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フォード・フォーカス スポーツ+ エコブースト(FF/6AT)

じっくり付き合える実力派 2015.11.24 試乗記 塩見 智 ビッグマイナーチェンジを受けた「フォード・フォーカス」に試乗。より精悍(せいかん)な顔つきと、高効率な1.5リッターターボエンジンを得た最新型、その実力やいかに?

これなら自信をもってお薦めできる

過ちては改むるにはばかることなかれ。マイチェンなったフォード・フォーカスに乗って感じたのはその言葉だった。誤解なきよう言っておくが、もちろんマイチェン前のフォーカスも悪いモデルではなかった。が、いくつかの部分で日本で使うにはベストではない部分があった。それが今回のマイチェンできめ細かく改善されていたので、はばかることなく改めてくれたのだろう。その姿勢がうれしいじゃないか。

昔はよくあったんだよな、明らかに日本に適していない仕様を輸入して、そのことを指摘すると、ああでもない、こうでもないとあらかじめ完全理論武装したインポーターがよどみなく言い訳してくるパターンが。けれど、それでは戦えないと早めに気づいたインポーターから順に現在のシェアが高い。今では変な取り付け方のカーナビも減ったし、ドアミラーも畳めるし(←これは僕はどっちでもいいけど)、キーと別にもう1個リモコンロック用の何かを持たされることもほぼなくなった。

今回の改良で「輸入車のCセグハッチが欲しくて、『フォルクスワーゲン・ゴルフ』を買っておけば間違いないのはわかっているんだけど、今ちょっとね……」という質問がきた際に、真っ先に挙げる数モデルの候補にフォーカスを自信満々で含めることができるようになった。ただし、今だれかがゴルフをはじめフォルクスワーゲン車を買うのを止めるつもりもなく、むしろ面白い商談ができる好機だと感じているが。ともあれ、残念ながらその辺りの相談が今のところ僕のところにまったくきていない。

話をフォーカスに戻そう。今回のマイチェンで、顔つきが若干変わったのと、パワートレインがごっそり刷新された。先進安全装備も充実した。都内~箱根を試乗した印象をお届けしたい。

日本で販売されるのは引き続き5ドアハッチバックのみ。グレードはベーシックな「スポーツ エコブースト」と、今回試乗した装備充実仕様「スポーツ+ エコブースト」の2種。


	日本で販売されるのは引き続き5ドアハッチバックのみ。グレードはベーシックな「スポーツ エコブースト」と、今回試乗した装備充実仕様「スポーツ+ エコブースト」の2種。
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インパネの中央に8インチのタッチスクリーンが装着された。各種情報の表示・設定を音声で操作できる「MyFord Touch」が備わる。
インパネの中央に8インチのタッチスクリーンが装着された。各種情報の表示・設定を音声で操作できる「MyFord Touch」が備わる。 拡大
「スポーツ+ エコブースト」ではレザーシート(一部合皮)が標準装備。
「スポーツ+ エコブースト」ではレザーシート(一部合皮)が標準装備。 拡大
フロントほど大々的ではないが、テールランプのデザインも変更されている。
フロントほど大々的ではないが、テールランプのデザインも変更されている。 拡大
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街中でより力強く

顔つきはハンサムになった。前から悪くなかったが、精悍さを増した。従来型はフロントグリル内にクロムの線が水平に走っていて、その真ん中にブルーオーバルが鎮座していたが、新型はグリル自体が大きくなって、グリル内には加飾がなくなった。ブルーオーバルはボンネット部分の先端に引っ越し。ヘッドランプユニットはコンパクトになって、より両端に追いやられた。ボンネットは中央部が盛り上がったデザインとなった。

リアも、よく見るとコンビランプの形状が少し変わっているが、ほとんど一緒。フォーカスはCセグハッチの中でも広い室内空間を誇る実用ハッチだが、かといってやぼったいルックスじゃないのがいい。初代フォーカスほどの傑作デザインとは言わないが、この3代目もグッドルッキングだ。

