ローコスト界に強敵現る

やがて、知り合いのセールスマン、アンドレアがやってきてボクにキーを投げた。テストドライブのお誘いである。店の外に待っていたのは、前述のオープニングエディションの上級車種である「オープニングエディションプラス」という仕様だ。
デザインは、上海発のプレミアムカー、クオロス同様、昨今の新興国向けセダンの押さえどころをきちんととらえている。エモーショナルなサーフェス処理ゆえ、価格的にライバルとなるであろうルノーグループのローコストカー、ダチアと比べると、かなり上の車格感を漂わせている。補強のためルーフに入れられたプレスラインも、デザインアクセントの一部に見えてしまうから不思議だ。

チルトステアリングのレバー、シートの高さ調節ハンドル、カーペットの質感、そして空調スイッチ類の操作感は、プレミアムカーと呼ばれるクルマからすると明らかにクオリティー感が劣る。特にカーナビゲーションの解像度からは「それなり感」が漂う。それでもクールな室内デザインの効果もあり、この価格のクルマとしては「我慢している感」は極めて少ない。
加えて、メータークラスターの中央に構える液晶ディスプレイは、久々に新車に乗り換える長年のフィアットユーザーに新世代モデルの満足感を十分に与えることだろう。
リアのヘッドルームも、身長167センチの筆者には十分なクリアランスが確保されている。

1.6リッターディーゼルエンジンは、「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ」に搭載されているものと基本的に同一だが、そのスロットル感覚はより多くの人に歓迎されるであろう素直なものだ。
ステアリングも電動パワーアシストゆえの不自然な操舵(そうだ)感はまったく感じられない。
仕事を離れてもかなりのエンスージアストであるアンドレアは、「シフトフィーリングに、もう少しソリッド感がほしい」というが、ローコストカーとしては上出来だろう。サスペンションは、荒れまくったイタリアの舗装路面でも巧みにショックを吸収してゆく。室内の静粛性も、この価格帯のクルマの平均を上回る出来だ。

フィアットによると、ティーポは戦略的価格を打ち出しながらも、ローコスト系の範疇(はんちゅう)には入れたくないと明言しているが、前述のダチアや一部韓国系モデルにとっては、手ごわいライバル出現といえる。

もちろんリアのバックレストは可倒式で、トランクルームと貫通させることができる。
もちろんリアのバックレストは可倒式で、トランクルームと貫通させることができる。 拡大
「フィアット・ティーポ オープニングエディションプラス」には、リアビューカメラも装備。
 
「フィアット・ティーポ オープニングエディションプラス」には、リアビューカメラも装備。
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このディーラーの試乗車は1.6リッターディーゼル。仕様は「オープニングエディションプラス」が充てられていた。
このディーラーの試乗車は1.6リッターディーゼル。仕様は「オープニングエディションプラス」が充てられていた。 拡大
「フィアット・ティーポ オープニングエディションプラス」のリアビュー。
「フィアット・ティーポ オープニングエディションプラス」のリアビュー。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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