イタリア人旅行者と朝食

その翌週、再び都心のホテルに戻り、朝食ルームに赴くと、普段よりなにやら騒がしい。前週は、黙々と食べる日本人出張客が大半だっただけに、より印象的だ。なんと、イタリア人の観光グループであった。

隣のテーブルに座っていたジョヴァンニさんというおじさんと彼の夫人に話しかけると、イタリア北部ガルダ湖畔の旅行会社がオーガナイズした団体旅行だという。トルコ航空で来日。すでに関西を周遊してきて、前日の夜に東京入りしたのだと教えてくれた。
見回すと、若い男性のガイドのほか20人前後の団体である。新幹線でやってきたのかと思いきや、「プルミーノ数台に分乗して移動してきた」のだという。Pulminoとはイタリア語でミニバンからマイクロバスまでを指すのでどんな車種かは特定できない。だが、元病院勤務で前回はオーストラリア観光を楽しんだというジョヴァンニさん夫婦をはじめ、大半が悠々自適のセカンドライフ世代であることからして、決して節約のために自動車を使っているのではないようだ。事実、ジョヴァンニさんも新幹線に乗れないことを残念に思っていなかった。仲間とのクルマ旅に慣れたイタリア人らしいところだ。

日本のホテルはどうかと聞けば、「部屋はさすがに狭いな」ともらす。しかしビュッフェ式朝食では、和食こそ手に取らないものの、ジャムを塗ったトースト片手に、飲んでいるのはアメリカンコーヒーである。日ごろ彼らがよく「薄すぎる」とばかにしているそれだが、なんだ、それなりに食に対するフレキシビリティーを備えている。

ジョヴァンニさんの夫人は「かなり湿気を感じる。いつも、こんな感じなの?」とボクに訴える。やはり地中海性気候の国に住み慣れた人々ならではの感想である。
聞けばその日は、地下鉄に乗って散策に繰り出すという。ジョヴァンニさんは「東京の電車はひどい混雑と聞いているが、大丈夫かな」と心配するので、ボクが「通勤時間帯が終わったあと、午前9時を過ぎれば、それほどでもありません」と教えてあげた。

翌朝の朝食で、再びジョヴァンニさんに会ったので聞けば、東京散策は「ファンタスティコ!(すばらしかった!)」だったそうだ。するとジョヴァンニさんがボクを指して、仲間に「おい、彼はイタリア語をしゃべるぞ」と言ったものだから、次から次へと話しかけられてしまった。そのテンション高きムードのなかで撮影したのが、このページのはじめの写真である。

イタリア北部ガルダ湖地方からやってきた観光客の皆さん。左から3番目がガイドのアレッサンドロさん。
イタリア北部ガルダ湖地方からやってきた観光客の皆さん。左から3番目がガイドのアレッサンドロさん。 拡大
地下鉄駅にあったシェアハウスの広告。イタリアを含め、ヨーロッパでは学生の住まいといえばシェアハウスだが、日本もそうなっていくのだろうか。
地下鉄駅にあったシェアハウスの広告。イタリアを含め、ヨーロッパでは学生の住まいといえばシェアハウスだが、日本もそうなっていくのだろうか。 拡大
都営新宿線の車内で。この室内墓所の建物はグッドデザイン賞を受賞。さらに併設のホールにあるピアノは、特記されていないが、泣く子も黙る名器ベーゼンドルファーである。
都営新宿線の車内で。この室内墓所の建物はグッドデザイン賞を受賞。さらに併設のホールにあるピアノは、特記されていないが、泣く子も黙る名器ベーゼンドルファーである。 拡大
東葉高速鉄道のマークは、いつ見ても伝説の名車イスパノ・スイザのマスコットを思い出してしまう。
東葉高速鉄道のマークは、いつ見ても伝説の名車イスパノ・スイザのマスコットを思い出してしまう。 拡大
こちらは東京・青山の骨董(こっとう)通りにて。建物、クルマともども、モダンとレトロが混在している。
こちらは東京・青山の骨董(こっとう)通りにて。建物、クルマともども、モダンとレトロが混在している。 拡大
二子玉川で。ベルリーナというので、とっさにセダンが頭に浮かんだら、Berliner(ベルリン風)パンであった。その下にはフランス語と思われるポム・ド・テール・フロマージュ(ポテト&チーズ味パン)も。ドイツ、フランス双方に強いということは、アルザス地方のパン屋さんかと勝手に想像した。
二子玉川で。ベルリーナというので、とっさにセダンが頭に浮かんだら、Berliner(ベルリン風)パンであった。その下にはフランス語と思われるポム・ド・テール・フロマージュ(ポテト&チーズ味パン)も。ドイツ、フランス双方に強いということは、アルザス地方のパン屋さんかと勝手に想像した。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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