ドイツブランドと家電メーカー、そして「男リンダ」

そのような紆余(うよ)曲折の果てラスベガスにたどり着いた。

モーターショー取材なら何を着ていけばいいのかある程度想像がつくが、今回ばかりはドレスコードがわからない。仕方ないので、島 耕作風とスティーブ・ジョブズ風の両方をスーツケースに詰めた。
イタリアからの飛行機内ではテクノな雰囲気を盛り上げるために、YMOをスマートフォンに仕込んでおいた。深夜に着いた乗り継ぎ地のニューヨークでは、ラウンジも開いていなかったので、ターミナルの床に寝て、4時間近く過ごした。

いっぽうで例のプレスパスは、主催者が構築したオンライン連携によって、空港や主要ホテルで受け取りできる仕組みだった。実際にボクはラスベガスの空港で、簡単に受け取れた。
話は前後するが、前述のプレス申請のときも、専用ウェブサイトにチャット欄があって、入力するとすぐに回答してくれたのは便利だった。このあたり、モーターショーより格段に進んでいる。

モーテルに荷物を置いてから、何はともあれモノレールで会場に向かう。ラスベガスは、クルマがなくても済む数少ない米国都市のひとつであるのがうれしい。

今年、自動車メーカーの注目ポイントは、スマートホームとの連携である。
フォルクスワーゲンは初公開のEVコンセプトカー「BUDD-e(バディ)」で、家電メーカーLGとのコラボレーションを披露した。BMWもサムスンとの協力で、数々のホームアプライアンスとのコネクトを披露していた。
例えば「BUDD-e」では、家庭内の冷蔵庫の中身をチェックしたり、持ち物にタグを付けておくことによって、探し物が家やクルマのどこにあるか検索したり、といったデモを見せてくれた。野外コンサートに行くという想定でも表情豊かな女性プレゼンターとともに仲間役で出演するのは、ドイツの開発スタッフたちである。

BMWは、「リンダの一日」というストーリーで、さまざまな技術を紹介した。リンダと聞いて若い女性が出てくるのかと思ったら、「すいません、これが今日のリンダです」と紹介されたのは男の若者で、来場者から笑いが起きた。スタッフの大半は、シカゴにあるBMWのラボラトリーのスタッフたちなのである。イタリアンレストランのディナー予約や到着時間の管理などをすべてクラウドベースのインフォメーションシステムで行う。パーキングに着いたら、「あっち行け!」風の、手を払うジェスチャーをするだけで無人のオートパーキングが始まる。“ディナー”のあと、「シカゴは治安があまり良くないですから、たまにはこんなことも」と説明するスタッフのスマートフォンには、クルマの周囲360度を遠隔監視する映像が映し出された。

日本のテレビ報道では、CESは最先端エレクトロニクス製品にばかりスポットが当てられる。
今年は、日・韓・中ブランドのスタイリッシュなスマートウオッチ、よりインテリジェンス化されたドローン、「家庭のインフォメーションポイント」を目指す、大型ディスプレイ付き冷蔵庫などだ。韓国メーカーは、より高級なサブブランドをアピールした。クルマでいうところのレクサス、インフィニティである。

いずれも、開発担当者が実際に展示品のそばにいることが多く、じかに“ぶっちゃけた”話を聞けるのがありがたい。たとえプレスデイであっても、開発担当者を呼び出してもらえるまで、役所のごとく何人も通さなければいけないモーターショーと違うところである。“学習お役立ち度”の星の数としては、2015年ミラノ万博を数倍上回る。

サムスンが開発した冷蔵庫。ドアを操作するたびに庫内に何が入っているかを認識し、庫外のディスプレイに、各品が入庫後何日経過したかなどを表示する。
サムスンが開発した冷蔵庫。ドアを操作するたびに庫内に何が入っているかを認識し、庫外のディスプレイに、各品が入庫後何日経過したかなどを表示する。 拡大
自動車ブランドにおけるスターは、フォルクスワーゲンが世界初公開したEVコンセプト「BUDD-e」。アーキテクチャにはフォルクスワーゲン初のEV用プラットフォームが採用されている。プレゼンターの女性が巻くスマートウオッチも、もちろん連動。
自動車ブランドにおけるスターは、フォルクスワーゲンが世界初公開したEVコンセプト「BUDD-e」。アーキテクチャにはフォルクスワーゲン初のEV用プラットフォームが採用されている。プレゼンターの女性が巻くスマートウオッチも、もちろん連動。 拡大
フォルクスワーゲンの「BUDD-e」は、LG製品によるスマートホーム対応製品と連携する。それを示した図式は星座のごとし。
フォルクスワーゲンの「BUDD-e」は、LG製品によるスマートホーム対応製品と連携する。それを示した図式は星座のごとし。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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