取りえだろう。家族を乗せれば間違いなく賛辞を送られるはずだ。ファミリーカーとしての素質も持ち合わせている。

細かいことを言うと、もう少しきめ細かい配慮をしたほうがいいと思われる点もある。オートエアコンの効きはよかったが、快適な室温を得るためには20度に設定しなければならなかった。ドリンクホルダーは「エビアン」なら入るものの、四角い形状のウーロン茶を入れるには小さすぎた。以前はそれも含めてフランス車らしさだと受け入れられたのだが、グローバルスタンダードではそうもいかない。

C4はいいクルマである。しかし、それを伝えるのが難しい。編集者の勘は正しかったようだ。

(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)

「セダクション アップグレードパッケージ」には、安全装備の「ブラインドスポットモニターシステム」が採用される。自車の後側方を走る車両がある場合、サイドミラーのインジケーターを点灯させ、ドライバーに注意を促す。
「セダクション アップグレードパッケージ」には、安全装備の「ブラインドスポットモニターシステム」が採用される。自車の後側方を走る車両がある場合、サイドミラーのインジケーターを点灯させ、ドライバーに注意を促す。 拡大
ダイヤモンドカット加工が施された、新デザインの17インチアルミホイール。
ダイヤモンドカット加工が施された、新デザインの17インチアルミホイール。 拡大
1.3平方メートルの広さを持つパノラミックガラスルーフ。「セダクション アップグレードパッケージ」に装備される。
1.3平方メートルの広さを持つパノラミックガラスルーフ。「セダクション アップグレードパッケージ」に装備される。 拡大
燃費性能は16.3km/リッターと、従来モデルの13.5km/リッターから20%以上向上している(いずれもJC08モード)。
燃費性能は16.3km/リッターと、従来モデルの13.5km/リッターから20%以上向上している(いずれもJC08モード)。 拡大
 
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テスト車のデータ

シトロエンC4セダクション アップグレードパッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4330×1790×1490mm
ホイールベース:2610mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:130ps(96kW)/5500rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/1750rpm 
タイヤ:(前)225/45R17 91V/(後)225/45R17 91V(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:16.3km/リッター(JC08モード)
価格:296万円/テスト車=315万9260円
オプション装備:メタリックボディーペイントオプション(5万9400円)/SDメモリーカーナビゲーションユニット(12万9600円)/ETC(1万260円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3624km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:625.0km
使用燃料:58.3リッター
参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/11.1km/リッター(車載燃費計計測値)
 

シトロエンC4セダクション アップグレードパッケージ
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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