犯罪者なのに国民から大人気

メデジン・カルテルを支配していたのが、麻薬王パブロ・エスコバルだ。コカイン売買で成功して財を成し、フォーブス誌に世界第7位の富豪だと認定されたこともある。最盛期には250億ドルもの売り上げを誇ったというから、結構な大企業だ。自宅にはプールはもちろんのこと飛行場や動物園もあったという。寒い時は札束を燃やして暖をとったというから、東MAXのギャグを地で行っている。

まごうことなき犯罪者なのだが、コロンビアでは大人気だった。稼いだ金で貧しい人のために住宅を建設するなどの慈善事業を行っていた。日本でいえば、鼠(ねずみ)小僧次郎吉や清水次郎長のようなイメージになるだろうか。コカインに手を染めていることも、大して問題とはならない。コカの葉は伝統的にお茶として飲まれていて、違法薬物という認識は薄い。特産物を輸出して利益をもたらすのだから、国にとっても有用な人物という評価になる。

映画では、エスコバルの巨大看板を設置している現場にカナダ人のニック(ジョシュ・ハッチャーソン)がやってくる。人懐っこい笑顔の写真に「良心の力……! エスコバル」と書かれていて、いかにも地元の名士という風情だ。ニックはそこで見かけたコロンビア美女をナンパ。マリア(クラウディア・トレイザック)という娘は診療所の立ち上げのために働いていた。資金を提供しているのはエスコバルで、彼女は姪(めい)にあたる。

ふたりは恋に落ち、ニックはエスコバルの家に呼ばれた。エスコバルの誕生パーティーが開かれているのだ。彼はプールで子どもたちと遊び、食事の席では自らステージに上って歌を披露する。誰からも愛される豪放であけっぴろげな人柄だ。マリアも商売で成功して貧しい人のためにお金を使う叔父を心から信頼している。

©2014 Chapter 2 – Orange Studio - Pathé Production – Norsean Plus S.L – Paradise Lost Film
A.I.E – Nexus Factory - Umedia – Jouror Developpement
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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