イタリアでは「前年比20%増」
子供時代といえば、フォード車は一時ホンダ系のディーラー「HISCO(ホンダ・インターナショナル・セールス)」で販売されていたことがあった。この日本自動車輸入史の断章については、本エッセイの第250回を参照いただきたい。
やがて1980年代に入ると、マツダが手がけるフォード車のディーラー「オートラマ」が各地に設立された。社会人になりたてのボクは「トーラス」の中古車を物色したいばかりに――結局、目当てのコラムシフト&ベンチシート仕様がなく断念したが――東名横浜インター近くにあったオートラマに元日から赴いた記憶がある。
思い出話はほどほどにして、現在ボクが住むヨーロッパに目を向けてみよう。フォードのセールスは至って好調だ。EUの2015年新車登録統計によると、フォードは前年比8.6%増の91万9910台を記録。フォルクスワーゲン、PSA、ルノー日産の各グループに次ぐ、4位にランクインしている。
イタリア国内ではもっと元気だ。2015年は前年比19.3%増の10万9250台を記録し、ブランド別でフィアット、フォルクスワーゲンに次ぐ3位の座を獲得している。車種別では「フォード・フィエスタ」が「フォルクスワーゲン・ポロ」「トヨタ・ヤリス」などを抑えて8位に入っている(いずれもUNRAE調べ)。今これを執筆しているわが家の窓から外を見渡しても、即座に3台のフォード車が目に入る。
イタリアでフォードが市民権を拡大したのは、1990年代後半から2000年代に入ってすぐのことである。フィアットが経営危機に陥り魅力的なモデルが少なくなったその頃、「フィアット・ウーノ」や「プント」の代わりにフィエスタが、同じくフィアットの「ブラーボ/ブラーバ」の代わりに「フォーカス」を選んだユーザーは少なくなかった。
その頃のフォードとのなれそめを経て今日までフォード、というユーザーは筆者のまわりに多い。
一方、筆者の周囲で新規ユーザーを観察すれば、「積極的にフォードを選んだ」というよりも、「オペル、ルノーなどと価格や装備を詳細に比較したうえで、最も購入条件が良かった」という理由が購入動機としては多い。かなり実質的だ。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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