街中を走らせてみる。2リッター直4自然吸気エンジンから1.5リッター直4ターボエンジンに切り替わった。今度はいわゆるエコブーストエンジンだ。あわせてATもデュアルクラッチ式からトルコン式に変わった。段数は6段のまま。3代目が日本へ導入された2年半前、すでにダウンサイジング過給コンセプトが世の中のトレンドだったが、日本仕様のフォーカスは2リッターの自然吸気で登場し、この時点で少し競争力が低かった。実用上のパワーが著しく劣っているわけではなかったが、小排気量ターボエンジンを積んだゴルフや「ボルボV40」のほうが新しく感じたし、燃費がいいのも事実だった。

フォードはまずその点を改め、今回新たに1.5リッター直4ターボを搭載。最高出力180ps/6000rpm、最大トルク24.5kgm/1600-5000rpmというスペックは、従来型に比べ10ps、3.9kgm増し。ターボ化によってピークパワー、ピークトルクに達する回転数が低まったため、目いっぱい回さずとも日常的に力強さを感じることができるようになった。

フェイスリフトで最新の“フォード顔”に。バイキセノンHIDヘッドランプが標準で備わる。
フェイスリフトで最新の“フォード顔”に。バイキセノンHIDヘッドランプが標準で備わる。 拡大
1.5リッター直4ターボ“エコブースト”エンジンは180psを発生する。JC08モード燃費は従来の2リッター比で約20%改善された(12.0→14.3km/リッター)。
1.5リッター直4ターボ“エコブースト”エンジンは180psを発生する。JC08モード燃費は従来の2リッター比で約20%改善された(12.0→14.3km/リッター)。 拡大
ギアボックスもDCTからトルクコンバーター式ATに。それに伴い、シフトノブに備わっていたマニュアルシフト用の「サムスイッチ」が廃止された。
ギアボックスもDCTからトルクコンバーター式ATに。それに伴い、シフトノブに備わっていたマニュアルシフト用の「サムスイッチ」が廃止された。 拡大
ルーフエンドには大型のスポイラーが標準で備わる。
ルーフエンドには大型のスポイラーが標準で備わる。 拡大

走れと誘うエンジンと足まわり

排気量が1.5リッターの場合、3気筒を採用するブランドもあるが、どちらが正解というわけではない。トルクを出しやすく、フリクションが少なく、重量を軽くできるのは3気筒だろうが、音と振動面では4気筒のほうが有利。フォードはそちらを重視した。トルクはターボで十分出せると考えたのだろう。アイドリングストップ機能付きで、JC08モード燃費は14.3km/リッター。可もなく不可もなくといったところか。アイドリングストップからの再始動時の振動が少なくて好ましい。

ターボエンジンだが、排気量が小さいので下からトルクがモリモリという感じではなく、シュルシュルとよく回って回転で出力を稼ぐタイプのように感じられる。回転フィーリングは、4気筒にしてはラフな部類に入る。不快なほどではない。アクセル操作に対するレスポンスがよく、積極的に走らせようと思わせる。

ATがデュアルクラッチ・トランスミッションからコンベンショナルなトルコン式に切り替わった。前のもよかったが、新しいのも引き続きよい。変速はスムーズだが、適度に変速時のダイレクト感があって、最新世代のトルコンATという感じだ。ステアリングの奥にシフトパドルが備わるようになったのは朗報。これまでは左手でセレクターレバーを握った際の親指部分に付いた+/-ボタンによるマニュアル操作を強いられたので、ほとんど使う気になれなかったが、このパドルなら積極的にマニュアル操作したくなる。ただ一点、セレクターレバーをPからDへ入れたい時、毎回行きすぎてSまでいってしまうのは興ざめだ。

スポーティーなハンドリングはマイチェン前から継承された。ワインディングロードでは、右へ左へとスイスイ走らせることができる。メルセデスやBMWがコンパクトカーであっても醸し出すドイツ車特有のどっしりした乗り味は、フォーカスからはさほど感じられず、その代わりに軽やかな身のこなしを味わうことができる。操作系はいずれも軽く、クルマ全体の挙動もなんというか肩肘はっていない。フォーカスはタイ製だからか、ウインカーレバーが右にある。ウインカーを多用する街中を走っていると、右ハンドル車のウインカーレバーが右にあるのは人間工学的に正しいとあらためて思う。

