ディーラーと列車の共通点

ボクが訪ねたこのショールーム、冒頭のリンクのように、ブランドごとに分かれていた店舗を1カ所にまとめたのが2012年だったから、わずか4年でまた改装を行ったことになる。こうした改装はディーラー負担なので、それなりに大変である。参考までにアンドレアは「(プレミアムスペースの)黒い床、高かったんだぜ」と教えてくれた。

最後にショールームに関することでもうひとつ。ここ数年のトレンドは、オープンスペース化の名のもと、従来セールスごとに割り当てられていた「個室」が、所長のものを除いて完全に廃止されたことである。日本のように接客用テーブルがあるわけではない。パーティションが取り払われただけで、商談は従来どおり各自のセールスの机で行う。

これに関しては、他社も含め、イタリアの販売最前線で賛否両論である。

賛成派の意見は、「来店客がセールスマンに声をかけやすい」というもの。否定派の考えとしてあるセールスマンから聞いたのは、「地方都市ではみんなが顔見知り。込み入った金銭の話が絡む商談には、個室のほうがいい」というものだ。

ちなみにイタリアでは鉄道車両の“オープンスペース化”が進んでいる。
ボクがイタリアに住み始めた20年前は、ちょっとした都市間列車までコンパートメント付きで、「オリエント急行かよ」と思ったものだ。いっぽう今日では、スピードが向上して乗車時間が短くなったためもあって、日本のような開放座席車が普通になった。

イタリアのFCAディーラーが列車のトレンドに近づくのか、それとも昔ながらの個室にリターンするのか、気になるところである。
いや、いっそのこと、日本で昔のイタリア風個室セールスを再現したら、それなりにウケるのではないか、と想像が膨らんだ夏の一日であった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

セールスマンのアンドレアと、かつてあった彼の個室(写真奥)。2011年撮影。
セールスマンのアンドレアと、かつてあった彼の個室(写真奥)。2011年撮影。 拡大
かつてこのショールームに存在した個室。2005年撮影。
かつてこのショールームに存在した個室。2005年撮影。 拡大
シエナ駅にたたずむ、観光列車用の客車(1931年製造)。各コンパートメントに、ドアノブがある点に注目。
シエナ駅にたたずむ、観光列車用の客車(1931年製造)。各コンパートメントに、ドアノブがある点に注目。 拡大
改装されても撤去されず生き残っていた、歴代ミニカーを収めたスコッティの棚。天然憩いコーナーといったところか。
改装されても撤去されず生き残っていた、歴代ミニカーを収めたスコッティの棚。天然憩いコーナーといったところか。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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