サスペンションジオメトリーの最適化やダンパーのチューニングなどにより、俊敏でリニアリティーの高いハンドリングを得た。
サスペンションジオメトリーの最適化やダンパーのチューニングなどにより、俊敏でリニアリティーの高いハンドリングを得た。 拡大
「サムスイッチ」が廃止され、新たにステアリングにシフトパドルが装着された。
「サムスイッチ」が廃止され、新たにステアリングにシフトパドルが装着された。 拡大
タコメーター(左)のレッドゾーンは7000rpmから。スピードメーター(右)の表示は240km/hまで。
タコメーター(左)のレッドゾーンは7000rpmから。スピードメーター(右)の表示は240km/hまで。 拡大
タイヤサイズは215/50R17。試乗車には「ミシュラン・プライマシーLC」が装着されていた。
タイヤサイズは215/50R17。試乗車には「ミシュラン・プライマシーLC」が装着されていた。 拡大

もっと評価されるべきクルマ

マイチェン前はつや消しシルバーの化粧パネルを多用したセンターパネルが目立つインテリアだったが、新型はブラック基調のセンターパネルに変わった。今回試乗した上級のスポーツ+ エコブーストはレザーシートが標準装備。素材も形状も問題なく、運転席に長時間座っていても疲れなかった。リアシートまわりの広さはCセグハッチの平均以上。座り心地もOK。ラゲッジスペースは標準的な容量と形状をしている。近ごろのモデルとしては珍しく、リアシートを倒してラゲッジ容量を最大限確保する時、まず座面をめくり上げるタイプが採用されている。このため、リアシートを倒すと低く、段差のないフロアが広がる。

先進的な安全技術や快適装備もアップデートされ、ライバルに対し見劣りしないレベルのものが備わるようになった。衝突軽減ブレーキは作動上限が時速50km/hに引き上げられた。駐車時のステアリング操作を自動化するアシスト装備も備わった。アダプティブ・クルーズ・コントロールも付く。

フォーカスはエンジンの刷新によってはっきりと魅力を増した。フォードは日本で商売する輸入業者としては小さな勢力のため、ディーラーの店舗数が少なく、日本ではなかなかその魅力が広く浸透しないが、グローバルで見ればフォーカスはベストセラーだ。じっくり付き合うのに適したクルマだと思う。

(文=塩見 智/写真=高橋信宏)

乗車定員は5人。リアシートは6:4の分割可倒式。
乗車定員は5人。リアシートは6:4の分割可倒式。 拡大
リアシートはダブルフォールディング(座面を上方に跳ね上げてから、背もたれを前方に倒す)が可能。荷室のフロアをフラットにすることができる。
リアシートはダブルフォールディング(座面を上方に跳ね上げてから、背もたれを前方に倒す)が可能。荷室のフロアをフラットにすることができる。 拡大
上級グレードの「スポーツ+ エコブースト」はドライバーアシスト系の装備が充実している。リアビューカメラ(写真)もこのグレードのみの装備。
上級グレードの「スポーツ+ エコブースト」はドライバーアシスト系の装備が充実している。リアビューカメラ(写真)もこのグレードのみの装備。 拡大
ボディーカラーは全4色。試乗車のは「フローズンホワイト」。
ボディーカラーは全4色。試乗車のは「フローズンホワイト」。 拡大

テスト車のデータ

フォード・フォーカス スポーツ+ エコブースト

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1810×1470mm
ホイールベース:2650mm
車重:1420kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:180ps(132kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91W/(後)215/50R17 91W(ミシュラン・プライマシーLC)
燃費:14.3km/リッター(JC08モード)
価格:349万円/テスト車=352万4992円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット(2万1600円)/ETC車載器(1万3392円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2477km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:264.4km
使用燃料:25.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)

 
フォード・フォーカス スポーツ+ エコブースト
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